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我が家に悪魔がやってきた! いちがっき!  作者: 小麦
暴食の悪魔見習い再試験 第三試合
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サラの秘策vsガインの思考

「もったいつけないで教えてよ樹君」

 不満そうな桜を見て、俺は詳しい説明をすることにした。

「じゃあ詳しく説明するけど、例えば桜と俺が今食べたい食べ物を当てるゲームをしたとする。桜は俺の答えが何か分かるか?」

「ううん、分からないわ」

 桜は首を振る。

「俺も同じだ。桜が食べたい食べ物は分からない。せいぜいこないだ夕食をごちそうしてもらった時にもらったカレーライスを予想するので精一杯だと思う」

 でも、と俺はそれとは別の例えを持ち出してみる。

「じゃあ次だけど、今度は桜が桜のお母さんの食べたい食べ物を当てるゲームをしたとする。するとどうだ? さっきより当てやすくなったんじゃないか?」

「そうね、少しだけ考えやすくなったわ。お母さんの好きな食べ物だったらいくつか心当たりがあるもの」

 桜は頷く。

「つまり、このゲームの性質はそれと一緒なんだよ。相手のことをよく知ってさえいれば、相手が何をどうやってしてくるのかある程度なら予測を立てることができるゲーム。それがこの整列数字ランダムラインズなんだ」

「だから沙良さんでもガイン君のことを知ってればどうにかなるってこと?」

「ああ。ただ、条件で言ったらそれはガインも同じ。つまり、どこまで相手の裏を書いた戦術が取れるかっていうのが勝敗のカギってことになるわけだ」

 説明を終えた俺は、しかし不安そうに沙良を見つめる。

(確かに話の上ではそういうことになる。でも、俺はガインのことをよく知らないし、確か沙良だって勝ったことは数えるほどしかないとも言ってたな。あいつがガインの裏をかくにはどういう手を使うのがいいんだろうな。どうするんだ沙良? この第1ゲームは相当大事な山場になるぜ)



「……よし、僕はこれで行こう」

 一方、試合場では俺が説明している間にガインがカードの順番を決め、並べ終わっていた。

「サラ、君はどうする?」

「……」

 一方のサラはまだカードをどう並べるか決めかねていた。

(ガインのことですし、たぶん私が考える策の2手から3手先まで考えてカードを置いているはず。私はどうカードを並べるのが正解なんでしょう?)

 もちろん考えても答えは出ない。そもそも基本的にサラがガインに勝ったことは数えるほどしかないのだ。考えるだけ無駄と言えば無駄なのかもしれない。だが、ひとまず頭に入れておかなければならないことが1つだけある。

(このゲームは1をどこに置くか、それによって同じだったはずの勝敗すら大きく変わってしまうゲームです。ガインだって1を挟むはずですし、角には置かないはず。そこだけは慎重に考えておかないと)

 とそこまで考えたところで、サラはふと疑問を覚える。

(待ってください。ガインはそもそも1を挟んだのでしょうか?)

 サラは考える。確かに1を挟むことで挟んだ数字が上昇するメリットはあるし、勝利を考えるなら上昇する数字は多い方がいい。だが、もしガインが勝利する可能性を捨てていたとしたらどうだろう。もしサラが1を間に入れていたなら、2から6の数字を間に入れておけば、確実に1勝できることになる。逆に言うなら自分が1敗するわけにもなるが、ガインがもし1戦目に勝利する可能性を捨てて引き分け狙いであるなら、この戦術は相手と自分のカードを固定させるという点では有効な一手となりうる。そして1試合目が様子見である可能性を考えるなら、おそらく1の隣に配置するのは3~5のどれかだ。2を上昇させても勝てる数字はそこまで増えないし、6を上げる意味も薄いからである。

(分からなくなってきましたね。ここは私も様子見の一手を打つべきなのかもしれません)

 ガインが1を挟まない可能性も少なからずあると考えると、ここは1度賭けに出てみるのもありかもしれない。

「私も決まりました」

 サラはカードをシャッフルすると、それを適当に並べる。

「そんなに適当でいいのかい?」

「構いません」

 ガインの挑発にも乗らず、サラは頷いた。

「では、両者数字が確定したということで。第1ラウンドから確認していきます」

 ゼノは順番に数字を表に返していく。だが、3枚目を過ぎた辺りでゼノは顔をしかめた。

「これ……めくる意味が薄くなってきましたね」

 理由は簡単だった。ガインが置いた数字123に対し、サラが置いた数字が654だったのだ。

「この時点で聞きますが、お2人とも置いた数字は順番通りで間違ってませんか?」

 2人は頷く。ゼノはその言葉に残った6枚のカードを指を鳴らして一気にめくる。その様子を見てマーラは不満そうな顔をする。

「ちょっと、私には文句言ってなかったそれ?」

 マーラは第2ゲームで能力を使ってカードをめくるな、と言われたことを思い出したらしい。

「分かってるカードをさっさとめくらないのは時間の無駄でしょう?」

「……清々しいほどに変なところで効率重視ね」

 マーラは次は私がめくるわ、と言って引き下がっていった。

「……ということで、第1ラウンドは引き分けです」

 ゼノはマーラの様子を窺いながらそう宣言する。

「まさか僕と同じことを考えるとはね」

「第1ゲームであなたが様子見する可能性を考えたらこの結論に至ったんですよ。ただ、外してる可能性も考えて数字を変に並べかえたりするのはやめましたけどね」

 2人はバチバチと戦いの火花を散らす。まだ戦いは始まったばかりだ。

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