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我が家に悪魔がやってきた! いちがっき!  作者: 小麦
アリーとサラ 樹が知る悪魔見習いの真実
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確信に迫る樹

「私の固有能力は変身。こないだ会った時にそれは嫌というほど見せたはずだけど。それでも私を出し抜こうとしてまでサラと連絡を取ろうとした理由は何?」

 アリーは俺の方を睨み付けるような目で見る。それは今まで彼女が見せたことのない表情だった。

「……それがお前の本当の顔かよアリー」

「本当はあなたを騙して上手いことするつもりだったんだけど、どうやらそう上手くはいかなかったみたい。教えてくれる? どこで私のことをおかしいと思ったのか」

 彼女は不思議そうな目をして俺に問いかける。そこにいたのは俺の知るアリーではなく、色欲の悪魔見習いとしての顔を持つ冷酷な女だった。

「俺が違和感を持ったのは吉永さんのあの態度だ。お前から聞いた限りだが、吉永さんはわがままな性格の女の子だったはずだ。そんな女の子があんなに奥手になる訳がないって思ってな」

 わがままな女の子ならある程度自己主張が強いはずだ。ということは、自分のことを好きになってもらうために俺のことをもっと知ろうといろんなことを聞いてくるはず。にもかかわらず彼女は恥ずかしがってまるで会話になるような状態ではなかった。これは誰かに操られている方が自然だと考えたのだ。

「それだけ?」

 アリーは残念だ、と言ったように俺を見る。

「今のは推測だけどな。そこを怪しいと思った時、決定的におかしいと思ったのは俺と待ち合わせた時にお前がした行動だよ」

「私の行動?」

 彼女は訳が分からないと言ったように俺を見る。

「ああ。あの時お前、俺をひっかける時に人差し指で俺のことを触っただろ? あれが俺の友達なら別に不思議にも思わなかったけど、お前は俺に冗談でそんなことをするような性格じゃない。だから、そこには何か意味があるんじゃないかと思ったんだよ」

「それで、あなたが出した結論は?」

 彼女の目に生気が戻る。それは何か面白いものを見るような、そんな目線だった。

「お前、あの時俺に何かの能力をかけたんだろ? たぶん吉永さんを俺に惚れさせる能力か何かを。つまり、俺が今日立てたこの計画そのものがお前によって仕組まれたものだったんだ」

「なるほど。でも、この計画を立てたのはあなたじゃなかった?」

 アリーは不思議そうな顔をして俺を見る。

「ああ。だから、俺はその前段階から騙されてたんだよ」

 俺はアリーの追及を次々とかわしていく。

「いろいろ考えた俺が帰って来た時、沙良がたまたまテレビをつけた。そしたら恋愛ドラマがやってて俺がこの計画を思いついた。あまりに出来過ぎだったと思わないか?」

「何が言いたいの?」

「つまりこの計画を俺に立てさせるための協力者がいたって言いたいんだよ。そうなんだろ、沙良」

「私がいたの分かってたんですか?」

 沙良が姿を現す。

「いくら何でもお前に連絡してからアリーが来るまでの時間が早すぎる。彼女に監視する能力があるわけでもないことを考えれば、協力者は自然とお前一人に絞られるって訳だ」

「まあ、確かにアリーの相談に乗りはしましたし、彼女がここに来るように連絡を入れ直したのも私ですけど。ただ、私はこの子に協力と言うほど協力したわけではありませんよ。テレビをつけたのも本当にたまたまでしたし」

「え、そうなのか?」

 俺は拍子抜けしたように沙良を見る。

「私が頼まれたのは樹さんが私に連絡を入れた時にアリーにもその内容を伝えることだけです。私もずっと不思議だったんですが、ここまで大事になってくると、契約者を使ってまで私たちを引っ掻き回したその目的については私も聞いておきたいところですね」

 沙良はアリーをじっと見る。

「それじゃ、場所を変えて答え合わせ。ここは男子トイレだし、私たちがいつまでもいるのは危険」

 もう言い逃れるつもりはないのか、アリーは俺と沙良に外に出るように促した。



「まず、さっきのあなたの推理は半分正解」

 カフェに戻ってきた俺は、沙良も含めて今度は4人で座る。ただし、吉永麻梨乃だけは相変わらず顔を真っ赤にしていた。

「あなたの顔に人差し指で触れて麻梨乃のタイプの顔に見えるようにしたのは私。麻梨乃がこの人を見たらドキドキして話せないようにしたのも私。ただ、その手前の計画は私が考えたわけじゃなくて、あなたが生み出した偶然の産物」

 言いながらアリーはそれぞれ俺と麻梨乃の頬を人差し指でなぞる。能力を解除しているのだ。

「つまり、あなたの計画に加えて、それを利用して私はあなたがサラに願いを叶えるように仕向けようとした。これが今回の真相。結局失敗しちゃったけど」

「何よ、じゃあ私がこんなにこの男にドキドキしてたのは全部あんたのせいだったって訳?」

 麻梨乃は恐ろしい剣幕でアリーに詰め寄る。話せるようになった途端、彼女の地がどうだったのかすぐに分かるような口調だった。

「そういうことになる。実際麻梨乃のわがままなところは直してほしかったし」

「あんたねえ……」

 麻梨乃はさらに詰め寄ろうとするが、

「麻梨乃。あなたはそんな人じゃなかった。私の能力を使う前のあなたはもっと優しかった。だから、そんな麻梨乃に戻ってほしい、そう思って私はこの計画をこの人たちに頼んだ。私の大好きだった麻梨乃に戻ってもらうために。それを分かってほしい」

 今度は麻梨乃の目をしっかり見てアリーが説得する。

「……分かったわよ。アリーがそこまで言うなら、もう少し考えて願いを叶えてもらうことにするわ」

 麻梨乃は少しだけ顔を赤くし、照れ隠しをするようにそっぽを向く。何だかんだ言ってもこの二人は仲がいいのだろう。

「で、そっちが解決したなら今度はこっちを説明してもらおうか。何でこんな回りくどいことをしたんだよ」

 ほほえましいのは結構だが、こっちについてもきちんとした説明がないのは困る。

「今から説明する」

 アリーはこちらに向き直ると、今度こそ俺たちの方の説明に入った。

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