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我が家に悪魔がやってきた! いちがっき!  作者: 小麦
一周年記念 クイズ大会!
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1周年記念 クイズ大会(後編)

「さてさて、クイズも佳境に入ってきました。3問目の出題者はこの方です!」

 作者の合図とともに奥から出てきたのはケン・ゾークラス。怠惰の悪魔見習いにしてサラが人間界に来て最初に出会った悪魔見習いである。なお、最近はアリーの登場によって扱いに不満があるとかないとか。

「……まあケンは出てくると思ってた」

「何で他の2人の登場よりテンション下がってんだよ!」

 アリーがため息をついているのでケンは突っ込まざるを得なかったようだ。

「まあいいや、お前も早く問題出してくれよケン」

「タツッキーまでその反応はあんまりだぜ!」

 ケンは涙目になりながらしぶしぶ問題用紙を取り出した。

「……じゃあ問題出すぜ。サラっちが前にお母さんから出された暗号があったよな。あの暗号のうち最初の暗号の名前は……」

 サラが素早く早押しボタンを押す。

「シーザー式暗号です!」

 だが、不正解音が鳴り響く。

「えっ? 何でですか?」

「まだ問題の途中なんですよ」

 作者が戒める。

「じゃあ続けるぞ。最初の暗号の名前はシーザー式暗号ですが、では、2番目の暗号の名前は何でしょうか?」

「そもそもこの問題俺分かんねーじゃねーか!」

 さっきからあんまりな問題が続いているような気がするのだが、それでも早押しクイズは続いている。アリーとミルダが同時にボタンを押した。そして解答権を得たのはミルダだった。

「アナグラム、じゃな」

 正解音が鳴り響いた。さすがは問題の製作者である。

「ケンの癖にひっかけ問題出すなんて生意気」

「作者に言ってくれよ!」

 問題を渡されただけなのにここまで不満を言われては、ケンとしても納得できないものがあったのだろう。だが、彼の役目は問題を出したところで終わりである。作者に退場を促され、しぶしぶケンはその場を立ち去った。



「では、4問目の問題ですね。では、出題者どうぞ!」

 その声で現れたのは吉永麻梨乃だった。アリーの契約者にして俺たちと同じ秘密を共有している人物である。

「私の問題はそんなに難しくないからサクッと答えてね」

 そう言って麻梨乃はそのまま紙を取り出すことなく問題を読み上げる。

「私の大好物は何でしょう?」

 その瞬間、俺以外の全員が早押しボタンを押した。

「えっ? 皆何で知ってんだ?」

 俺は困惑気味に3人の方を見る。

「いや」

「だって」

「ですよねえ……」

ミルダ・アリー・沙良はそれぞれ顔を見合わせて頷くばかりだ。いったいこの3人はいつどのタイミングで彼女の好物を知ったのだろう。それはともかく、解答権を得たのはサラだった。

「たこ焼きです!」

 当然のように正解音が鳴り響き、アリーとミルダは悔しそうにしている。

「何か俺に対して不利な問題が多すぎないか?」

 俺は作者を睨み付ける。

「まあ、樹さんはいなかった部分の補完も兼ねてこちらに呼んでるので……」

「いなかった部分の補完ってどういうことだよ」

「……もう4問終わりましたし、そろそろ説明しましょうかね」

 ここで作者は初めてこのクイズの目的を説明し始めた。

「実はこのクイズには2つの目的があったんです。1つは樹さんに対してのストーリーの補完、そしてもう1つは、この物語を読んでくださっている皆さんへのストーリーであったりキャラであったりのおさらいなんです」

「おさらい……?」

 俺は顔をしかめる。つまり、このクイズ自体には何の意味もなかったということなのか。隣の3人の顔を見ると、俺の顔から何を聞きたいのか読み取ったのだろう。全員が頷いた。

「はい。今回は樹さんに対しては樹さんがいなかった部分のおさらいを、そして読者の方に対してはこの物語をさらに楽しんでいただくためにいくつかのポイントをかいつまんでクイズにしていたんです」

「いや、おさらいって言っても俺最初の桜の問題以外はどこのことなのかさっぱり分かってないんだけど……」

「それを知りたいのであれば、現在連載中の私たちの物語、我が家に悪魔がやって来た! を読んでください……って作者が」

 沙良はチラッと作者の方を見る。作者は目をそらした。

「露骨な宣伝を俺たちに言わせんなよ」

「まあまあいいじゃないですか」

「良くねーよ。ってかこの分だと最初のプレゼントってのも……」

「はい、樹さんを乗せるための罠です」

 沙良は頷く。アリーやミルダからまるで疑問が出なかったのはおかしいと思っていたが、サラも含めて全員がグルだったということらしい。

「何だよそれ……」

 1人騙されていた俺は落胆する。

「まあ、本編でよく樹さんに一杯食わされてましたからね。私のは半分その仕返しです」

「くそっ、引っかけ問題に引っかかる手の込んだ自演までしやがって……」

 ここまで一人だけ騙されていたとなると、腹立たしさを通り越してすがすがしさまであった。

「ただ、ここから先は私たち3人も知りません。問題は5問、最後に誰かが問題を出すはずです。ただ、それはおそらく……」

 沙良がそう言うと、最後に俺たちの前に立ったのは作者だった。

「ばればれでしょうけど、最後の問題は私からです」

 作者はそう言いながら、今まで問題を出題していった俺たちの仲間が待つ控室への扉を開ける。そこには俺たちが元々いた世界への扉があった。

「この後のあなたたちは一体どうなるでしょうか? 答えはこの扉の向こうです」

 それはまだ答えのない問題。俺たち自身が作り上げていくこれからの物語がその答えを決めるのだ。

「樹、サラ、ミルダ様」

 早押しボタンに手をかけていたアリーはその手を外しながら俺たち3人に呼びかけた。

「うむ。茶番は終わりと言うことじゃな」

 ミルダもボタンから手を遠ざける。その途中に白い目で見つめられた作者は震え上がっていた。

「さあ、行きましょう樹さん」

 俺の手を握った沙良が俺に微笑みかける。

「……何か一方的に呼び出されてるのにこの扱いは納得はいかねーけど、戻ってやろうじゃねーか。ここに俺たちがいる限りこの話は進まねーんだろ」

 俺は頷き立ち上がる。作者を除いた全員が光り輝く世界の扉の前に立った。

「出題者も解答者の皆様も、本日はありがとうございました。これからも頑張って更新していきますので、我が家に悪魔がやって来た! をぜひこれからもよろしくお願いいたします」

 作者の礼と共に、俺たちは元の世界への一歩を踏み出したのだった。

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