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我が家に悪魔がやってきた! いちがっき!  作者: 小麦
悪魔見習い試験の全容
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シラベールの真の機能

「怠惰の悪魔見習いのリスト!?」

 桜はシラベールに飛びつくと、そう叫んだ。

「ええ。私の場合はアリーが2つの悪魔見習いとして活動してるから、2つ分あるんだけどね。言ってみればここに表示されてるのはケン君のライバルってところかしら」

 そう言いながらシラベールを何度かタッチしていく麻梨乃。今度は何やらゲージのようなものが表示されていた。ケンのゲージは4本あるうちどうやら2番目に高いところに位置しているようだ。

「これは誰が一番現時点で怠惰の悪魔見習いに近いかが分かるものね。ケン君は2番目だから、消滅にさえ気を付ければいい線行ってるってところじゃないかしら」

「……そうなの? あんなに願いを叶えてないのに?」

 桜は不思議そうな顔でケンの方を見る。

「だから言ってんだろ。怠惰の悪魔見習いの評価法は他とはちょっと違うんだって」

 ケンは得意げだが、その隣ではラミアがジト目でケンの方を見ている。

「ところで、何で吉永さんはこの機能を使えるんだ?」

「アリーから最初に説明を受けたのよ。いつでも使っていいからって。だからほら」

 麻梨乃がカバンの中から取り出したのは赤のシラベールだった。

「アリーは色欲の方になりたいから、嫉妬の方が規定に抵触して消滅しないように見張っててって渡されたのよね。色欲の方はアリーがトップみたいだけど、嫉妬の方に関しては3番目みたいね」

 同様に操作してケンのものと同じ画面を表示させると、アリーの名前は5匹中3番目だった。

「この説明は一応契約した直後にしないといけないことだったはずだったはずだが、2人が知らないのはなぜなのだ?」

 ラミアは訝しむ。

「ケンについてはさっきの規定が原因だと思う。そうよねケン?」

 桜ももう納得してしまっている様子だった。ケンは頷いて俺の方を見る。

「じゃあタツッキーの方はどうしてなんだ?」

「多分説明する必要がなかったからだろうな。あいつしか暴食の悪魔見習いはいないんだろ? だから別に説明義務はなかったんだよ」

 俺は至極当然のように答える。暴食の悪魔見習いが沙良しかいないのは既に何度も聞かされている情報だ。

「ただ、町村君には1つこのシラベールで説明しておかないといけない機能があるのよね。さっきの消滅に関してだけど、ここである程度確認できるのよ」

 アリーのタブレットを操作し、また別の画面を表示する。

「ほら、このゲージ。アリーのはまだ低いけど、他の悪魔見習いは少し高くなってるでしょ? これが消滅に近いかを確認するためのゲージで、ケン君の方にもあるはずよ」

「貸して」

桜は麻梨乃からシラベールをひったくると、同じ画面を表示させる。ケンの消滅確率は67%と出ていた。

「……ちょっと高くない?」

「このゲージが100%に達したらケン君は消えちゃうから。気を付けてね桜さん」

 その麻梨乃の声に震え上がる桜。

「ケン。これ私が管理してていいわよね?」

「あ、ああ。むしろそっちのが助かるぜ」

 有無を言わさぬ口調の桜にケンはそう頷くしかなかった。

「町村君も沙良さんに後で確認させてもらうといいと思う」

「ああ。何かいろいろ教えてもらってありがとう吉永さん」

「ううん、このくらいならいつでも。あ、そろそろ時間みたい」

 麻梨乃は時計を見ると立ち上がった。

「それじゃ、私はこの辺でお暇させてもらうわね。また困ったことがあったら相談に乗るから」

「ああ、また今度ゆっくりいろいろ聞かせてくれよ」

「そうね。今度は桜さんに前に会わせた後輩の子も連れてきたいわ」

 麻梨乃は玄関まで歩くとドアに手をかけた。

「それじゃ、お邪魔しましたー」

 そう言って麻梨乃は自宅へと帰っていった。



「……で、次は私が話せばいいのだろうか」

 それから数分後、4人になった部屋で口を開いたのはラミアだった。

「そうだな、それじゃ今度はラミアに……」

 俺がそう言いかけたその時だった。突然俺の携帯に着信が入る。俺は携帯電話を取り出すと、その着信先を見る。その着信先は意味不明な文字で彩られていたが、誰のものなのかは一目で分かった。

「……沙良か?」

「大変です樹さんあの、卵が、卵が……」

「おい落ち着け。卵がどうしたんだ?」

「サラ、ちょっと貸して」

 電話の向こうではアリーの声が聞こえる。

「ど、どうぞ」

「樹。聞こえてる?」

 どうやら声の主が沙良からアリーに変わったらしい。

「ああ。いったいこの沙良の取り乱しようはどうしたんだアリー」

「卵が孵った」

 アリーは一言端的にこう告げた。

「本当かそれ?」

「うん。ただ、ちょっと私たちが考えていたものとは別のものが産まれてきて」

「別のもの? 何だよそれ。もったいぶらずにさっさと言えよ」

「……これは私が言うよりも直接見に来た方が早いと思う」

 だが、俺が急かすとアリーはそんなはっきりしない言い方をする。彼女にしては珍しい言い方だった。

「今どこにいるんだよ」

「前にあなたがケンに捕まって閉じ込められてた倉庫の傍にいる。確か今樹の家にはケンとラミアがいたはず。2人に頼んでこっちまで来てほしい」

「……分かった。それじゃ今から向かうから少し待っててくれ」

 俺はそう言って電話を切った。

「アリーさん何だって?」

「卵が孵ったらしいんだけど。何だか変なものが産まれたみたいで見に来てくれってさ。って訳でラミア、ちょっとお前の移動能力を借りてもいいか?」

「……私は構わん。契約悪魔がいない以上は私が面倒を見るしかないだろう」

 一呼吸置いてからラミアは頷いた。

「俺は桜を乗せていけばいいんだな」

「早いと酔っちゃうからスピードは控えめにお願いね」

 全員一斉に立ち上がる。

「じゃ、出発しようぜ」

 代表して俺が音頭を取った。

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