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我が家に悪魔がやってきた! いちがっき!  作者: 小麦
暴食の悪魔見習い再試験 第三試合
128/181

それぞれの感想と第二ラウンド

「引き分け……?」

 俺はその結果に驚きを隠せなかった。ガインとサラの双方が様子見をした結果であることまでは理解できたが、その選択をサラがした、ということが驚きなのだ。

 いつものサラならここまで戦術的な一手を打つことはない。彼女が取る手は基本的にその場しのぎであったり、先のことまで考えていないことが多かったからだ。それはこれまでのどのゲームを取っても間違いのないことだった。例えばサラが最初に俺を願いを叶えてもらおうとしたあの時。例えばミニチュアかくれんぼの時。そのどれを取っても、彼女がここまで考えた一手を打つことは俺には考えられないことだった。

(……あいつも成長してるってことなのかもな)

 俺は彼女の成長を認め、そんなことを思うのだった。



「やるじゃんサラー」

 ティーナは客席でそう評価する。

「何がだ? ただ順番に並べただけじゃねーのか?」

 ケンだけはそう判断したが、他の悪魔たちにはこの戦術の重要さがはっきり分かったようだ。ラミアが呆れてケンを見ているところからも間違いないだろう。

(ここでこの戦術を取ったってことは、相手に次の戦術を取らせないようにするってことで大きな意味がある。ここでガインが自分の予定を狂わされたことは大きいはず)

 アリーはそんなことを考えながらサラの方を見る。

(でも気を付けてサラ。最初に引き分けてしまった以上、問題なのはここから。あなたが次の一手をどう打つか、そこに全てがかかってくるんだから)



「では、第2ラウンドに移りましょう」

 ゼノはそう取り仕切る。だが、第1ラウンドの結果は彼にとってもまた予想外なものであった。

(ガインさんが慎重な一手を打ってきたことはともかく、それをサラさんが読んだというのは驚きですね。以前の彼女ならおそらく様子見することはなかったでしょうから)

 ガインは樹の方を見る。

(これも契約者の彼の影響なのでしょうかね。先ほどのティーナさんとの戦いも彼女だけの力で勝利したとは考えにくいですし。だとすると、今回の結果次第とは言いましたが、その辺りも少し考えておいた方が良さそうですね)



(……ふむ、これは予想外だったな)

 第2ラウンド開始の合図を受け、ガインは表情には出さないものの、少しだけ動揺していた。彼の予想ではサラの一手をこの順番通りに並べることで予測し、残りを連勝することで勝利を収める予定だったのだが、彼女が同じ手を使ってきたことでその目算は崩れることとなってしまったのだ。 

(まあいいさ。もともとこんな小細工に頼らなくとも僕はサラに負けるつもりはさらさらないんだから)

 そんなことを考えながらガインは次にサラが打ってきそうな手を考えるのだった。



(ここまで当たるとは思いませんでした。そう考えると問題は次の手です。せっかく引き分けたわけですし、ここは慎重に考えないと)

 一方のサラはというと、予想したことがほぼ正解に近い答えだったことでより慎重に次の一手を考えていた。

(今度のガインはおそらく確実に勝利を取りに来るはず。だとすると、1は確実に間に入れてきますよね)

 そして1を間に入れるとするなら隣に配置するのは3・4・5のいずれかになってくるのは先ほど予想した通りだ。ならば、ここは自分の勘も含めてこう配置しておくのがいいだろう。彼女はそう結論付け、カードを手早く置いた。



(もう置いたのか!? いくら何でも早すぎる。何も考えてないわけではないのはさっきの試合でも分かってはいるが……)

 一方のガインはサラの決断の速さに完全にペースを取られてしまっていた。

(くそっ、ならこうだ!)

 ガインも手早くカードを並べると、置いたカードから手を離した。



「それでは、勝敗を見ていきましょう」

 両者がカードを置き終わったことを確認すると、ガインはマーラの方を見て結果発表を促した。

「せーのっと」

 マーラは指を鳴らし、次々とカードを表に返していく。4枚目までめくったところでガインの顔がしまった、という表情になり、6枚目までめくり切ったとき、ガインの顔からは初めて余裕の表情が失われていた。

(……まずい)

 ガインが置いた数字241365に対し、サラが配置した数字は351462。勝敗は明らかだった。

「……第2ラウンド、勝者は3勝1敗2分けでサラ・ファルホーク!」

 サラは自らの力で1勝をもぎ取ったのだった。



「やりました!」

 ガッツポーズをしながら客席の方を向くサラ。だが、その瞬間、背筋に凍りつくような空気を感じ、慌てて振り向く。その殺気のような恐ろしい空気を放っていたのはガインだった。

「……どうやら僕は君を侮りすぎていたようだ」

 今までの彼とは明らかに違う口調。そして雰囲気。それはもう後がないが故の発言か、それとも単なるはったりに過ぎないのか。ただ、いずれにしても分かることは、こんな風になったガインを見たのはサラですら初めてだったということである。

「君の実力を認めたうえで、ここからは本気でいかせてもらう」

 そう言ったガインの目の色はいつの間にか赤と黒のオッドアイに変わっていたのだった。

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