表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
我が家に悪魔がやってきた! いちがっき!  作者: 小麦
魔界ってどんなところ?
146/181

魔界名物その③ 変わった動物たち

「さて、次は、というかもう最後なんですけど。この動物たちが何なのか分かりますか?」

「……いや、何をどう見ても見たことない動物なんだけど。特に何だよあのガーゴイルとオオカミを足した感じのよく分かんない動物は」

 次に沙良が案内してくれたのは隣り合わせに配置されていた2つの檻だった。片方は犬と猫を混ぜたような外見だったが、足についているひれのようなものが違和感を感じさせた。もう1つに関してはとにかく獰猛そうな印象を受けたが、俺の知っている生物だとガーゴイルとオオカミが一番その生態に近かった。

「犬と猫の雑種自体はそんなに珍しいことじゃないんですけどね。あれの珍しいところは足に魚のひれがついてることなんですよ」

「まあそれは見れば分かるけど……」

「あれって名前何て言うの?」

 ドライな俺とは対照的に、さつきは興味津々といった様子で聞く。

「一応カグッシュって名前がついてるみたいです。みんなそんなよく分からない名前よりも愛称のグーちゃんって方で呼んでますけどね」

「呼び方は犬が勝ったんだな」

「らしいですよ」

「グーちゃーん!」

 俺と沙良がのんびりそんな話をしている間に、さつきは早速檻の方に行ってそのカグッシュなる動物と触れ合っていた。

「……あいつはもうほっとこう。それで、もう一匹のあれは何なんだ?」

「あれはオオゴイルですね。樹さんワーウルフってご存知ないですか?」

「ああ。あれも人とオオカミの雑種なのか?」

「厳密にはちょっと違うんですけど、ざっくり説明するとそれのような感じです。オオカミとガーゴイルの特性を併せ持った全く新しい動物ですね」

 沙良は例えを持ち出しながらそんな説明をする。

「へー。月を見ると姿形が変わったりとかもあるのか?」

 ワーウルフには確かそんな話があったはずだ。

「いえ、ワーウルフの変身そのものが創作物に由来するものなので、そういったものはないです。ただ、夜になると動きが俊敏になったりとかっていうのはあるみたいですね。オオカミの特性上仕方ないとは思うんですが、ガーゴイルが石像として固まってたとしても月が出るとその瞬間に石化が解けて暴れだすそうで、ものすごく困った動物って立ち位置でこちらに預けられてます」

「……何で作ったんだ?」

 素朴な疑問をぶつける俺。

「そればっかりは私に聞かれても分かりませんね。いろんな研究には犠牲がつきものってことじゃないですか?」

「そんなどこぞの敵キャラみたいな発言しなくても」

「確かにこれじゃやられ役ですね」

 俺と沙良は顔を見合わせて笑った。



「……遅い」

 一方その頃、暴食の悪魔ゼノは苛立ちを隠せない様子で机の周りを行ったり来たりしていた。

「あれだけ早めに来るように言っておいたのに、サラさんたちは何をやってるんでしょうか」

 もっとも、サラが時間を守らないのは今に始まったことではない。大体そういう時には何か予期せぬトラブルに巻き込まれている時だ。

(そういえば、前に遅刻したときは確か……)

 ゼノが思い出そうとしたその時、彼はテレパシーを受信した。

「……遅いですよサラさん」

「すみません。ちょっと樹さんとさつきさんの2人を魔界案内してました」

「……さつきさん?」

 聞きなれない人物の名前にゼノは首をひねる。

「ああ、こないだの再試験の時にティーナさんを泊めてくれた人間の方です」

「その人間がなぜ魔界に?」

 サラは事情を説明する。

「なるほど。鍵をかけていたのにピッキングして無理やり魔界に来たと」

「そういうことになります。どうしますか彼女のこと」

 ゼノは少し考え、サラに指示をする。

「いつもならすぐに帰らせろ、というところですけどね。今回は特例で来てもいいことにしましょう。ただし、ちょっとだけ試験に協力してもらいますが」

「試験? さつきさんにですか?」

 サラは当然驚いたような声を出す。

「はい。詳しくはこちらに来た時に説明しますから、まずはさっさと私のところに来てください。ガインさんにした説明があなたにできないせいでいろいろと滞ってるんですから」

「す、すみません! 急いで向かいます」

 サラは慌ててそう言うと、テレパシーを切った。

「まったく、彼女はマイペースすぎるんですよ。そこがいいところではあるんですけどね」

 ゼノは少しだけ口元に笑みを浮かべた。



「ということで、急いでベルゼブブ様のところに行きましょう」

「どういうことだよ」

 説明なしに俺を引っ張っていこうとした沙良に対して俺は突っ込みを入れる。

「いえ、どうも結構急いでるみたいなんですよ。理由は分からないんですけど」

「……こいつは事件のにおいがしますぜ旦那」

 沙良の言葉に反応したのはさっきまで檻の動物と戯れていたさつきだった。

「誰が旦那だ。ってかお前いつの間に戻ってきたんだよ」

「さっき。何だか2人で盛り上がってたのが面白くなくて」

「直球で文句言ってくるなお前は」

 俺はそこでさつきとの会話を打ち切り、沙良に聞く。

「それじゃ、魔界巡りはおしまいってことでいいのか?」

「ですね。さつきさんも連れて、ベルゼブブ様のところへ行きましょう」

 俺たちは魔界巡りを早々と切り上げ、ゼノの元へと向かうことになった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ