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ホワイトクリスマス(666文字)

「俺たちゃ日本人だ。正月が祝いの本命だ」

 12月、仕事に追われる夫は毎年この台詞を繰り返します。わたし達への免罪符のように。

 クリスマスはカラフルなおむすびでお手軽に色づける。

 あとはチキン、サラダ、スープ――そしてケーキがあれば、優希は満足するのです。

 娘、優希とちょっぴり世間の賑やかし気分を味わいながら、頭の中ではお正月準備の算段を。それが昨年までのクリスマスイブ。


 今夜の食卓はいつもと少し違ったのか、優希は目の前に並んだ料理を訝しそうに眺めています。 

 台所で背中を向けている隙に冷蔵庫をこっそり覗き込む気配。少しだけ胸が痛みます。


 なぜならケーキがないのです!


 ごめんね、優希。お母さんケーキ買わなかったの。

 南瓜のスープをゆっくりのばしながら、胸の中で両手を合わせます。

 卵巾着おむすびは優希の好物。肉巻きおむすびは夫の好物。二人のためにおむすびは頑張ったから。今夜はきっと楽しい眠りにつけるように、頑張ったからね!


 外は粉雪が舞い出して、ホワイトクリスマスになりました。でも、少しだけ心細さを感じていた時でした。

「ただいまぁー」

 優希の戸惑っていた瞳が一瞬で輝きに変りました。 

「えっ、あっ、お父さんだー!」  


 今年、優希のサンタさんへのお願いは『お父さん』。

 それを読んだ夫は気まずそうな顔でわたしを見ていたのですが――。


 二日間の休日出勤と引き換えに今夜は早く帰宅した夫。頭の雪を払いながら、優希に手を引かれ、リビングに入ってきました。宣言通りケーキの箱も手に持っています。

 優希のサンタさんは頑張りました。

 今夜は三人でささやかなイブです。


 (おわり)



師走でお忙しい皆様へ少しだけメリークリスマスの気分を。作者はきっとお仕事中ですが。

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