表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
我が家に悪魔がやってきた! いちがっき!  作者: 小麦
中間試験とバトルロイヤル
147/181

例え味方でなくても

「ベルゼブブ様申し訳ありません! 暴食の悪魔見習いサラ・ファルホークただいま到着しました!」

 ゼノの元に到着するや否や、いつも以上に丁寧な言葉の選び方で謝罪を始める高梨沙良ことサラ・ファルホーク。ゼノに呼び出された彼女は樹とさつきを連れて慌ててゼノの元へと向かったのだった。ちなみに彼女の出せる最高速度で向かったせいで2人が気分を悪くしたのはまた別の話である。

「いえ、まあ別に怒ってはいないのでいいんですけど。それで、契約者の樹さんとこっそり紛れ込んだ片桐さつきさんでしたっけ? は一緒に来てますよね?」

「はい。おっしゃっていた通り、この部屋の手前にあった応接室で待たせてあります」

「なら大丈夫ですね。まず、あなたにだけ話しておかなければならないことがあります。アリー・サンタモニカさんのことで」

「アリーですか?」

 ゼノから意外な人物の名前が飛び出してきたことでさらに首をかしげる沙良。

「はい。今回試験が2つあることは既に伝えた通りですが、その後半の試験でアリーさんはあなたの敵として戦います」

「……どういうことですか?」

 ゼノの発言の真意を測りかねる沙良は、彼に質問をする。

「理由は彼女が今回色欲の悪魔見習いではなく、嫉妬の悪魔見習いとして戦うからです。わざわざ悪魔見習いの名前を変えて出場する意味、ずっと一緒に仲良くしていたあなたなら分かりますよね」

「……そうでしたね。あの子はそういう子でした。今回は自分だけの力で戦って、他の悪魔たちを見返したいってことなんでしょうね。私たちに頼らないままに戦うことが、あの子にとって一番の試験だと」

「そういうことです。このことを樹さんに伝えるかどうかは任せますが、伝えるならできる限りやんわりと伝えてあげてください。そして、もしあなたが戦うとなった時は……」

「はい。きちんと手を抜かず、全力で相手をさせていただきます」

 沙良は頷いた。

「その返事を聞いて安心しました。なら、この件については以上ですね。それでは樹さんを呼んできてもらえますか。次は試験の話をするので」

「はい。それでは失礼します」

 沙良はそう言うと、一度ゼノの部屋を後にした。



「すみません樹さん。ちょっと急がせてもらったんですが、大丈夫ですか?」

「……大丈夫じゃねーから早く俺のこの吐き気を吸い取ってくれ。じゃないとマジで吐きかねん」

 沙良が戻ってきたのを確認した俺は満身創痍の状態で沙良にそう伝える。

「あ、あたしも……」

「ああさつきさんまで! ちょっと待っててください!」

 彼女は自らの能力をフルに使うと、俺とさつきの吐き気を吸収した。沙良の能力は吸収であり、どんなものでも吸い取ることができるのだ。例えそれが目に見えるものだろうと目に見えないものだろうと、彼女の能力はありとあらゆるものを対象とする。

「た、助かった……」

「死ぬかと思っちゃった……」

 俺とさつきはそれぞれそんな感想を述べる。

「すみません」

 土下座する勢いで謝る沙良。

「まあ許してあげないこともないけど?」

「原因作った張本人が何を偉そうな口叩いてやがる」

 さつきに軽い突っ込みを入れる俺。

「んで、話は終わったのか?」

「はい。後で樹さんにはお話ししなければならないことがあるので、きちんと聞いてくださいね?」

「……俺何かしたっけか?」

 沙良のその言葉に恐怖を覚える俺だった。



「……で、さつき一人を置いて俺と沙良だけで来ちまったけど大丈夫か? あの好奇心の塊みたいなやつを一人で置いとくのはものすごく危険だと思うんだが」

 俺は置いてきたさつきの方を見て心底心配そうな顔をする。

「大丈夫ですよ。さつきさんもさすがにこんなところで一人になりたがることはないでしょう」

「……ならいいんだけどな」

 好奇心の塊のようなさつきにその言葉がどこまで信用できるか怪しいところだが、今は沙良の言葉を信用しておくことにしよう。そう思いながら、俺は沙良とともにゼノの部屋の前に立つ。重々しい扉の向こうには何やら謎の禍々しい気配を感じる。

「ここがゼノさんの部屋でいいのか?」

「はい。ちなみに部屋自体は物々しいですけど、基本的にはそんなに重苦しい場所ではないので」

「……本当だろうなそれ?」

 沙良に疑いの目を向けてみる。

「私が嘘ついたことがありますか?」

「結構あると思ったけど」

「……さあ、とりあえず入りましょう」

「おいこらスルーすんな!」

 だが、俺が言葉を言い終わるかどうかのうちに沙良は扉を開いてしまう。目の前には以前一度だけ見た沙良直属の上司であるゼノが椅子に座っていた。

「ようこそ樹さん、我が暴食の間へ。改めまして自己紹介をさせてもらいます。私の名はゼノ・ファミュー。暴食の悪魔を務めさせていただいております」

 恭しくお辞儀をするゼノ。

「あれ、前と苗字と名前の順番が逆だぜ?」

「あれは人間界風、というか日本の自己紹介に合わせただけです。本来の私の名前はこっちなので、きちんと覚えてください」

「はあ……」

 何だかややこしいが、とりあえず覚えろということらしい。俺は困惑気味に頷いた。

「それでは半ば強引に樹さんを納得させたところで……」

(あ、自覚はあるのな)

「暴食の悪魔見習い中間試験の内容を発表します」

 ゼノがそう言った瞬間、沙良がきちんと姿勢を正した。

(いったいどんな内容だっていうんだ?)

 俺もその返事を無言で待つのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ