表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
我が家に悪魔がやってきた! いちがっき!  作者: 小麦
暴食の悪魔見習い再試験 第二試合
122/181

負けられない戦い

「4か……」

 俺は目の前に大きく表示されたカードを見て考える。

「4だったら普通に考えて低い方を宣言するんじゃないの?」

 桜はそんなことを言う。確かに普通に考えるとすれば、4より低い数字は1か2か3の3つしかない。ここで高いリスクを冒す必要も薄くなってくるのだが。

「でも、このゲームのルールだと、この状況で4より低いカードは1と2と3の他にジョーカーもある。5枚ともなってくると判断が難しい。樹はそういうことを言いたいんじゃないかな?」

 ガインは俺の方を見てそう説明する。

「でも、これって最初のゲームだろ。そこまで考える必要があるのか?」

「そうなんだよな。だから、たぶんここは無難に行くと思う。俺もいろいろ考えてはみたけど、高い方を宣言した方が成功する確率も高くなるしな」

 俺はケンの質問にそう答えつつ、心の中でまったく別のことを考えていた。

(確かに今は何も考えなくていいんだ。問題は2ゲーム目以降、カードが減ってからだ。沙良ならそこに気付いてるとは思うけど)



「決まりましたか?」

 ゼノの問いに2人は頷く。

「では、まずはサラさんから」

「高いと思います」

 サラは迷いなくそう答える。

「では、ティーナさん」

「私も同じでーす」

 語尾を伸ばした口調でティーナもサラと同じ高い方を選んだ。

「宣言終了です。では、カードを同時に開きます」

 ゼノの言葉に合わせて、マーラは指を鳴らす。すると、先ほどゼノが置いたカードがくるりとひっくり返った。サラの顔が歪み、ティーナの顔が明るくなる。サラのカードはジョーカー、ティーナのカードは6だった。

「……あの、マーラさん。楽をするのはやめてもらえませんか? ちゃんと手でめくってください」

 ゼノは呆れたようにマーラの方を見て手招きをする。

「えー。かっこいいじゃないこのめくり方」

 マーラは文句を言いながらしぶしぶカードの置いてある机の上に近寄ってきた。

「というわけで、サラさんのカードはジョーカーなので0。ティーナさんのカードは6なので、サラさんははずれ、ティーナさんが当たりと言うことで、ティーナさんにのみポイントが加算されます」

 ゼノの宣言と共に、デジタルウインドウに表示されていたサラとティーナの名前の下の0の数字のうち、ティーナの方のみが1に変わった。



「沙良さん外しちゃったみたいだけど……」

 麻梨乃は心配そうな表情で俺に聞く。

「最初は仕方ねーよ。完全にランダムだからな。問題はここからだ」

「どういうこと?」

 桜が首を傾げる。

「このゲームは数字が少しだけ減ってくる2回目とか3回目の方を当てる方が難しいんだよ。しかも、ジョーカーとかいうイレギュラーもあるしな。それが最初で来た分、難易度は下がってるとは思うけど」

「ただ、まだジョーカーが1枚残ってるって考え方もできるよね?」

 横から口を挟んできたのはガインだった。確かに彼の言うことも一理ある。ジョーカーというイレギュラーはまだあと1枚残っているのだ。

「……今は悪い方向に向かわないように祈るしかない」

 アリーがそうしめたところで、第2ゲームの始まりの合図があった。



(……最初はランダムだったとはいえ、外したのは思ったよりもショックが大きいですね)

試合場のサラはそんなことを心の中で考える。

(次に切り替えていくしかありません。まだ取り返せる範囲です)

 サラは自分の頬を両手で叩くと、ティーナの方に向き直った。



(1ゲーム目をサラが外したー?)

 一方のティーナは内心の喜びを隠しきれず、溢れ出る笑みを抑えきれなかった。

(これはいけるかもー)

 ティーナはそんな緩んだ気持ちのまま、2ゲーム目へと臨むのだった。



「では、2枚目のカードをめくります」

 めくられた2枚目のカードは12だった。

「それでは、高いか低いかを宣言してください」

 ゼノはそう2人に尋ねるのだった。



「また極端なカードだな……」

 俺はそう呟かずにはいられなかった。

「今回は高いを宣言するよな?」

 ケンが周りに聞く。全員が当然のように頷いた。

「うん。ケンじゃなくてもたぶん誰でも高いを宣言すると思う」

 代表してアリーが補足説明をする。12を超える高いカードはこの中には13しかない。ここで高いリスクを負ってまで当てに行く必要はないからだ。

「つまり確実に当たりを稼げるってことよね?」

 桜が俺に聞いてくる。

「まあな。でもそう考えると、最初に外してる沙良にとってはあんまりいい展開じゃねーな……」

 俺は1人浮かない顔をするのだった。



「それではサラさんから」

「高いでお願いします」

「ではティーナさん」

「私もー」

 2人の答えはやはりどちらも同じ高いだった。

「では、マーラさん。今度は手でめくってください」

「……そんなに念を押さなくたって分かってるわよ」

 ゼノにあからさまに釘を刺されて不機嫌そうな顔をしながら、マーラは右と左の手でカードを同時にめくった。

『あっ!』

 客席の俺たちは同時に声を上げる。サラの方は2だったが、ティーナの方の数字は13だった。

「サラさんが当たりでティーナさんがはずれですね。それでは、得点を加算します」

 サラの方にのみ得点が入り、ティーナと同点になった。

「運とはいえ同点ですか。まだまだ、これからってことですね」

 サラはティーナの方を見てにやっと笑うのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ