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我が家に悪魔がやってきた! いちがっき!  作者: 小麦
暴食の悪魔見習い再試験 第二試合
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第二試合 高低数当(ナンバーズバトル)

「それでは、第二試合を執り行います」

 完膚なきまでに叩きのめされたことで気落ちしているティーナを尻目に、ゼノはそう淡々と言葉を発した。

「第二試合、対決するのは……」

 再びゼノがルーレットを回すと、そのルーレットはティーナとサラを差して止まった。

「ティーナ・フレンディアとサラ・ファルホークですね。選ばれなかったガイン・ハルベルトは観客席へ」

 今度はガインが俺たちのいる観客席へと転送されてきた。

「やあ」

「うおっ!」

 真横にいきなり現れたガインにケンは驚いたような声を上げる。

「さて、ティーナとサラか。ティーナに勝ってもらいたいような気もするけど……」

「沙良が勝つさ」

 ガインの発言に俺は横から口をはさむ。沙良がこんなところで負けるはずがない、という確信から口をついて出た言葉だった。

「……ま、そうじゃないと面白くないんだけどね」

 ガインはふっと笑うと試合席へと視線を戻した。

「それでは試合内容を決定します。試合内容は……」

 そんな中ゼノは着々と試合開始の準備を進めていく。続いてルーレットの目が差したのは高低数当という文字だった。

「こうていかずあて……?」

「違うわ桜ちゃん。あれはナンバーズバトルって読むのよ」

 たどたどしく文字を読む桜に分身体のマーラが訂正を入れる。

「ナンバーズバトルが出ましたか。それではルールを説明しましょう」

ゼノはトランプを取り出した。

「またトランプなのか?」

「そうみたい」

 俺の疑問にアリーが不思議そうに答える。この分だと最後の勝負もトランプになるのではないか、と変な期待が頭をもたげてきてしまう。

「今回使用するのはスペードの1から13までのトランプとジョーカー2枚です」

「15枚しか使わないんですか?」

 サラが驚いたような声を上げる。先ほどまで使っていたのは36枚、カードの枚数は2分の1以下にまで減ってしまっている。

「はい。今回は5回の対戦を行います。と言っても5回ともやることは同じです。最初にこのような配列でカードを置き……」

ゼノはそう言いながらカードを置いて行く。並べ終わるとこのような図になった。


 □    □    □    □    □ 

□ □  □ □  □ □  □ □  □ □


「この配列で上に置いてあるカードが自分のところに置いてあるカードより高いか低いかを当てるだけです。今回は下の段の右のカードがサラさんのもの、左のカードがティーナさんのものとしてゲームを進めます」

「……拍子抜けするくらい簡単ですね」

 サラはふむふむと頷く。

「勝負の前に一番上のカードを開けるので、その数字を元に自分のところに置いてあるカードが高いか低いかを判断してください。当たった数が多い方の勝利となります。ここまではいいですか?」

 サラもティーナも頷いた。

「では次に特殊ルールの発表ですが、ジョーカーの扱いについてです。ジョーカーは前にめくられた段の数字と同じものとして扱います。例えば一番最初の段の上の数字が3で次の上の段のカードがジョーカーなら、上の数字は3として扱われるわけです。これは下の数字についても同様ですね。自分が前にめくった数字がジョーカーと同じ数になる訳です」

「最初にジョーカーがめくられてしまった場合はどうなるんですか?」

 サラが聞く。当然の疑問だろう。

「最初にジョーカーがめくられた場合は、その数字を0として扱います。前の数字を参照するので、当然前に数字がなければ0になってしまうということになります」

「分かりました。ちなみに引き分けになってしまった場合はどうするんでしょうか?」

 サラは聞く。今回のルールなら引き分けになることは十分にあり得る。

「引き分けの場合、ずべてのカードをシャッフルし、同様に並べ直してから再度当てていただきます。どちらか片方だけが当てたその時点で試合終了とし、勝者を決定します」

「……分かりました」

 しかしすべての疑問を解決したはずのサラはなぜかうかない顔で頷いたのだった。



「ねえ、沙良さんの顔があんまりいい表情に見えないんだけど」

 桜は俺に尋ねてくる。

「それはたぶん……」

「ゲームが運頼みのものだからだろうね」

 横から口を挟んだのはガインだった。

「ティーナは先ほどの敗戦のショックから立ち直っていない。もしさっきの表裏回転リバースリバーシのような頭脳戦のルールだったなら、間違いなくサラの勝ちだっただろう。でも今回は最初にめくられたカードの時点である程度運が絡んでくるんだ。不安になるのも仕方ないところさ」

「それに、このゲームは最初の時点で差をつけられないと勝利はなくなるからな。最後になればなるほど数字の選択肢は狭まってくから、外す確率も低くなる。唯一のイレギュラーはジョーカーなんだが、どこで出てくるか分からないのが一番の問題だ。何より自分のところに来るのか相手のところに来るのかもはっきりしないわけだから」

「そうなんだ……」

 ガインと俺の解説でサラが危機的な状況にあることを知った桜は神妙な面持ちでサラの方に視線を戻すのだった。



「では、試合を始めますか」

「……ティーナ」

 ゼノの声から少し遅れてサラは言葉を発した。

「……何ー?」

 少しだけ気落ちしたティーナは普段ののんびりした口調で遅れて反応する。

「後悔のないように戦いましょう。さっきはさっき、今は今です」

「……敵の激励なんてしていいのー?」

 首を傾げながら尋ねるティーナ。

「全力で来る相手を倒さないと楽しくないじゃないですか?」

 そのサラの言葉にティーナは笑った。

「私ももう負けないんだからねー」

 ティーナの目に闘志が戻る。それは彼女が戦いの舞台に戻ってきたことと同時に、眠れる獅子を呼び戻してしまったことも意味する。

(……サラさんのそういうところはいいところだと思うんですけどね。きちんと結果が残せるかは別問題ですよ?)

 ゼノは心の中でそう思いながらも開始の合図をした。

「第二試合、高低数当開始!」

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