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もくれん

木蓮の花が今年も香る

届かなかった枝木に手を伸ばす

見えたのは空だけだった

みずいろの空に咲いた雲は 木蓮

近寄りがたかったあなたのよう


ながめていただけの横顔に似た 木蓮

今年はその花を手折り なでることも出来る 背丈に近くなった 木蓮

あなたがいなくなったこの町に 僕と残った 木蓮


夜半の雨にぬれて強い風にゆすられ 明け方ぽとりと落ちた花が 似すぎて見えた

この町に取り残されたいつかの僕に


恋いし 乞いし 請いし

あの頃の言葉遊びがよみがえる


好きだったのか憧れだったのか あの頃の感情がわからなくなるほどの 年月が流れたというのに

木蓮は毎年あなたを連れてくる


貴女の指定席だった根元に寄りかかり 本を広げてみる

陽を受けて文字がかすんでいく

甘い香りに あなたのゆれる後髪が 鮮やかによみがえる


〈ぽとり散る ひとひらごとに散る ももくれないの 再帰こそ――――〉



開いた一ページ目 文始の一文が僕の未練を綴っているようで 目が痛くなった



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