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しずく (444文字)
しずく一滴
そのしずくは葉から零れ落ちた朝露でした。
新緑の若木へ授けられた神からの祝福だったのです。
しずく二滴
そのしずくは一滴目のしずくを追いかけてきました。
天上の池でいつも一緒にいた半身と離れたくなかったのです。
神はそれをお許しになりました。
二滴のしずくは流れ流れて大きな川を経て大海へと旅立っていきました。
海は広く大きく――しずくたちは荒れる波に翻弄されました。
やがてふたつのしずくは離れ離れになってしまいました。
迷子のしずくがふたつ大海を彷徨います。
天の光に照らされ続けた海水からしずくふたつ。
大海から浮き上がり空へ向かいました。
高く高く雲をも見下ろす天上の池でしずくたちは再会しました。
輝きを放つ池でふたつのしずくは寄りそい漂いました。
神は再びしずくに旅立ちを告げました。
今度はふたつのしずくが一緒に旅立つことになりました。
まい降りた水の中でしずくたちはその時を待ちます。
やがて時が満ちてゆき。
ふたつのしずくは一緒に泣きました。
おんぎゃぁ――おんぎゃぁ――双子は神からの祝福でした。