表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/181

犯人は誰?

「……で、結局桜やサラっちたちを誘拐したのは誰なんだ?」

 ケンは俺たちに尋ねる。状況を整理すると、高梨沙良たかなしさらが彼女の母親であるミルダ・ファルホークにさらわれた俺こと町村樹まちむらたつきを助けに来ようとしていた途中、海の辺りで何者かに連れ去られてしまったということらしい。さらに付近に落ちていたものを見るに、ケンの契約者である樋口桜ひぐちさくらや、アリーの契約者である吉永麻梨乃よしながまりのたちもさらわれてしまったと考えた方がいいようだ。

「私の考えだと犯人は悪魔見習い。それも私の監視の能力から逃れられるほどの空間術を持った悪魔見習いだけど」

「妾もその考えには賛成じゃ。じゃが、分からぬのは悪魔見習いにそれほどの能力を持った術者がいるかどうかという点じゃ」

 ミルダはアリーの意見に同調しながらもそんなことを言う。

「そもそも悪魔見習いって基本的にどんなことができるんですか?」

 俺は目の前にいる3人の悪魔見習いに聞いてみる。

「前に説明しただろ事細かに」

「あれじゃ多すぎるって言ってんだよ」

 ケンの返事に俺はそう返す。

「どうせケンのことだから雑に説明したんでしょ。私が簡単に説明してあげる」

 アリーが説明を変わる。

「簡単に説明するなら、悪魔見習いが共通に使えるのは3つ。1つが願いを叶える能力。これは良くも悪くも全員が共通で使えるもの。2つ目は透明になる能力。たまに使ってるから分かると思う。それで最後は人間の姿に擬態できる能力。これも言うまでもないものだと思う」

「簡潔で分かりやすいなアリーの説明は」

 俺は頷く。

「と言うか残りはこのリモコンで何とかなるから。悪魔見習いの能力の説明にはこれ以上のものはいらない……」

 と沙良のリモコンを指差しながらここまで説明したアリーが何かを閃いた様子で目を見開く。

「ちょっと待って。ミルダ様、このリモコンならもしかして……」

「……リモコン? そうか、なるほど。それならばあるかもしれぬな」

 ミルダも何かに気付いた様子だった。

「どうしたんですか?」

「樹、あなたのおかげでサラたちがどこに言ったのか分かったかもしれない」

 アリーはそんな抽象的な説明をする。

「妾も魔界に連絡してくる。少々待っておれ」

 ミルダはそう言うと、空間術を利用し、目の前から消えた。

「どういうことなんだ?」

「今度は俺が説明してやるよ」

 まったく分かっていない様子の俺に、ケンが声をかける。

「タツッキー、サラっちがよくリモコンを使ってたのは覚えてるか?」

「ああ、まあよく使ってたな」

 俺は思い出す。連絡手段や着替え、さらには後で聞いた話だが、どうやら悪魔同士を見分けるためにも使用するのがあのリモコンらしい。

「あのリモコンは俺たち悪魔見習いの能力の補助のためにあるんだけど、あれには魔界と人間界を繋ぐ機能があるんだよ」

「そういえばそんなこと言ってたような……」

 確か黄色のボタンを押すことで人間界と魔界を繋ぐことができるという話をまだ彼女と会ったばかりの頃に聞いたような気がする。

「それで、そのリモコンを使って魔界と人間界を繋いでいる悪魔がいるんじゃないかっていうのがアリーの推理って訳だ」

「そんなまさか……」

 俺も否定はしてみるが、実際それ以上にありそうな可能性は思いつかなかった。

「私の監視の能力が使えるのは私と同じ世界にいる対象だけ。だから、私が監視できなくなったってことは、サラや麻梨乃たちは人間界じゃないどこか別の場所に連れ去られたってことになるの」

「それで、悪魔見習いが異界への扉を開くにはこのリモコンを使う以外に方法がない。つまり、サラたちは魔界にいる可能性が高いって訳だ。で、たぶんサラっちの母親が探しに行ったのはこの1月近くの間に魔界への扉を開いた悪魔見習いがいないかどうかってところなんじゃねーか?」

「その通りじゃ」

『うわっ!』

 俺とケンは同じリアクションをする。ミルダが戻ってきたのだった。

「何じゃ2人してその反応は……。失礼にも程があるぞまったく」

 ミルダはそんな反応をする。

「それで、どうでしたかミルダ様?」

 アリーが聞く。

「そなたの読み通り、どうやら魔界と人間界を頻繁に出入りしていた悪魔見習いがいたようでの。皮肉にもそれは妾たちが追っていた憤怒の悪魔見習いじゃった」

「ということは……」

 俺はミルダの方を向く。

「うむ。先ほど言っていたジョー・マクロイド。奴だけがこの人間界と魔界を行き来しておった。サラを誘拐した犯人はジョーで間違いないじゃろう。それに、ジョー以外に人間の出入りも少なからず認められておるからのう」

「ジョーの他に人間? さらわれた人たちですか?」

 俺は聞くが、

「それだけではない。もう一人、彼の契約者も共に魔界に来ているようじゃ。もっとも、時間が足りなかったせいもあってか見つけられたのはサラたちを連れて来た様子が分かるこの写真1枚じゃったがな」

 そう言ってミルダは俺に写真を見せる。その写真には確かに沙良と桜、そして麻梨乃の他にジョーと呼ばれる悪魔見習いともう一人、男性の姿が写っていた。

「これがジョーの契約者なのか?」

「そうみたいじゃな」

 ケンとミルダがそんな会話を交わしている中、

「……どうしたの?」

 アリーは写真を見て動きを止めてしまった俺を不思議そうな目で見る。

「……こいつは」

 こいつのことだけは思い出したくなかった。だが、この姿、ここまではっきりと姿が写っていては、もはや疑いようがなかった。

かける……」

 それは俺が昔失ってしまった、ある友人の名前だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ