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我が家に悪魔がやってきた! いちがっき!  作者: 小麦
バトルロイヤルに備えろ!
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何人寄っても文殊の知恵

「……アリーがねえ。ま、しょうがねーんじゃねーか?」

 俺から話を聞いたケンの第一声はこれだった。

「意外とあっさりした反応だな?」

「あいつの事情は俺もうっすらと本人から聞いてたからな。今更何を言われたってあいつが決めたんじゃどうしようもねーだろ」

「ケンもアリーのこと聞いてたんですか?」

 沙良は意外そうにケンの方を見る。

「あいつとお前の馴れ初めくらいはな」

 ケンはそう言ってから改めて考える。

「まあ、それはそれとしても、失楽の悪魔見習いの設立の方は考えないとダメかもしれねーな。でも何でこんな重要な情報をグランは俺に教えなかったんだ?」

「……あの、ケン。それ、たぶんこれのせいなんじゃないかと思うんだけど」

 桜が恐る恐るシラベールを見せると、なぜかケンの消滅する可能性が上昇していた。

「おいどういうことだよ。何で俺のメーターが上がってんだ?」

 ケンはものの数秒で突っ込みを入れる。

「なるほど。ベルフェゴール様はこの件については中立の立場を保ちたいってことなんですね。だから中間試験であんな指令を出したんでしょう」

「おいおい嘘だろ……。今回俺は何もできねーのかよ……」

 ケンはもどかしさを感じながら頭を抱える。俺はケンに助け舟を出してやることにした。

「いや、そういうわけでもないと思うぜ。あくまでこれは直接的に失楽の悪魔のことを考えた場合についての話だ。さっきは気にしないみたいなことを言ってたけど、俺たちの代わりにアリーの動向を見守ることはできるだろ? 要はお前が失楽の悪魔見習いの件に直接的に絡まなければ俺たちを助けることはいくらでもできるってことさ」

「そうですね。アリーが私たちと接しようとしない以上は、試験の間どうしてもアリーのことを見守る役目を誰かに頼みたいです。今回ケンにはそちらの方をお願いしたいのですがダメでしょうか?」

「……サラっちに頼まれたんじゃしょうがねーな。分かった。今回はアリーの方を俺が担当させてもらうぜ」

 ケンはしぶしぶだったが、沙良の申し出を受けてくれた。これでアリーの方についてはひとまずケンに任せられそうだ。ひとまず安心、と俺が一息つきかけたその時、沙良が突然立ち上がって身構えた。

「おい、何だどうした沙良」

 ただならぬ彼女の様子に俺も思わず立ち上がる。 

「……樹さん、誰かがすごいスピードでこっちに来ます。2人。いや、2匹でしょうか」

「だな。俺も感じるぜ」

「お前ら普段悪魔が来るときはそういうの全然なかったじゃねーか」

 思わず突っ込む。アリーが来た時もミルダが現れた時も、沙良は気配について一度も触れたことはなかった。

「魔界にいるときは悪魔本来の能力が研ぎ澄まされるんですよ。何せホームグラウンドですから」

「そういうこと……あれ?」

 かっこいいことを2人で言っていた沙良とケンだったが、いざその悪魔たちが近づいてくると、臨戦態勢を途端にやめてしまった。

「何だよどうしたんだよ」

「どうやら敵じゃなかったみたいです。あれは樹さんも私もよく知る悪魔見習いですよ」

「……?」

 俺と桜が彼女の発言の真意を分かることになるのは、それから数十秒後に現れた悪魔2匹がガイン・ハルベルトとラミア・ヴィオレットであることを確認できてからだった。



「アリーに会った。聞いてはいたんだが、いざ確かめてみるとなかなかに落ち込むね。どうやらアリーは今回僕たちと話す気がないみたいだった。麻梨乃の方は僕に会釈をしてくれたけどね」

 最初に口火を切ったのはガインだった。どうやら彼らは実際にアリーと会ったらしく、そのことについて俺たちに相談に来たのだという。失楽の悪魔見習いにしてもアリーのことについても、事情そのものは既にゼノから聞いているとのことだった。

「居候させてるガインとも話さないとなると、これは相当重傷というか……。あの子のやりたいことは分かるんですが、本当に何を考えてるんでしょうか」

「まあ、あいつが1人で戦おうとしてることがはっきりしただけでも良しとしとこうぜ。それに、今の話を聞く限りだけど、吉永さんなら話してくれるかもしれないだろ?」

「……まあ、それしかないですよね」

 必死になだめたおかげで沙良はどうにか納得したようだった。

「何にしても、明日の試験でのアリーの協力は期待できないということだな」

「ただ、敵になるつもりもないらしい。あいつも一応第8の悪魔見習いの創設に反対らしいからな」

「それなら僕も話は聞いてる。あくまで1人で戦いたいってのが今回の彼女の考えなんだろう。僕たちはそれを尊重するしかないんじゃないかな」

 全員がその意見には賛成だった。

「ところで、失楽の悪魔見習いはいったい誰がなってるんだろうね?」

「それは私も気になりますね。その能力も含めて全員で少し予想を立ててみましょうか」

「そうだな。これだけの人数が揃ってるわけだし、少しみんなで考えてみよう」

 集まった俺たちはこのような形で情報交換を繰り返し、明日の中間試験に備えることにした。

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