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我が家に悪魔がやってきた! いちがっき!  作者: 小麦
バトルロイヤルスタート!
163/181

ルール説明

「まず、今回悪魔見習いの諸君にやってもらうのは簡単に言うとサバゲーかしらね。あ、サバゲーで分かるわよね、サバイバルゲーム」

 ご丁寧に略称まで説明した後、メルは説明を続ける。

「全員に今から支給される水鉄砲の引き金を引いて、相手に水をかければ勝ち。かかったその瞬間にその悪魔見習いはリタイアにするからよろしくね」

 観客席で話を聞いていた俺はなかなかハードなゲームだな、と思う。この手のゲームにありがちな変則的なルールなど一切ない。運と実力だけが試されるこれ以上ない公平なルールと言えるだろう。沙良も神妙な面持ちで目の前の水鉄砲を受け取っていた。

「追加ルールとしては、リタイアになった悪魔見習いが水鉄砲を命中させても無効ってことかしら。つまり、リタイアさせればその悪魔見習いがゲームに参加することは許されないってことね。ただし、リタイア前にひかれた引き金によって水鉄砲が命中した場合は有効。つまり、相打ちの場合は互いにリタイアするってこと。ここ重要だからよく覚えておいてね」

(……今の説明はどういうことだ?)

 普通に考えれば何か裏がある、と捉えるべきなのだろう。だが、失楽の悪魔見習いにはリタイア前に水鉄砲を操作する能力は存在しない。つまり、失楽の能力がこのルールによって悪用されることはない……はずだ。

(とはいえ、わざわざ説明されたルールだ。何か裏があることは間違いないはず。沙良がこのゲームのルールをどこまで生かせるかにかかってそうだな……)



 一方の沙良は、ルール説明を聞いている間、いくつか考え事をしていた。

(……今日の朝の樹さんの様子、何かおかしかったような気がします)

 彼女が気になっていたのは朝の樹の態度だった。普段は上の空になるようなことのない樹だが、今朝に限って様子がおかしかった。

(隠し事をしていると考えるのはさすがに考えすぎでしょうか?)

 あまり疑いたくはないが、その可能性は決してないとは言えなかった。であるなら、試験開始前にきちんと白黒つけておかないといけない。水鉄砲を受け取りながら沙良はそう結論付けた。

「追加ルールとしては、リタイアになった悪魔見習いが水鉄砲を命中させても無効ってことかしら。つまり、リタイアさせればその悪魔見習いがゲームに参加することは許されないってことね。ただし、リタイア前に発射された水鉄砲が命中した場合は有効。つまり、相打ちの場合は互いにリタイアするってこと。ここ重要だからよく覚えておいてね」

(……追加ルールですか危ない危ない)

 うっかり大事な説明を聞き逃すところだった。この説明の有無によっては大きくゲームルールが変わってしまうこととなる。

「よし、頑張りましょう」

 沙良は気合を入れなおした。



「それじゃ、第一試合を始めるから、呼ばれた悪魔見習いは前に出てくること」

 メルはそう言うと、順々に名前を呼んでいった。

「まず、暴食の悪魔見習いサラ・ファルホーク。怠惰の悪魔見習いバーク・デイタム。色欲の悪魔見習いロリア・ファシリア。憤怒の悪魔見習いラミア・ヴィオレット。嫉妬の悪魔見習いケラド・ワイルゼ。強欲の悪魔見習いレイ・クロックス。傲慢の悪魔見習いベルガ・ジュアーヴォ。そして……」

 既存の大罪の名前を呼び終わると、メルは一呼吸置いた。

「失楽の悪魔見習いジョー・マクロイド」

 その名前が呼ばれた瞬間、観客席がざわつきだす。そして俺も予想していたこととはいえ、呆然としてしまった。

(ジョー……。あいつ、悪魔見習いに復活してやがったのか)

 ということは……。俺は沙良の方を見る。何かを考えていたのか、沙良もこちらを見てきた。

(樹さん、どうやら予想が当たったみたいですね)

(お前、またテレパシーか?)

 脳内に直接語りかけてくるこの感じはつい最近も経験があった。

(今回は他の悪魔見習いも含めてテレパシーが解禁されているようです。人間と話せるように魔界側としても配慮がされているようですね)

(……なるほど。で、何でこのタイミングでテレパシーを?)

(試合前に確認したいことがあるんです。樹さん、私に何か隠し事をしていますね?)

(……何のことだ?)

 誤魔化そうとする俺。

(いえ、別に私に話せないことならいいんです。ただ、私に対する樹さんの信頼がその程度だったなら残念だな、と思っただけで)

 寂しそうな沙良の声を聴いて、俺は少し悩んでサラに話すことにした。

(……ブラードさんには黙ってろって言われた話がある。お前が聞きたいなら話してもいい)

(お父様ですか!? いえ、それなら私が無理に聞くこともないのかもしれません)

 沙良はすぐに一歩引いた。自らの立場は理解しているということなのだろう。

(いや、でもこれはお前が聞きたいなら話すべき話なのかもしれない。最初は悪魔に話したくない話なんだと思ってた。でも違う。たぶんお前が試合前にショックを受けないようにって配慮だったんだろう)

 ブラードが言葉足らずで説明したと考えれば辻褄は合う。もともと口数の少ない気難しい人物だ。おそらく意味合いとしてはそんな意味合いもあったのだろう。

(どういうこと……いや、聞くのはやめておきましょう。試合が終わったら、教えてくれるんですよね?)

(ああ。勝ち上がったら、な)

 もちろんその前に片を付けるつもりではあるのだが、こう言っておけば沙良も不安になることはないだろう。

(そう言われたらますます負けられなくなってきますね。ありがとうございます)

 その瞬間、テレパシーは切れた。つまり、聞きたいことは済んだということなのだろう。

「さーって、じゃ、今呼んだ8人を特製のバトルフィールドに移動させるわね。せーのっと」

 直後、サラも含む8人の姿が消えた。

(……いよいよ、バトルスタートか)

 俺は身構えた。

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