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我が家に悪魔がやってきた! いちがっき!  作者: 小麦
樹を救え! 母親からの挑戦状
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消えた沙良たち

「先ほどの説明の通り、憤怒の悪魔見習いは洗脳と呼ばれる特殊能力を持つ。これは人もの問わず対象を操ることができる能力なのじゃ。だが、この能力は人間界では使うことが禁じられておる。悪魔ならともかく、見習い程度の悪魔がこの能力を良い目的だけに使うとは言い切れないという理由でな」

 ミルダはそう説明する。

「でも、この数週間で急に人間界で失踪事件が多発してる。それもごく限られた地域の高校生だけが8人立て続けに」

 アリーが後を引き継ぐ。

「それを調べるためにミルダさんが人間界に来たんですか?」

「妾だけではない。魔界の悪魔のリーダーである7つの大罪たちが全員総出で憤怒の悪魔見習いを見張っておる。妾がここに来たのもこの近くにいる悪魔見習いを監視するためじゃ。もっとも、妾のいるこの町が一番場所としては可能性的に高いのじゃがな」

「憤怒の悪魔見習いがこの近くにいるんですか?」

「うむ。その悪魔見習いがこいつ、ジョー・マクロイドなのじゃが、見たことはないかの?」

 ミルダが見せた写真を俺達3人が見るが、全員首を横に振る。誰も見たことがなかったのだ。2本の角のような青の髪の毛の奴がいたら否が応でも覚えていることだろう。

「実はこいつだけ所在がつかめておらぬのじゃ。おそらく犯人はこいつで間違いないはずなんじゃが……」

 ミルダは困ったように考える。

「この悪魔見習いの契約者が誰かは分からないんですか?」

「生憎じゃが、契約者を選ぶのは悪魔見習いが把握するだけでの。一時帰界する時に事後報告してもらう形を取っておるのじゃ。つまり、この時点では妾たちは契約者に関しては一切知らぬ」

 そういえば、ミルダは沙良の居場所は知っていたが、俺の顔は知らなかったことを思い出す。

「もっとも、先ほどケンの契約者は確認させてもらったがの。礼儀正しい子で妾としては安心じゃ」

「げっいつの間に……」

 ケンは苦虫をかみつぶしたような顔をするが、

「そもそもケンはサラに協力してもらうために桜をサラのところに送り込んでるんだし、サラが暗号を解いたら次のヒントをミルダ様が渡すことくらい私だって分かる。その場所に桜がサラより先に辿り着いて暗号を受け取ってるんだから、ミルダ様があなたの契約者を把握するのは簡単なこと」

「ぐぬぬ……」

「それと、アリー。そなたの契約者らしき人物とも会ったぞ」

「えっ、私……ですか?」

 その言葉に今度はアリーが驚く番だった。

「うむ。サラの知り合いだと言っておったからおそらくそうであろう。サラを待っていたたこ焼き屋さんで声をかけられそうになったのでな、尋ねてから暗号を渡しておいた」

「今日に限って麻梨乃も出かけてたんだ……」

 アリーはたこ焼きの一言でそれが自分の契約者だということを察したらしい。吉永麻梨乃はよほどたこ焼きが好きなのだろう。

「そなたの契約者も悪い人物ではなさそうじゃな。今のところ色欲の悪魔見習いの中ではそなたが一番妾の後継者に近い立場におるしの。このまま頑張るのじゃぞ」

「は、はい。ありがとうございます」

 アリーは立膝をして頭を下げる。その様子を確認すると、今度は俺の方を向いた。

「さて、話がずれてしまったが、そういう訳で妾たちは悪魔見習いが契約した契約者については……」

 だが、そこでミルダの言葉が途切れる。同時にアリーもハッとしたように顔を上げる。

「サラの気配が消えた……?」

 ポツリとそう告げる。

「沙良の気配?」

 俺は首を傾げる。

「実はアリーは嫉妬の悪魔見習いでもあるんだ。俺たちの監視役してたろこいつ。それはこいつが嫉妬の悪魔見習いでもあるが故の芸当だったって訳だ」

 ケンがそう解説してくれるが、俺は明らかに様子のおかしい2人を見比べる。

「沙良の気配って何ですかミルダさん! アリー!」

 俺は2人に呼びかけるが、2人とも反応がない。あまりのショックに反応できなくなっていたと言った方が正しいのかもしれない。やがて少しするとミルダは俺の方を向いた。

「樹、妾と共にしばらく行動してもらう。サラの身に何かあった可能性が高い」

「どういうことですか?」

 俺はよく分からないままに聞くが、

「話は後じゃ。アリー、サラが消えた地点は特定できるかの?」

「はい。ここから少し離れた海の辺りです」

「うむ。では行くぞ樹」

ミルダはそう言ってまた俺の体を抱え込む。

「うわっ!」

「アリー、それにケン。2人ともついてまいれ」

 ミルダは空間と空間を繋ぐここまで移動してきた術をもう1度使う。俺はミルダと共に空間を越えて行った。



「どういうことなんだアリー?」

 取り残されたケンは同じく倉庫にいるアリーに聞く。

「サラが誰かにさらわれた可能性がある。それも、私たちと同じ悪魔見習いに」

「何だと?」

 それを聞いたケンは翼を広げる。

「そいつは生かしちゃおけねーな」

「とりあえず急がないと。今ならまだ間に合うかもしれない」

 アリーとケンはその空間移動術を利用し、ミルダの後を追いかけた。



「この辺りじゃなアリー?」

 俺を降ろしながらミルダは聞く。

「はい」

 だが、その場所には誰もいない。海水浴場に来ている客は何人かいたものの、沙良がいる様子はなかった。

「これはどういうことなの……?」

 アリーは訳が分からないと言った様子だ。

「……なあみんな、ちょっと来てくれないか?」

 とそこでケンが俺たち全員を呼ぶ。俺達3人が集まると、ケンはあるものを見せた。

「これ、もしかしてサラっちのリモコンなんじゃねーか? 今これと一緒にそこに落ちてたんだけど」

 ケンはポーチのようなものと一緒に落ちていたという悪魔見習いが頻繁に利用していたあのリモコンを見せる。

「……! そのポーチは麻梨乃の!」

 アリーは驚き、それを手に取る。中を確認すると、生徒手帳が入っていた。中の人物の名前は吉永麻梨乃となっていたので、どうやら間違いないと考えて良さそうだ。

「……どうやらサラたちに何かあったことだけは間違いないようじゃの」

 ミルダは神妙な面持ちでそう呟いた。

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