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いざ悪魔の世界へ!

「何だよタツッキーの知り合いなのか?」

 ケンは責めるような目で俺を見る。

「知り合いって程じゃねーよ。昔は仲良かったけどな」

「……何か訳あり?」

 俺のその返事にアリーがそう聞いてくる。

「そういえばそなた、さっき昔にあった出来事がきっかけで欲望のままに行動することに怖さがあると言っておったな。もしや、この少年が関係しておるのではないのか?」

ミルダも俺のさっきのお茶を濁した答え方に疑問を持っていたらしく、そんなことを言った。

「……そうですね。俺がそのことにトラウマを持っているとしたら、その原因はこいつですよ」



「ねえ樹、一緒にやろうよ?」


「僕たち、友達でしょ?」


「どうしてそんな顔するの?」


「もういいよ、君なんか友達じゃない」


「……明日? 怖気づいたのかい樹?」


「もういいよ、僕は君を許さないから」



 俺の脳内にその時のことがフラッシュバックしてくる。今思い出したって俺は悪いことなんか1つもしていないし、その時の行動に後悔はない。あるとすれば、友人を止められなかったことと、その友人を騙す形になってしまったことだけだ。

「……まあ良い。言いたくないことを無理に聞くのは妾の性に合わぬ。それより今はサラを助けに行くことの方が先決じゃ」

 ミルダは俺の様子を見て聞くのをやめたらしい。

「どうするんですか?」

「決まっておる。そなたたち全員と妾でサラを助けに行くのじゃ」

 俺の質問にミルダは即答する。

「そんなこと言ったって、どうやって魔界に行くんですか?」

 俺は聞く。アリーやケンはともかく、俺が魔界に行く方法がない。

「落ちていたリモコンがあるじゃろう。サラのものじゃが、そなたも使うことはできる。ただし、普通の人間が魔界に許可なく出入りすると、セキュリティシステムに引っかかって溶かされてしまうからの」

 ミルダは俺の頬をなぞる。それはアリーが術をかける時にする仕草と同じものだった。

「今そなたは妾の許可の元、魔界に出入りすることができるようになった。ただし、1度魔界から出てしまうとその許可は消えてしまう。次に来るときはサラと一緒にでないと来られないことは頭の中に入れておくことじゃ」

「今回は一時的ってことですね」

 俺は頷く。そもそも魔界に行く気はまったくないので問題はないのだが、ここで話の腰を折っている場合ではない。

「この仕組みのせいで侵入者を許してしまっているのが皮肉なところじゃがな。それに、今回そなたを連れて行くのは妾の自己判断じゃ。何かあってもおそらく責任を取ることは出来ぬ。それでも構わぬか?」

「……はい。俺も沙良を助けたいので」

 俺は少し考えてから頷いた。

「うむ。では、いざ参るとするかの」

 全員同時に取り出したリモコンを押す。それを確認したミルダが魔界への扉を開くと、4つ分の穴ができる。これで沙良たちの故郷である悪魔界へと行くことができるようだ。

「では行くぞ」

 ミルダの声と共に、全員ゲートをくぐる。

『いざ魔界へ!』



 その頃、魔界のとある場所では。

「……翔、分かっているのか?」

「分かっているって何がさ」

 2人の人物が会話をしていた。1人は少年だが、もう1人は背中に翼の生えた漆黒の生き物、悪魔であった。

「悪魔見習いを誘拐してきたことの重大さだ。ただでさえ私たちの行動は魔界の行動に違反しているんだぞ」

 悪魔は少年が連れて来た気絶している3人の女性を見て少年にそう言う。1人は悪魔見習いらしいが、気絶していても変身が解けていないところを見ると、どうやらかなり優秀な悪魔見習いらしい、と悪魔は舌打ちする。

「今更何言ってるんだよ。君だって目的があるから僕の計画を許可したんじゃないか」

「それはそうだが、悪魔見習いを誘拐してしまってはここの場所がすぐにばれて……」

 言いかけた悪魔を少年は制す。

「いいんだよ。君の計画はどのみち上でふんぞり返ってる悪魔たちをここに呼ばなければ話にならないんだから」

「だとしてもだな……」

 言葉に詰まる悪魔。

「それにこの悪魔見習い、君が交渉するのに必要な暴食の悪魔見習いなんだろ。人間界に降りることを唯一許された」

「……」

 悪魔は言い返す言葉もなく押し黙る。

「こいつを巻き込めたのは君にとっても好都合なんじゃないか?」

「……分かった、もうこのことについては何も言わん。ただし、これ以上そっちの世界で問題を起こすのはやめてくれ」

 悪魔は懇願する。

「それは約束しかねるけど……、まあ誘拐事件はこれ以上起こさなくてもいいかな。もう十分な人数も集まったし」

 少年はそんな譲歩したのかよく分からない返答をした。

「でもまさかねえ……」

「どうしたんだ?」

「……いや、何でもない」

 何かを言いかけた少年は黙る。

(この連れて来た悪魔見習いのリモコンをジョーに解析してもらったおかげで分かったけど、まさか君まで悪魔見習いの契約者になってたとはね。ちょうどいい。君には復讐をさせてもらうよ樹。僕の契約した悪魔見習い、ジョー・マクロイドの能力を使ってね。わざわざリモコンは置いてってやったんだ。きちんとここまで辿り着いてくれよ?)

 少年は不敵に笑った。

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