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我が家に悪魔がやってきた! いちがっき!  作者: 小麦
契約者たちの日常(番外編)
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樹と桜の学生生活①

このお話と次回更新のお話は樹が潮干狩りに行った2日後の登校日のお話です。

また、私の以前の作品に出てきた登場人物がゲスト出演しますのでお楽しみに。

「行ってきまーす」

「行ってらっしゃいませ。今日は6時間授業でしたっけ?」

 高梨沙良たかなしさらが俺、町村樹に聞いてくる。今日は学校なのだ。土曜日にはケンに倉庫に閉じ込められたり、アリーと名乗った悪魔見習いと邂逅したりと忙しいことはあったものの、それとこれとは話が別。メリハリはきちんとつけておかないといけない。

「ああ。たぶん早く帰ってくると思う」

「分かりました。じゃあケン辺りと暇を潰してますね」

 沙良はそう言うと、俺が出た後の玄関のドアを閉めた。

(さて、じゃあ行くとするかな)

 俺は持っていたカバンを背負い直し、歩き始めた。



「おはよう樹君。あの後大丈夫だった?」

 学校の前辺りまで来ると、桜と会った。彼女とは方向が違うので、会うときは大体校門の前だ。むしろ方向が違うのに週に1度はこの場で会っているのはすごいとも言える。

「おはよう。何とかな。そっちはどうだった?」

 俺は暗にケンのことを聞く。

「ええ。ケンのことはちゃんと叱っておいたから心配しないで」

 桜もそれを理解しているようで、きちんと俺の質問通りの答えを返してくれた。

「……おや、おやおや? 2人とも朝から名前で呼び合っちゃって、もしやそういう仲?」

『えっ? いや、違うから!』

 後ろから聞こえてきた声に俺と桜は2人同時に反応する。

「仲がいいだけでそんなに息ぴったりになるもん?」

「うるさいなーもうとっとと行きなよさつき!」

 桜が追い払うポーズを取る。

「はいはい邪魔者は去りますよーっと」

 さつきと呼ばれた女子はすぐに俺たちを抜かして走り去っていった。彼女の名前は片桐さつき。白のブラウスに短めに履きこなされた灰色のチェックスカートという、瑛琳高校指定の制服の彼女はピンクのポニーテールが特徴の女の子だ。俺や桜と同じクラスの女子で、桜以外の女子だと唯一俺が接点を持っている人物でもある。噂では彼女に秘密をしてもすぐにばれてしまうようで、通称ゴシップキラーと呼ばれているそうだ。何故そんな人物と知り合いになったのかと言えば、そんな人物だからこそ俺たちは知り合いなのだろう。手段と目的が逆になったような感じである。

「あの子にだけは悪魔見習いのことばれてほしくないわね」

「……そうだな」

俺たちは互いにため息をついた。



「お昼食べよーお昼」

 そのまま授業をこなしてお昼時となったので、俺と桜が同時に席を立とうとしたその時、さつきが俺たちの方に近づいてくる。

「さくいつもタツッキーと食べてるからさー。たまにはあたしとも裸の付き合いしよーよー」

 そういえばケン以外でここまで馴れ馴れしく名前を呼ぶのもこいつだけだった。さくというのは桜のあだ名らしい。こうまでクラスメイトに取り入ることのできる彼女をすごいとは思うが、俺自身は決してこうなりたいとは思わない。

「裸はちょっと遠慮したいんだけどなー」

「そう言わずにー。ね?」

「……しょうがない。じゃあ、今日はさつきたちと食べるね」

 人懐っこく迫ってくるさつきに根負けしたのだろう。桜はそう言って俺から離れて行った。

「そうだな。俺もたまには1人でご飯食べてみるか」

 俺は教室を後にすると、屋上へと向かうことにした。



「しかし、珍しいよなうちの高校」

 俺は屋上に行くとそう呟く。俺の通う高校は瑛鈴高校というのだが、この高校では今時の高校には珍しく、屋上が昼食時に解放されていたりする。普通の高校ではこのようなことはまずやらないのだが、私立高校らしくいろいろと融通が利くのだろう。おかげで俺が昼食をとるのは決まってこの屋上だった。

「おい誠、今日の保健体育で見るDVDにあの春野雨が出るらしいぜ?」

「……あのってお前はいつも春野雨の話しかしてねーだろうが」

 そんな男子生徒の話し声が聞こえてくる。そのDVDなら俺も最近見たことがあったのでおそらくは違うクラスの同学年なのだろう。俺は弁当を食べながらその様子を眺める。

「お前、そうは言ったって日本を代表するアイドルの一人なんだぜ? その彼女がまだ有名じゃない時代のビデオを拝めるって言うんだから幸せな話じゃねーか」

「……言ってろ」

 片方の男子生徒が呆れたように返す。

「あー分かったお前同じクラスの間宮夏穂のこと考えてるんだろ。じゃなきゃ春野雨に見向きもしないはずねーもん……」

「お前はとりあえず黙ってろ! 屋上に人が入ってきてんだろうが!」

 その瞬間パコーンといういい音が屋上を通り抜けた。

「……あれ? ホントだ。じゃあ教室戻るか」

「お前はもう少し周りに気を配れよ」

 俺の姿を確認した2人はいそいそと屋上から出て行った。

(……ああいう友達同士って楽しそうだよなー)

 俺は以前友人だった成島翔のことを思い出す。あいつとは結局分かりあうことはできなかったが、仲が良かった時期を思い出すと楽しかった思い出に浸ることができる。今の俺にいる友人と言えば桜くらいなものだが、俺はあの時のように笑うことができているのだろうか。

「さて、戻るとするか」

 俺は食べ終わった弁当を片付けると、教室に戻ることにした。

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