桜の番外編コーナー②
「それでは次のコーナーですが、えっとこれは……」
「私が読む。えっと、入れ替わるなら誰? のコーナーみたい」
「いや、みたいってどういうことよ」
私はアリーさんに突っ込みを入れてしまう。
「私も分からない」
すると、二人の目の前にカンペが差し出される。
「……どうやら今まで登場した6人のキャラのうち誰かと入れ替わるなら誰がいい? ってコーナーみたいね」
「実際は自分にはなれないから5人になる。でも、誰がいいって聞かれるとなかなか悩みどころ」
「そうね……」
私たちが悩んでいると後ろから2人の元にフリップが差し出される。
「どうやらこれに書けってことみたい」
「そうみたいね。それじゃ、少しだけ書く時間を取りましょう。制限時間は3分で」
「分かった」
私たち2人は少しの間フリップに向かってにらめっこすることとなった。
「それでは時間となりましたので、2人同時に開けてみましょう。せーのっ!……ってえっ?」
私の合図でフリップを開けると、二人とも同じ人物の名前を書いていた。
「アリーさんも沙良さん?」
「私の知り合いはこの中だとサラかケンか麻梨乃くらいしかいない。この三人の中で誰か選べって言われたら消去法で付き合いの長いサラしかない」
アリーさんは当然のように答える。
「それより、桜はどうしてサラ?」
「私もケンか樹君か沙良さんを考えた時、ケンは論外として樹君の頭脳を活かしきれるとは思わないからそれなら沙良さんかなって」
「なるほど一理ある。有能な人間は残してダメな奴は消す、鉄則として間違ってない」
アリーさんも納得したらしい。
「そういうつもりじゃなかったんだけど……」
私がその続きを言いかけたその時、突然スタジオ内にテロップ音のようなものが鳴り響く。
「えっと、これはどうやらゲストの登場みたいですね。私たち2人にゆかりのある人物が来るそうです」
「私たち2人にゆかりのある人物……。誰が来てもおかしくないけど」
アリーさんは考えているようだ。だが、かくいう私もその正体は知らない。ならば登場してもらおうではないか。
「それでは登場するのはこの方です。どうぞお入りください!」
その合図とともにこの会場に入場してきたのは……。
「サラ……!」
「久しぶりですねアリー」
アリーさんは感動したように沙良さんを見ていた。
「何でも作者から見てキャラの立ち具合で判断されてここに呼ばれたらしいです。まったく迷惑な話ですよね。一応この話って私が悪魔になるまでを書いているはずなんですけど」
沙良さんはあまり機嫌が良くないらしい。もっとも確かこの話の主人公は樹君なので、彼女の言い分は当たっているのか外れているのか現時点では分からないのだが、そこについて触れるのはやめておこう。
「では、沙良さんにご登場いただいたところで、最後のコーナーに行きましょう。ってもう最後なの?」
私は2人の方を見る。
「一応3コーナーやってるし、数としては十分」
「いや、だって私本編でしばらく出番ないって聞いたんだけど……」
「まあまあ、とりあえず先に進みましょう桜さん」
来たばかりの沙良さんにまで諭されてしまったので、私はしぶしぶ先に話を進めることにした。
「……それでは最後ですが、最後はアリーさんの契約者、吉永麻梨乃さんについて大胆予想してみよう、のコーナーです!」
「そういえばアリーの契約者ってまだ登場してませんね」
「それを予想するのが最後のコーナー。つまり私に出番はない」
アリーさんはしょんぼりする。
「ちなみに沙良さんはどんな感じの子だと思う?」
「そうですね、アリーがこんな感じの性格だから、意外とギャルっぽい感じの子かもしれませんよ。あとはアリーと同じくらい大人しめの子って線もありますね」
「なるほど。私はそれじゃあ大人のお姉さん系の女の人を予想してみようかな」
「あーそういう路線もありますね。さすが桜さん侮れない……」
沙良さんは私の方を見て感嘆したような声を上げる。
「で、私たちの予想はこんな感じになったんだけど、アリーさんから答えを発表したりとかそういうのはないの?」
私は拗ねていたアリーさんに水を向ける。
「私としては話してもいいんだけど、さすがに本編じゃないところで麻梨乃のことを細かく語ることはできない……って作者が」
「また作者か……」
私は頭を抱える。
「ただ、1つだけ言ってもいいことがあるみたいだから話す。サラも桜も麻梨乃に一度は会ったことがあるらしい」
『ええっ!』
私たち2人は同時に声を上げる。
「いつですかね……」
「まったく記憶にないわ……」
私たちは記憶をたどってみるが、まったく思い出せない。
「もっと言うと、麻梨乃に会ったことがあるからさっきのコーナーでサラが呼ばれたみたい。私はその場にいなかったから分からないけど」
「そうだとしたらいったいいつ……」
私もサラさんも考え込んでしまうが、その直後にデパートの閉店時間間際によく流れるあのBGMがスタジオ内に鳴り響く。
「どうやらそろそろお別れの時間みたい」
「ちょっと、まだ聞きたいことが……」
私はアリーさんにそう話しかけるが、
「というわけで我が家に悪魔がやってきた! は新キャラの私、アリー・サンタモニカの登場でますます面白くなってくると思うのでお楽しみに」
「私の番組がー!」
アリーさんが時間通りに終了してしまったせいで、そこには私の空しい叫び声がこだまするだけだった。




