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いざ、魔界へ!

「準備はできたか?」

「こっちはOKです。半分里帰りですからね」

 俺の質問に軽口をたたく沙良。

「忘れ物はねーけど、鍵くらいはかけてくか」

「そうですね。前の試験の時のように時間経過なしにこっちに帰ってこられるとは限りませんし」

 沙良は頷くと、俺の代わりに鍵をかけた。

「それじゃ、出発しましょう」

 沙良はリモコンの黄色のボタンを押すと、魔界への道を繋ぐのだった。



「ふっふっふー、このあたしを出し抜こうったってそうはいかないんだから」

 だがしかし、樹たちが部屋を後にして数分後、彼の家のドアを開ける音がした。閉められていた鍵を開けた人物がいたのだ。

「まあ、軽く犯罪行為ではあるんだけど、このくらいは許容範囲ってことで」

 その人物はピッキングに使った針金をスカートのポケットにしまうと、そんなことを言いながら目の前にあった不気味な穴を見つめる。

「あの子にも会えるかもしれないし、それにこんな面白そうな場所、あたしが行かないわけないじゃない? 暴れまくってやるんだから」

 その人物はせーのっ! っと掛け声をかけ、その穴に飛び込んでいった。



「でも、樹さんを魔界に連れていけるまで信頼関係を築けるとは思ってませんでしたね」

 真っ暗な道を歩きながら沙良はそう話を振る。

「お前俺と仲良くする気なかったのかよ」

「いや、そういうわけではないですけど」

 沙良は俺の突っ込みを聞いて慌てて首を横に振った。

「最初の樹さん、私と関わろうとは思ってなかったじゃないですか。私のことをそれこそ一種の押し売りみたいに考えていたわけですから」

「そりゃ、いきなり玄関先によく分かんない奴が立ってたら警戒するだろうよ」

 これに関しては俺がおかしいわけではない。むしろ世間一般的な感覚だ。

「まあ、結局私の話術で居候させていただくことになったわけですけど……」

「脅しな。自分のいいように思い出を改ざんするんじゃねー」

 沙良は俺の言葉にしゅんとする。

「いや、でも私の話も少しくらいは……」

「お前が本当に話に自信があったら玄関に悪魔を置いたりはしねーだろ」

 今度は俺の言葉にぐうの音も出ることなく返答に詰まってしまう沙良。

「……まあでも、お前を居候させたことは後悔してねーよ。俺もいろんなことを経験できたからな」

 彼女がいなければ経験できないことばかりをこの数ヵ月は経験させてもらった。友達もできたことを考えれば、感謝こそすれ文句など出てくるはずがなかった。

「樹さん……!」

「あとはもう少し食欲どうにかしてくれればなー」

「うぐぐ……」

 俺の手のひら返しに沙良の表情変化が忙しそうだった。



「そういえば、アリーはどうしたんだろうな?」

 俺はもう一人、知り合いの悪魔見習いであるアリー・サンタモニカについて沙良に聞いてみる。

「ああ、あの子ですか。あの子ならもう魔界に行ってますよ」

 沙良から帰ってきたのはそんな意外な返事だった。

「早くないか?」

「あの子は2つの悪魔見習いを兼任してますからね。色欲の他に嫉妬も彼女の持ち合わせです。友人としては本当に助かる能力の持ち主ですよ」

「そりゃそうだろうけど、吉永さんが大変そうだなそれ」

 俺はアリーの契約者である吉永麻梨乃のことを考えて顔をしかめた。

「麻梨乃さんは確かにめんどくさいかもしれませんね。でも、あの二人ならきっといい関係が築けてますし問題ないですよ」

「だといいんだけどな」

 俺はため息をついた。



「さて、そろそろ着きますよ」

「おっ、もう着くのか」

 案外早い到着だった。確かに目の前に明るい光のようなものが見えてきた。

「そうは言ってもここからベルゼブブ様のところまで行くのがなかなか大変なんですよ」

「なかなか大変って交通機関とかあるんじゃねーのか?」

 試験に行くのに交通機関くらい使わせてくれるだろう、という質問だ。

「嫌ですねー樹さん。魔界がそんなにいいサービスな訳ないじゃないですか。試験に来るのに交通機関なんか使わせてくれませんよ。日本の就職活動より酷いんですよ?」

「おいまだ先の話なのにすごく憂鬱になってきたんだけど」

「さてっと」

 沙良は俺の反応をスルーすると、その光の目の前に立った。

「あとはジャンプするだけです。私に続いてくださいね」

 彼女はそう言ってぴょん、と跳ねた。すると、その場から彼女の姿は消えてしまった。

「おいマジかよ……」

 しかし、迷っている暇はない。

(もうこうなりゃやけだ。せーのっと!)

 俺もその後に続いて飛び降りた。



「おおお……」

 飛び降りた俺の目の前に広がっていたのは栄えた町並みだった。以前見た暗い森とは全く違う、夜の町並み。何やらいかがわしいものでもあるんじゃないかと疑いたくなるようなネオンがそこにはあった。

「ここが魔界第一番地です。一応私の実家の最寄り街なんですよ?」

「何かすごく怪しいところだな」

 俺は正直な感想を述べた。

「まあ、治安はあんまり良くないですからね」

 そう言った沙良は俺の方を見て微笑んだ。

「それじゃ、前に一度来てるんですけど、改めて言わせてもらいますね。ようこそ、私の故郷魔界へ」

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