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我が家に悪魔がやってきた! いちがっき!  作者: 小麦
契約者たちの日常(番外編)
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アリーの意外な才能

「……ねえアリー」

 私、吉永麻梨乃は契約悪魔見習いのアリー・サンタモニカに向かってそう声をかける。

「どうしたの麻梨乃」

 アリーはいつものようにそう答える。

「何か面白いことないかしら」

「面白いこと?」

 アリーは聞き返す。

「いや、ね。私たち一応あなたたちの世界に誘拐されたわけでしょ。それなのにいつの間にか知らないうちに帰ってきちゃっててつまんないっていうか」

「……あー、言われてみればそうだった」

 アリーも思い出したようだった。

「だから、代わりに何か面白いことしたいの。あなたにお願いするって形で頼めるかしら?」

 こういう形にしておくと、私が彼女に願いを願ったということになり、彼女が立派な悪魔になるための1カウントとして数えられるらしい。

「もちろん」

 アリーは少し考え、服の中からリモコンを取り出した。その青いボタンを押すと、タブレット型の端末が飛び出してくる。彼女はその検索機能を使うと、ふむふむと頷く。

「それじゃあ、謎かけなんてどう?」

 数分後、彼女はそう提案してきた。

「謎かけ?」

 私は聞き返す。

「そう。例えば、悪魔見習いとかけまして引っ越し直後と解きます」

「その心は?」

 その文を言われたら私もこう返すしかなかった。

「どちらもまだまだもの足りません」

「……何でそんなに完成度高いのよ。今調べたやつじゃないでしょそれ」

 私はその完成度の高さに舌を巻く。

「一応ちょっとだけやってた時期があったの。こんなので良ければできるけど」

「じゃあ私が何かお題を出すから答えてみてよ」

 私はお題を考える。

「うーん、それじゃ嫉妬でどう?」

 私は彼女の悪魔見習いを分類するカテゴリーでアリーに謎かけを求める。

「嫉妬とかけまして、矯正なしの視力検査と解きます」

「その心は?」

「どちらも醜い(見にくい)でしょう」

「……あなたこんな特技があったのね」

 解答時間に無駄がなく、しかも素早い答えが返ってくるというのはやっているこちらとしても楽しいものがある。

「それじゃあ色欲でもやってみてよ、せっかくだから」

 私はもう片方の本来のカテゴリーである色欲の方でも同じ提案をする。

「色欲とかけまして、貧しい人と解きます」

「その心は?」

「どちらも性(生)に必死です」

「おおー……」

 私はただただ感動するばかりだった。

「じゃあ、私でやってみてよ」

「麻梨乃? いいけど」

 少し考えた彼女は、できた、と私に一言告げた。

「今の麻梨乃とかけまして、1ケタの足し算と解きます」

「その心は?」

「どちらも感嘆(簡単)の声を上げるでしょう」

「……その通りなのがすごく悔しいんだけど」

 まさかうならせられるどころか今の状況まで的確に言い当てられてしまうとは。

「だったらえーっと……じゃあヘアゴムで」

 ここに来て関係のないものの謎かけをしてみる私。今までは関係のあるものだったが、今度は全く関係のないものだ。きっと時間がかかるに違いない。

「ヘアゴムとかけまして京都と解きます」

しかし、そう考えた私の目論見は見事外れてしまった。

「その心は……?」

「どちらも髪(上)にあります。昔京都のことを上って言ったのは知ってる?」

「う、うんそのくらいならぎりぎり……」

 なぜアリーは日本をそこまで知っているのだろう。

「私も一応ここに来るまでにこっちの歴史は一通り勉強してきたから。そのおかげかな」

 彼女は訳もなくそう答える。

「じゃあ、はさみでどう?」

「はさみとかけまして、樹と解きます」

 ここで意外な人物の名前が出てきた。樹とは町村樹君のことで、私が最近知り合った男性の名前である。紆余曲折あったものの今ではそれなりに交流のある友人くらいのポジションで落ち着いている。そういえばこないだも町村君が助けてくれたそうなので、後でお礼しに行かなきゃ。

「……麻梨乃?」

 止まってしまった私を眺めるアリー。

「あ、ごめんね。こないだ助けてくれたって言うから、今度町村君にお礼しに行かなきゃなーって」

「そういえば私も麻梨乃のことでお礼言っておかないと。今から行ってみる?」

 私はその提案に頷いた。

「じゃあ準備してくるからちょっと待ってて」

 アリーは立ち上がった。

「あ、待って。で、その心は?」

 一瞬何をしていたか忘れそうになっていたが、そもそも私は謎かけをしていたんだった。

「隙(スキ)はあるけどどちらもよく切れるでしょう」

「……今の一番完成度高いんじゃないかしら」

 最後の最後で素晴らしい完成度の謎かけを披露された私はぐうの音も出ないのであった。



「もしもし町村君? こないだは魔界でいろいろありがとう。で、お礼がしたいんだけど今からそっちに行ってみてもいい?」

 私はアリーが準備しに行ったのを確認すると、町村君に連絡した。

「ああ、別にいいけど……。俺魔界じゃあんまり何かしたって訳でもないんだけど、それでもいいのか?」

「別に大丈夫よ。アリーと私の日頃の感謝の気持ちも込めて、ちょっとお礼に手作りのクッキーを持ってこうかなって思ったの。桜さんも呼んでどうかしら?」

「そういうことか。それなら今日の夜にでもみんなで集まってパーティーやろうぜ。ケンとか桜は俺が誘っとくからさ」

「いいわね。じゃあみんなで集まりましょう。じゃあ、準備してそっちに行くわね。6時集合でどうかしら」

 私はそう提案した。

「いいな。じゃ、そこに集合ってことで」

「了解。じゃあまたね」

 私はそう言って電話を切った。

「結局いつもの6人で集まることになったの?」

「そうみたい」

 私はペロッと舌を出す。

「まあ、別に麻梨乃に恋愛のフラグは立ってないし、他の人とのこういう関係も悪くないかもね」

 アリーはそんな言葉を返す。

「それじゃ、時間までもう少し謎かけしましょうか」

 私は彼女にそう提案する。

「……気に入ったの?」

「そんなところ」

 私はアリーに向かって笑みを浮かべた。

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