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我が家に悪魔がやってきた! いちがっき!  作者: 小麦
脱出せよ! それぞれの戦い
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ジョー・マクロイドの目的

「まず、この部屋に監視カメラがあるのかを調べてほしいんだが……」

「……監視カメラですか?」

 俺は立ち上がり説明する。

「縛ってた俺たちを放っておいて部屋から出ていくくらいだ、どこかに監視するもんがあってもおかしくないだろ。それに、翔の悪魔見習いが侵入者を発見したとも言ってたしな。何か異常があればすぐにでもこの部屋の様子を見に来るはずだ」

「なるほど。また私の能力の出番という訳ですね」

 沙良は目を輝かせる。

「お前、どこにあるか分からない物でも吸収できるのか?」

「ええまあ。名称さえ指定できればあとは勝手に私の能力が発動しますので」

「暴食って恐ろしいのな……」

 俺は震えながらも沙良に頼むことにした。



「監視カメラは3つでしたね」

 また大きな音を立てた後、沙良はそう結論付けた。

「この部屋の中にそんなに仕掛けてたのかよ……」

 そういえば翔の家はそれなりに裕福だったような気がするし、そのくらい用意できても不思議ではないのかもしれない。だが、翔は絶交する前に会話したときに親とは半分絶縁状態だと言っていた。もしかすると親の金を勝手に使ったか、あるいはジョーの能力を利用して電器屋を洗脳でもして無理に監視カメラを仕入れたのかもしれない。どこまでも救いようのないやつだ。

「まあいいや。たぶんこれでここにまっすぐ来なかったとしても、部屋の様子を監視できなくなった翔は1度は確実にこの部屋に来る。あとはどこかに隠れて翔を不意打ちで襲えば俺たちの勝ちだ」

「隠れるんですか? なら天井に張り付きましょう!」

「天井? 何でだ?」

 急にテンションの上がった沙良を見て俺は首をかしげる。

「細かいことはいいじゃないですか。天井なら死角にもなりますしちょうどいいですって」

「……? まあいいけど」

 俺はよく分からぬまま、沙良の申し出を受けることにした。



 そして現在へと時は戻る。

「……くっ!」

 意識の戻った翔は縄をほどこうとするが、きつく結んでおいたおかげでとても抜けられそうな様子ではなかった。

「まさかまた君にしてやられるとはね」

 翔はそう自嘲気味に言った。

「結局、お前の目的は何だったんだ?」

「僕の目的? 僕に目的なんかないさ。強いて言うなら樹を見つけた後は君に復讐することを目的に行動してたけどね」

「じゃあ、一体何が目的だったんだよ」

 見えない翔の狙いに俺は疑問をぶつける。

「目的を持ってたのは僕じゃなくてジョーの方だよ」

「悪魔見習いの方だと?」

 ここに来て意外な真実が明らかとなった。

「そういえば君にはどうして僕たちがそこの悪魔見習いをさらったのか話してなかったっけか。僕が捕まってる以上、ここで話してもそこまで計画に支障はないだろうし話してあげるよ」

 翔はそう前置きすると、その真の目的について話し始めた。

「君たちも悪魔見習いについてはいくつか知っているだろう。選ばれた者たちだけが人間界に降り立ち試験することができることとかね」

 俺も沙良も頷く。

「そして悪魔見習いは持っている能力を元に7つの悪魔見習いに分けられる。暴食・怠惰・色欲・嫉妬・傲慢・憤怒・強欲の7つ。ここまではいいかい?」

「ああ」

 意図が見えないまま、俺は頷く。

「その中でも暴食の悪魔見習いで試験をパスしたのが君の契約者しかいないってことは知ってるかな?」

「その話なら別の悪魔見習いからも聞いたな」

 俺は以前色欲の悪魔見習いであるアリー・サンタモニカから聞いた話を思い出す。

「でも実は、君の契約者以外にもう1人、試験をパスする予定だった暴食の悪魔見習いがいたんだ。ジョーはその悪魔見習いと友達だったみたいで、そいつを人間界での試験に合流させるためにこんな騒動を起こしているのさ」

「……つまり、もう1人暴食の悪魔見習いは人間界に降り立つ予定だったってのか?」

 俺は半信半疑のまま聞き返す。

「そうなるね。で、僕はそのための人質集めに協力してたって訳さ。まあ、誘拐事件を起こせるっていうから半分楽しんでたけどね」

 後半弾んだ声で話す翔。こいつは本物のクズかもしれない。

「……でも、試験をパスする予定だったってどういうことだ?」

「その悪魔見習い、その日風邪で休んだんですよ」

 そこから先を請け負ったのは沙良だった。

「風邪……?」

「ええ。適性だけなら私と互角どころか、私より上だったかもしれません。けど、その日その悪魔は運悪く風邪をひいてしまったんです」

「それで、合格したのは結局沙良1人だった、と」

 沙良は頷く。

「再試験とかはなかったのか?」

「残念ながら。現行の制度では再試験は認められていません。つまり、その日に運悪く動けなくなってしまったらその時点でアウトなんです。悪魔界では身内の不幸より自分の試験が優先されるような世界なので」

「とんだブラック世界だな……」

 自分の試験を身内の不幸よりも優先させなければいけない世界とはいったいどのような世界なのだろう。

「これで君の悪魔見習いをさらった理由は理解できただろ?」

「ああ。許すことはできねーけどな」

 俺は翔の方を見てそう言う。

「そうは言っても、上の連中を振り向かせるには何か大きな問題を起こすしかない。こっちでの試験が始まってしまった以上、7つの大罪を冠する悪魔たちと会う機会は限られてくるからね。今までの慣習を大きく覆すためにはそれなりのリスクが伴うってことさ」

「そうやって自分の行為を美化すんなよ。お前たちがやったことは事情がどうあれ間違ってしかねーんだから。特にお前は昔からまったく変わってねー。絶交してから少しは変わったかと思ったら、悪い意味で全然変わってねーなお前」

「そっちこそ、そういう正論ばかりを振りかざして他を見ようとしないところは昔から変わってないよね。僕は君のそういうところが嫌いだ」

 翔はそう言ってそっぽを向く。

「お前なあ……」

 俺が翔に続きを言おうとした時だった。遠くで轟音が鳴り響く。

「そうそう、今君の仲間とジョーが戦ってる。この様子だとそろそろ決着がついたんじゃないかな?」

「なっ……」

 俺は沙良と目配せする。

「行きましょう樹さん!」

「ああ!」

 俺たちは縛ったままの樹を置いて、音のした方へと向かった。

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