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我が家に悪魔がやってきた! いちがっき!  作者: 小麦
新たな誓いと約束と
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代わりの条件

「それじゃ、説明してもらうかその悪魔見習い再試験について」

 夜になると、俺は沙良にそう聞いた。結局学校から帰ってきてからいろいろ忙しくなってしまい、この時間となってしまったのだ。

「再試験?」

 隣に座ったラミアは首を傾げる。

「ラミアさんにも簡単に事情を説明しますと、私とティーナとガインは暴食の悪魔見習いの椅子をかけて再試験を行うことになったんです」

「……なるほど。それで僕たちは契約者については心配ない、などと来る途中に言っていたのか……」

 ラミアは納得したように頷く。どもらないように少しの間無言を貫いたことで、普通の受け答えができたようだ。彼女は契約者を探さなければならない立場なので、2匹とは根本的に事情が異なっていたのだろう。

「で、再試験の方法なんですが、どうやら一騎打ちの対決を3回行うそうです」

「つまり、沙良とティーナ、沙良とガイン、ティーナとガインの組み合わせってことか」

「そういうことになります。順不同だそうで、どの順番で当たるかは当日になるまで分からないそうです。それと、もしこれで決着がつかないようなら3人でバトルロイヤルの形式を取るらしいですよ」

 沙良は頷く。

「で、期日なんですが、来週の日曜日だそうです。今日は火曜日なので、あと5日後ですね」

「また急だな……。そこまで決まってたのか」

 日曜日はそもそも特に用事も入ってないので俺としては問題ないのだが、メールが届いたのが月曜日だということを考えると日程としてはやたらと急なものに思えた。

「他の悪魔見習いの試験が順調に進んでいるのに、私たちの再試験だけで悪魔たちが時間を取る訳にはいかないんでしょうね。で、その時にはベルゼブブ様、つまり現在の暴食の悪魔もこちらにやってくるそうです」

「なるほど」

 それについては特に疑問もない。暴食の悪魔見習いが試験をするのに暴食の悪魔が来ないはずはないからだ。直接自分の目で見ることも含め、もう1度選び直すということなのだろう。

「それで、肝心の試験内容なんですが、こちらについては当日知らせることとなっているそうなので、対策のしようがありません。なので、実際当日までにすることと言えばマーラさんに頼まれた卵を孵化させることくらいなものですかね。ちょうど期日と合致しそうですし」

「なるほどな」

 分かりやすい説明に俺は頷く。今の説明の中に特に疑問点はない。気になるのはこっちに来たマーラさんが預けたあの卵が一体何なのか、ということなのだ。時期的にもタイミングが良すぎるし、もしかしたらこの試験に使う可能性もなくはないと考えておいた方がいいのだろう。ここについては今考えても仕方ないので、とりあえず保留にしておく。

「ところで、その試験ってどこでやるんだ?」

 代わりに俺は沙良の説明の中で判明しなかった点を聞くことにした。

「ああ、会場の話をするのを忘れてました。会場は魔界でも人間界でもない特殊な異空間を作り出して行うそうで、その異空間に入るために集合する場所はこの家になっているそうです。全員が1度は来たことがあるからだそうですよ。で、集合時間は朝の5時だって聞きました」

「まさかそのためにガイン達はこの家に来たってのか?」

 ラミアをここに置くために彼らが来た、というのはどうにもしっくり来なかったし、あの2人が説明に来る立場だとも思っていなかった俺としてはようやく納得のいく理由が見つかった感じだった。つまり、会場の集合場所は初めからここにするつもりだったのだ。そして、それなら説明も省けると考えた上層部が俺の家にあの2匹を派遣し、さらにラミアの契約者を見つけるまでの宿を頼んだと考えれば納得はできる。もしそうだとしたら、なかなかに強かだと言えるだろう。とここで俺は別のことに気付く。

「……待てよ? お前ここに集合するのに俺に試験のこと隠そうとしてたのか?」

「いやー、ほら、朝の5時集合なら最悪樹さんを起こさずに出かけられるじゃないですか」

「お前なあ……」

 言いかけた俺は、もともと沙良は自分に不都合なことは隠してしまう性格だったことを思い出す。前だって試験がうまく行かなければ消滅がどうこうと言った話をアリーから聞かされて初めて知ったくらいだ。今回もおそらくはその類なのだろう。ここでこれ以上彼女を追及したところでおそらくうまい屁理屈を言われてかわされてしまうことだろう。ならば、ここは別の手段を取ることにする。

「いいや、沙良。お前に私利私欲の願いを突き付けてやる。こないだ外出許可を出すって言ったけど、その代わりに俺に今後隠し事はなしだ。今までのことを考えるとこの条件がないといつ何が起こるか分からん。いいな?」

「……分かりました。これから気を付けるようにします」

 沙良は少しがっかりしたように返事をした。契約条件に加えることはできないが、願いとして願っておけば、少なくとも彼女が隠し事をすることはないだろう。

「まあそれはそうと、今卵はアリーの家なんだっけ?」

 今日は桜の家から麻梨乃の家に卵が渡る日だったはずだ。

「そうでしたね。今頃あの卵はどうしてるんでしょうか?」

 俺と沙良はそう言いながら考えるのだった。

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