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我が家に悪魔がやってきた! いちがっき!  作者: 小麦
中間試験とバトルロイヤル
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バトルロイヤル!

「……それじゃあ、バトルロイヤルの方を聞かせてもらってもいいですか? いったい何をするのかまるで分かってませんし」

 沙良はもう片方の試験、バトルロイヤルについてゼノに聞くことにした。こちらの試験に関しては今まで開催されたこともなければ特別な前例があったわけでもない。彼女からすれば何をするのか知りたいのは当然とも言えることだった。

「そうですね。こちらについてもそろそろ教えるとしましょう」

 そう言ったゼノは小型のピストルのようなものを取り出した。と言っても形がピストルのようになっているだけで、実際は水鉄砲だ。

「予選の勝利条件はこの水鉄砲で相手に弾を当て、相手をリタイアさせることです。会場はこちらで用意しますが、そこそこ広い場所になることだけは承知しておいてください」

「……予選?」

 俺は聞き返す。予選ということは本選もあるということになる。

「はい。何せ16人で行うので、AとBそれぞれのブロック8人ずつで勝者を2人ずつ勝ち残らせ、その4人で決勝戦を行うことになったのです」

「何でまたそんな大人数に……」

「私としても大人数にするのはあまり賛成ではなかったんですが、各悪魔見習いの代表を2人ずつ選んでいたらこうなってしまいまして。ほら、一番少ない私たちでも今では2人の悪魔見習いがいるじゃないですか。これでも最小限に抑えたつもりだったのですがね」

 言われてみると、つい先日暴食の悪魔見習いはガイン・ハルベルトが加わったので2人に増えたばかりだ。

「まさか、そのために暴食の悪魔見習いを増やしたわけではないですよね?」

 沙良はジト目でゼノの方を見る。確かにタイミング的にもピッタリだし、疑うのは無理のない話だ。だが、ゼノはその沙良の推測に大きくかぶりを振った。

「いえ、それは違います。そもそもこの話が持ち上がったのは私があなたたちの再試験を終えて魔界に帰ろうとしていたタイミングですから」

「何でそんなタイミングで……」

「そこについては私も分かりかねます。そもそも私はメルと仲が良いわけでもありませんし」

 しれっとそんなことを言うゼノ。

「じゃあどうしてそんな危険な案に乗っかろうと思ったんですか?」

 俺は純粋な疑問からそんな質問が思わず口をついて出てしまっていた。

「……あなたたちには話しておいてもいいかもしれませんね。実は私がメルさんの案に乗っかったのはもう1つ訳があるんです」

 ゼノはそう言うと、もう1つ俺たちにその理由を話し始めるのだった。



「……なあ、どう思う?」

 話を聞き終わった俺と沙良はさつきを迎えに行くために先ほどの待合室に向かっていた。

「どう思うというのは?」

「ゼノさんの話だよ。あれは期待されてるってことでいいのか?」

 俺はゼノに数分前に言われた言葉を思い出していた。



「私があの案に乗っかったのはもう1つ、自分の意地もあるんです。私が手塩にかけて育ててきた暴食の悪魔見習いたち、その最初の代表であるあなたと樹さんが他の悪魔見習いたちに負けるはずがない、という」

 ゼノはそう言うと、俺たち2人の方に手を置いた。

「正直魔界に悪魔見習いの枠を増やすかどうか、これは魔界の問題です。樹さんにはあまり関係のない話かもしれません。でもあなたたち2人にはぜひ他の悪魔見習いにも勝ってほしい。いや、必ず勝てるはずだ、そう信じています。だから、魔界云々だけではなく、ぜひあなたたちの成長のためにも、全力で戦ってみてください」



「……たぶんそうでしょうね。ベルゼブブ様にあんなことを言われたのは初めてです。私はガインと違って初めからこの人間界に送られている悪魔見習いですから、ベルゼブブ様の思い入れも強いのでしょう。自分で言うのもなんですけどね」

 沙良は拳を強く握る。

「だから、絶対に負けるわけにはいかなくなりました。ベルゼブブ様のメンツのためにも、たとえ誰が相手でも負けませんよ」

「沙良はそうでなくっちゃな」

 俺は彼女がいつものように何も変わっていないことを知り安心した。彼女はいつでもこういう悪魔なのだろう。

「さて、それじゃ片桐を連れてまた魔界巡りをするとしようぜ……ってあれ?」

 俺はそう言いながら扉を開ける。だが、そこに片桐の姿はなかった。

「おい、片桐はどこに行ったんだよ」

「おかしいですね、ここは外部から誰かが入ってこないと1人では抜けられないはずなのに……」

 その沙良の言葉で俺ははっとする。

「まさか、誰かが侵入したってことなんじゃないのか?」

「だとして誰がです? さつきさんは魔界で誰かの恨みを買うような行動はしてませんし、まして彼女は人間ですよ? こんなところまで来てわざわざ人間を誘拐する物好きがいるとも思えないんですけど」

「俺に聞かれてもなあ……」

 とその時、破り捨てられた白いメモのようなものがはらりと俺の足元に落ちる。

「……何だこれ?」

 周りにかわいい装飾が施してあることを考えると、どうやら女性用のメモらしい。それを拾い上げてざっと読んだ俺は、はあ、とため息をつきながら沙良に手渡す。

「沙良、これ読んでみろ」

「さつきさんがいなくなってるのにそんなのんきな……」

 そう言いながらもメモを読んだ沙良もまた同様に頭を抱える。そこにはこんなことが書かれてあった。

(目的が果たせたからお暇するね! さつき)

「これ、さつきさん本人の字で間違いないんですか?」

「ああ。とりあえず心配ないってことでいいんじゃねーか?」

 しかし、と俺も沙良も同時にこんなことを思っていた。

『今日はあいつの(さつきさんの)勝手な行動でずいぶん振り回され(まし)たな(たね)……』

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