表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
我が家に悪魔がやってきた! いちがっき!  作者: 小麦
樹を救え! 母親からの挑戦状
56/181

吉永麻梨乃はたこ焼きがお好き

「これはもしかして、黒い服を着た古風な話し方の女性から受け取ったりしましたか?」

「そ、そうだけど……。何、あの人沙良さんの知り合いなの?」

 沙良の尋常ではない詰め寄り方に数歩後ずさりながら麻梨乃は答える。

「知り合いも何もあの人は私の母親です。ちょっと訳あって今さらわれた樹さんを取り返そうとしている最中なんですけど」

「それで、そこの様子のおかしい桜さんと一緒に探してるってこと?」

 麻梨乃は調子悪そうにしている桜を見て聞く。

「はい、そういうことです。でも、麻梨乃さんはどうしてこれを?」

 沙良は一番気になっていたことを彼女に聞く。

「いや、それが実はね……」

 そう言って麻梨乃は話し始めた。



「たこ焼きたこ焼きー♪」

 数十分前、麻梨乃は沙良やケンがよく食べにくるたこ焼き屋さんへと足を運んでいた。麻梨乃もまたここのたこ焼きが好きでよく買いに来ていたのである。

「今日はすぐに買えそうかな?」

 客の数を見てそんなことを呟く彼女だったが、その時ふと目に留まった人物がいた。

(あの女の人この暑いのに何で長袖の黒い服なんか着てるのかしら?)

 彼女の目に映ったのは黒い服を着た長い髪の女の人だった。しばらくその女性を眺める彼女だったが、そこであることに気付いてしまった。

(……あの人、影がない)

 その女性には影がなかった。

(えー嘘まさかこの年になって霊感に目覚めちゃったの私?)

 影がないということは今麻梨乃の目の前にいる女性はこの世のものではないということになるのだが、それにしても様子が変だ。

(紙?)

 その女性は何かの紙を持って立ち尽くしていた。

(あの紙を誰かに渡せばあの人も成仏できるかも)

 幸いにして麻梨乃以外に女性の姿が見えている人間はいないようだ。ここは勇気をもって話しかけるしかない。そう判断した彼女は女性の元へと一直線に歩いて行く。が、女性の近くに来た直後、その女性は麻梨乃の方を向いた。

「キャッ!」

 麻梨乃は反射的にそんな悲鳴を上げる。

「そなたにも妾が見えておるのか……。もしかしてそなた、サラと言う人物を知っておるか?」

 女性は考え込んだ様子で麻梨乃にそう質問する。

「沙良……? 最近知り合った子が1人いますけど……」

 何が何だかと言った様子で麻梨乃はそう返す。

「やはりか。ということは、そなたも悪魔見習いの契約者かの?」

「えっ、どうしてそれを?」

「なら、これを沙良に渡しておいてほしいのじゃ」

 だが、そう聞き返した麻梨乃の質問をスルーすると、女性は麻梨乃に手に持っていた紙を渡してくる。

「は、はあ……」

 麻梨乃はその紙をおずおずと受け取る。

「それではの」

 女性はそういうとあっという間に消えてしまう。

「ちょ、ちょっと!」

 慌てて声をかける麻梨乃だったが、すでに女性の姿はどこにもなかった。



「というわけで、たこ焼きも買えずにここで沙良さんを待ってたのよ。来てくれて良かったわ」

「それは何か申し訳ないことをしましたね……。すみません」

 沙良は申し訳なさそうに謝る。

「いや、それは別にいいんだけど。で、その紙なんて書いてあるの? たぶん次の場所が示してあるんでしょ?」

「そうでした!」

 沙良は麻梨乃の言葉でその紙を開く。そこに書かれていた暗号はこんなものだった。

(トランプの12 スペードの1の6 クラブの11の3 ダイヤの13の11 ハートの12の7)

「何これ?」

「どうもまた暗号みたいですね」

 沙良は悩む。もう時間はあまりなさそうなので、この暗号が最後であることを祈るしかないのだが、それでもこの暗号は今までの数倍難しいものに見えた。

「トランプの12はともかく、他はどういうことなのかしら。スペードの1の6とか、そんなにトランプに数なんかなかったはずだし。それに、ダイヤとハートの数字がひっくり返ってるのも気になるわね」

「これは他にも意味がありそうですね……」

 2人は答えの分からない暗号に難しい顔をするのだった。



 場面は変わって、俺こと町村樹とミルダがいる倉庫では。

「それで、この話をする前にまず、そなたには悪魔見習いの説明をしておかねばならぬ」

「悪魔見習いの説明……ですか?」

 俺はミルダに聞き返す。

「うむ。まず、悪魔見習いにはそれぞれ固有の能力があることは知っておるか?」

「はい。沙良から聞いてます」

 それは既に聞いたことのある話だった。沙良たち悪魔見習いには7つの大罪に合った固有の能力があるのだ。

「では、その固有の能力の中で、悪魔界の取り決めで人間界で使用してはならないと規則で決められておるものが2つあるのじゃが知っておるか?」

「そうなんですか?」

 その話は初耳だった。

「まあ、サラたちがそこまで説明する必要はないからの。知らないのも無理のない話じゃ」

 ミルダは納得したように頷く。

「暴食・色欲・怠惰。そなたが今まで出会ってきた悪魔見習いたちは皆固有の能力を人間界で使用することができるのは知っての通りじゃ。じゃが、強欲の悪魔見習いともう1人、今回問題となっている憤怒の悪魔見習いはその使用を認められてはおらぬ」

 ミルダはそう俺に説明を始めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ