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七夕の夜 (400文字)
七夕になると甦ってくる夢が まただった
君はうす紅の浴衣を着て
小さな両袖を膝の上でたたみ合わせ しゃがんでいた
君の右手につままれた 線香花火の匂い
お月さんも僕と一緒に 見惚れていた
パチパチ爆ぜる光と 小さな波音だけの夜だった
七月七日の七夕は何年も前から 決まって雨
砂浜で花火も出来なくなってしまった
だから夢に見るのはあの年の光景
砂浜に足をとられて
下駄のはなおが 指にくい込んで
痛いと泣いた君
脱がせた下駄を手に下げて
裸足になった君の後から
ずっとずっと歩いた夜
雨が降るから行かなくなって
砂浜はいつの間にか埋め立てられ
七月六日は いつも晴れ
道端の紅い花が日差しを仰いで 並んでる
それを見た晩は夢を見る
あの日から織姫は君 彦星は僕
雨が邪魔するから君は 夢で会いに来る
年に一度 雨夜に甦る光景
波と花火と浴衣と下駄
軋む音が響いた砂浜を抜けた道
血塗れたアスファルト
「七夕は毎年一緒にいようね」
直前で囁いた言葉の通り 君はやってくる
僕の夢の中へ