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我が家に悪魔がやってきた! いちがっき!  作者: 小麦
悪魔見習い試験の全容
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消滅の基準

「それじゃ、私から1つ質問なんだけどいい?」

 情報を整理し終えた桜は麻梨乃にそう話しかける。

「何かしら?」

「中間っていうくらいだからやっぱり期末もあるの?」

 至極当然の疑問だろう。俺たちの世界にも中間試験の後には期末試験がある。

「あるみたいね。期末試験の方は中間試験よりも難しいって話なら聞いたわ。……ああ、そうそう。中間試験はグループ試験で期末は個別試験らしいわよ。中間でダメなら消滅云々の前に魔界に強制送還されるんだって」

 麻梨乃はそう詳しく説明する。この様子だときっとアリーは麻梨乃に事細かく説明したに違いない。

「そういえばその消滅の基準っていうのはどこにあるんだ?」

 今度は俺が尋ねる。こちらもごく自然な質問だろう。

「消滅の基準は……確か3つだった」

 少し考えた麻梨乃はそう言って指を折り始める。

「1つ目は自分の契約者の願いを著しく叶えていない場合、2つ目が重大な契約違反を犯した場合、それで最後が自らの罪の名に反した場合、だったかしら」

「最後ってどういうことなんだ?」

 俺は聞くが、麻梨乃は首を傾げるばかりだった。

「アリーの場合は色欲の悪魔見習いだから、色恋沙汰に関してだったと思う。例えばアリーが人間の誰かに恋愛感情を寄せてしまったりとか。あとは嫉妬の悪魔見習いもあったはずだから、誰かに対してうらやましがったりしてもダメみたいね」

「なるほど。結構めんどくさいんだな」

「悪魔になる以上は自分たちもそれだけストイックにならないとダメってことなのよきっと。人間たちを堕落させるのが本来の仕事なわけだしね」

 麻梨乃はそう言って考える。

「沙良さんの場合は暴食の悪魔見習いだったから……、食事関連に関することなんじゃないかしら。例えば一食でも抜くとまずいとか」

「仮にそうだとしたらずいぶん金のかかる悪魔見習いだな」

 俺はため息をつく。

「ちなみに私の場合は感情を我慢することだ。変に我慢してしまうとこの規定に抵触してしまうようなのでな」

 ラミアはそう答える。そういえば会った時から割と素直にいろいろな表情を見せてくれていたことを思い出し、俺は1人納得した。

「じゃあ、ケンはどうなのよ」

 桜はそれまで黙っていたケンに水を向ける。ケンは少し考え、仕方ねーな、とぼそりと言いながらこう説明した。

「俺の場合は……やらなきゃいけないことを積極的にやっちゃいけないことだ」

『……はい?』

 その返答には桜だけでなくその場に居た全員が声を揃えることとなった。



「俺の怠惰っていうのは当然怠けることを指す訳だけど、単に怠けてればいいってもんじゃない。俺自身にとって本当に必要なことを怠け続けないといけないんだ」

「それじゃ消滅の話と矛盾するじゃない」

 桜はそう質問する。

「ああ。だから怠惰の悪魔見習いは1つ目のルールに関しては消滅の規定が少しだけゆるく作られてるんだ。2つ目と3つ目に関しては他と同じくらいの厳しさなんだけどな」

「じゃあ、願いを多少叶えないくらいじゃ消えたりはしないってこと?」

「そういうことになるな。って言っても、今のままだとさすがにまずいらしいんだけど」

 ケンはそんな説明をする。

「なるほど。じゃああんたが今まで説明をまったくしなかったのは……」

「半分この規定に引っかかるからだよ。その証拠に今まで自分に関係のないサラっちの危機にはずいぶん協力してたろ? あれは俺には全く関係がなかったってのもあるんだぜ」

「何でそんなよく分からない規定を作ったのよ魔界の悪魔たちは……」

 桜はため息をつくが、こればかりは誰にも答えようがない話だった。

「とりあえず規定についてはこんなところかしら。それじゃ、私からはもう1つ、今の悪魔見習いたちの現状について説明させてもらおうかしら。ケン君、シラベールを出してもらえる?」

「……ってことはあの規定にも触れるのか。あーあ、分かったよ」

 ケンはしぶしぶシラベールを取り出す。が、ここで俺は眉をひそめた。

「沙良のと色が違うな」

 沙良のシラベールは白色だったが、ケンのシラベールは水色だった。

「それは悪魔見習いに割り当てられたカラーのせいだな。俺の怠惰は水色、サラっちが白、アリーは確か色欲がピンクで嫉妬が赤、憤怒のラミアが黄色、傲慢が紫で強欲が黒だったと思ったぜ」

「その色分け自体には誰がどの悪魔見習いかを区別するという目的もあったからな。分かりやすくするという点ではこれ以上ないものだろう。白と黒については人間界の家電と区別がつきにくくなる可能性があることもあってか、近年では色を変更するかどうかと言う協議も起きてはいるみたいだがな」

 ラミアが詳しく説明をしてくれる。その間にも麻梨乃はシラベールをてきぱきと操作し、その中のある画面を表示させ、俺たちに見せてくれた。

「できたわ」

 彼女が見せてくれた画面を見ると、怪しげな字体ではあったが、ケンの名前が表示されていた。その下にいくつか名前のようなものが散在している。

「これは何なんだ吉永さん?」

「ふふふ。これはね、ケン君の他に試験を受けに来ている怠惰の悪魔見習いのリストよ」

 麻梨乃は俺の疑問にそう答えるのだった。

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