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我が家に悪魔がやってきた! いちがっき!  作者: 小麦
脱出せよ! それぞれの戦い
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人間界への帰還

「……あの、ところで皆さんは一体……」

 俺は一番気になっていたことを聞くことにした。

「ああ、そういえばそなたには説明していなかったの。ここにおる7匹が7つの大罪を冠する悪魔の代表じゃ」

「7つの大罪? 沙良たちの上に立つ悪魔たちってことですか?」

 俺は以前ケンと沙良の2人がそんな説明をしてくれていたことを思い出す。

「そうじゃな。妾たちが実質人間界での悪魔見習いの試験を取り扱うことになっておる」

「……じゃあ、あなたたち以外のそこにいる小さな悪魔たちは……」

 俺がそんなことを言いかけたその時、小さなと言われた2匹の悪魔が同時に俺の頭を殴りかかった。

「いてっ!」

「おいおいタツッキーずいぶんな言いようじゃねーか、ああ?」

「……いくら私たちの姿を初めて見るとは言っても、もう少し言い方ってものがあるんじゃない? 一応あなたたちを助けにきたんだけど」

 俺はその2人の口調でそれが誰なのか即座に知ることとなる。

「……お前らケンとアリーか?」

 傷だらけの悪魔がアリー、無傷な方がケンらしい。

「そうだよ。まあ俺は前の海の一件があるから今回は流してやるけど、次小さいって言ったらどうなるか……」

「……ケン、協力者である人間を殴るとはどういうことだ」

「す、すみません!」

 文句を言っていたはずのケンは後ろの悪魔の発言ですぐさま俺に土下座した。

「……あの人はケンの上司で、グラン様って言うの。ケンもこの人の前では頭が上がらない」

「おいアリー余計なこと言ってんじゃねー!」

 ケンは焦ったようにアリーに口止めしにかかる。

「ケン、まだわしの話は終わっとらんぞ」

「は、はい!」

 ケンは慌ててグランの方へと向き直ると、1人怒られ始めた。

「あーあ、グランも厳っしいわねえ……」

 砕けた口調の女性はマイペースにその方向を見つめていた。



「では、次はこやつらの処分じゃな。どうするのが良いじゃろう?」

 グランの説教がひとしきり済んだところで、ミルダは他の7つの大罪たちにこう切り出す。

「……決まってんじゃない? 魔界への強制送還でしょ?」

「それに関しては俺も異議はねーな」

「わしもじゃ」

 女性、ターガン、グランの順でそう発言する。

「人間の方は記憶を消すということでいいのではないか。疑わしきは罰せよだろう?」

「そうですね。私も賛成です」

「問題ない」

 全員が頷く。

「では、以上でこの者たちの処分は終了と致す。各自魔界に戻り、今回の件についてまとめるということで」

『了解』

 全員が頷くと、ミルダ以外の7つの大罪たちはあっという間に姿を消してしまった。

「……重要な案件にしては少し早すぎやしないか?」

「まあ、基本的に悪魔たちはこういう事務的なことに時間をかけませんからね。私としては暴食の悪魔見習いについてだけは議論してもいいような気がしますけど」

 俺と沙良は後ろの方でそんな会話をする。

「暴食の悪魔見習い?」

 その言葉にケンが反応する。

「ああ、いや、沙良と同じで暴食の悪魔見習いとして人間界に降り立つ予定だった悪魔がいたみたいなんだけど、どうやら体調不良で試験を受けられなかったらしくてな」

 俺は先ほど翔から聞いた話をケンに説明する。

「その話も知っておったのか」

 だが、会議を終えたミルダは俺たちの方に近寄ってくると、そう声をかける。

「まあ、その件については妾たちも戻ってから話し合う予定じゃ。ちとサラ1人に暴食の悪魔見習いを背負わせるのは荷が重すぎるのではないか、とは妾以外の悪魔たちも思っておったのでな。まして今回の事件の引き金がそれではいろいろと示しもつかぬ。妾たちも今までの試験制度について見直しをしていこうと思っておる」

「そうですか……」

 沙良は複雑そうな表情を浮かべる。嬉しい反面、ライバルが増える可能性もあるのだ。一概に喜んでばかりもいられないのだろう。

「……まあ、今回はそなたたちにもずいぶんと迷惑をかけてしまったからの。次魔界に来るときはたっぷりおもてなしをさせてもらう所存じゃ」

「よっしゃー!」

 ケンは1人喜ぶ。ごちそうには目がないらしい。

「ケン、少し空気読んで」

 アリーの突っ込みに皆が笑いあった。



「この空間を通れば人間界に戻ることができる。そなたたちともしばしのお別れじゃな」

 森から出た俺たちは、ミルダの用意してくれた空間を通り、人間界に戻る運びとなった。今回はリモコンを使わなくてもいいようにミルダが配慮してくれたらしい。

「……お母様」

 沙良は覚悟を決めたようにミルダに話しかける。

「何じゃサラ」

「私、必ず立派な悪魔になって魔界に帰ります。平和な魔界を維持するために、もっといろんなことを学んで、お母様たちを越えられるように。そして、樹さんの契約悪魔としてこの人を守れるように」

 その沙良の目はまっすぐしていた。

「うむ。良い目じゃ。今回妾が来た意味もきちんとあったということじゃな」

 ミルダは娘の成長を安心したようだった。

「今度はもっと成長して会いに来ます」

 俺と沙良はそう言って空間の中へと入る。桜と麻梨乃を背負ったケンとアリーも後に続いて空間に吸い込まれていった。

(ではケン、アリー、そして樹。サラをまたよろしく頼むの)

 俺たちが見えなくなった後、ミルダはそう心の中で呟いた。

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