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機甲獣アーマードモンスター  作者: 和田慶彦
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困った仲間達

「というわけで、何かいい仕事、ありませんか?」



「装備も揃えて、機甲獣も修理にも出してるんですね」



「はい!」



「機甲獣のデータが工場から送られてきたので確認しました。アレックスで間違いないようですね」



「はい」



「では、こちらの依頼などどうでしょう?」



「特定地域の偵察と……同じ地区の制圧?」



「はい。機動兵器持ちの方優先で受けられる仕事で、決められた地区の様子を見て、可能であればモンスターや野盗を殲滅するんです。報酬は偵察が一人50ボル、制圧が500ボルで、弾薬・修理費はこちら持ちです」



「内容の割に随分安いですね」



 横からホーリーが口を出す。



「この地区は強いモンスターが出てこないんですよ。それに、安い分弾薬・修理費がこちら持ちなので。もしもの事……例えば、強力な戦力を持った盗賊や、強力なモンスターが徘徊してきたら逃げて報告してください。その場合は偵察のみの報酬となります。最低限取り逸れる事はないので、どうでしょう?今回はBランクの人が付き添いで、Dランクの方3名が一緒に仕事を受けます。全員機動兵器持ちですよ……一応」



「一応?」



「はい。Dランクの3人はハンター養成校の生徒で、機甲獣を貰ったことで舞い上がってて、ちょっと不安なんです。ステラさんはそんな事はありませんよね?」



 う、とステラは言葉に詰まった。

 ステラだって一昨日登録したばかりで、機動兵器を手に入れて賞金首を倒して、十分に舞い上がっている。

 その自覚があるのは年下なのに明らかに格上のホーリーが傍にいて、力を見せつけられているからである。

「そ、そうですね、ソンナコトナイデスヨハハハ」



「そうですか。安心しました」



 受付嬢がニッコリと笑う。



「では、そちらにメンバーが揃っているので、挨拶してください」



 そう言われて見てみると、見たことのある顔が居た。



「あっ」



「よう」



 ホーリーと会った時、騒ぐステラを嗜めた、あの女ハンターだった。



「うまくやってるようだな……なんだ、ソイツも一緒か」



 ホーリーを見て女ハンターが言う。



「あたしはジェシカ。Cランクのハンターだ。お前達は?」



「ステラ・サントラナ。Dランクですが、今回の依頼でCランクになります」



「君もか!俺たちもそうなんだ!これが終わったら俺達と組まないか?」



 ジェシカの周りにいた青年がずいっと前に出てきて声をかけてくる。



「俺はアルク。後ろの二人はファミィとヨルン。この仕事が終わったら3人で組むんだ。君も入らないか?」



「ファミィです。よろしくお願いします」



「ヨルン。よろしく」



 アルクの後ろで二人の少女が挨拶する。



「お前は女ばっかり誘うな!いい加減にしとけ」



「そんなつもりはないんだけどなあ」



 嗜めるジェシカに、アルクがへへ、と笑った。



「それと、この子はホーリー。連れて行っていいですか?重量級で足が遅くなりますけど、戦力にはなると思います」



「重量級?お前、確かハンターじゃないんだよな。それじゃお前の分の修理費も弾薬費も出ないが、いいのか?」



「構いません」



 ホーリーはいつもの仏頂面で言う。



「ホーリー?君も女の子なのかな?」



「男です」



 アルクに対して、食い気味に答えるホーリー。



「そうか……お前はまだ子供みたいだけど、仕事は出来るのか?」



 アルクの態度が急に変わる。



「心配はいりません。うまく出来なかったとしても死ぬだけです」



「簡単に死ぬとか言うな!」



 何かの癇に障ったのか、アルクがいきなり激昂する。



「そんな気持ちで来るなら足手まといだ!」



 そう言うアルクを、ジェシカが小突く。



「いてっ」



「それを決めるのはお前じゃねえ。あたしだ。あたしはコイツよりもお前のほうが心配だよ」



「なんだよ……」



「それで、この子は連れてってもらえるんですか?」



 ステラが不安になって尋ねる。



「ああ、別にいいぜ。本人が良いって言ってるしな。ところで、重量級って言ってたな。機体は何だ?」



「大焦熱。機甲獣です」



「んー?聞いたことあるような……だが、ここらじゃ聞かない機体だな。ハンター証が有れば詳細がわかるんだが……」



「見ればだいたい分かると思います」



「そうか。よろしくな、ホーリー」



「俺は反対だ」



 アルクが反対する。



「だからそれを決めるのはお前じゃねえっつってんだろ!」



「俺だって参加してるんだ!意見を聞いてくれたって良いじゃないか!」



 ジェシカにアルクが食って掛かる。



「じゃあなんで反対なんだ?」



「それは、こいつが死ぬとか言うから……」



「落ち着け。本気だってことのアピールだろ。本当に死んでもいいって思ってるわけじゃないよな?」



 ジェシカがホーリーに尋ねる。



「私が本当に死ぬとしたら、あなた方全員が先に死んでると思います」



 ホーリーは真顔でそう言い放った。

 その発言に、アルクだけでなく、その場に居た、ステラ以外の全員がピクリと反応した。



「おもしれえ事言うじゃねえか」



 と、ジェシカ。



「お前!何様のつもりだ!」



 と、アルク。



「随分な自信みたいね」



 と、ヨルン。



「あ、あの、皆さん落ち着いて」



 と、ファミィ。



「ホーリー!いくら何でも失礼でしょ!ごめんなさい、この子にはよく言って聞かせますから」



 と、ステラが言うと、ホーリーはジェシカに向かって、



「嫌なら外してもいいですけど、元々お金をもらって参加するわけではないので、一人で勝手にやらせてもらいます」



 と言い放った。



「ほう」



 ジェシカは思案した後、こう言った。



「お前は連れて行く。ステラの付き添いとしてな。だからお前が勝手な行動を取れば、その分ステラの信用に傷がつく。この意味がわかるな?」



「勝手に行動してはいけない、ということですね」



「そうだ、いい子だ。ステラの為に、あたしの言う事をよく聞いて、危なくなったらすぐ逃げるんだぞ」



「はい」



 ホーリーは素直にそう答えた。



「じゃあ登録番号を教えてくれ。お互いの情報を共有する」



ステラが他の4人とお互いにハンターの登録番号を教え合い、情報を見た。





 翌日。

 街の外で6人は集まり、出発した。

 ホーリーの大焦熱は……やっぱりデカかった。

 アレックスより頭2つ分は大きい。

 腰の大砲も、手に持った大太刀も、アレックスではどれか一個しか装備できなさそうだ。

 ジェシカが「重量級っていうか、大型機じゃないのか、コレ」と言っていた。

 ハンター養成校に通っているDクラスの3人は、学校から機甲獣を支給されていた。



『ステラは一昨日入って、自力で機動兵器を手に入れたのか、すごいな』



 と、中量級機甲獣「ザジム」に乗ったアルクが言う。

 口を開けた蜥蜴の様な頭部に、アレックスと同じくメリハリの付いた体型。

 ザジムはこの宇宙でもっとも多く生産されている機甲獣だと言われている。

 機動力を重視した、しかししっかりと対弾性を持たせ、内臓武器は胸の小型レーザー砲のみ、各部の増設ポイントで武装を増やす、拡張性が高い設計をしている。

 アルクのそれは増加ブースターに大剣を背負っている。

 初めてそれを見た時、ステラは「男の子ってこういうの好きだよね」と思った。



『しかも、賞金首まで倒してる!』



 ファミィが言う。

 こちらは増加装甲に長距離砲を持っている。

 その様はまるで法衣と杖を持った僧侶の様だった。



『へへ、ホーリーに手伝ってもらって。ね?』



 とステラがホーリーに話しかけて、会話の輪に参加させようとする。



『そうですね』



 そんなステラの気遣いをよそに、ホーリーは無愛想に言う。



『アレックスか。いい機体だ。だが、それを初めて操って戦うのは難しかっただろ?』



 ジェシカの機体はブロウラー。アレックスやザジムと比べてややずんぐりとした重装甲に、両腕部の小型レーザー3門、合計6門と3連装短距離ミサイルを2つ装備した、近距離戦用機甲獣である。近距離戦型の割に足が遅く、カタログスペックで敬遠されるが、仲間と連携を取ったこの機体の近接火力は頼もしい。

 ジェシカのそれは更に両手斧を装備している。



『はい、ホーリーが居なかったら危なかったです』



 アレックスは今日の朝までに修理が完了して、足取りが軽やかだ。



『その機体、『ダイショーネツ』だったっけ、それも一緒に戦ったの?』



 ヨルンが聞く。

 こちらは7、7センチレールガンを持ち、腰には高振動ブレードの鉈をマウント、そして足にミサイルランチャーというオーソドックスな装備をさせている。



『いえ。大焦熱で攻撃したら、ナロードラゴンなんて跡形も残りません』



 とホーリー。



『へえー』



 それを受けて面白くなさそうに、アルク。



『ところで、アルク達って養成校の生徒って話だったけど、なんでもうハンターになってるのにハンター養成校に通い続けてるの?』



ステラが疑問を口にすると、アルクが答えた。



『ハンターになった後も昇級があるからな。上級ランクは試験だって結構難しいって話だぜ。過去問見せられた時、問題の意味も分からなかった。ステラも入って勉強したらどうだ?』



『学費が稼げるようになったらね』



『そろそろモンスターが出てくる頃だな。アタシとステラが先行する。お前らはちょっと待っとけ』



 ジェシカにそう言われて、足を止める4人。



『ステラ、索敵は出来るか?』



『索敵、ですか』



 そう言われても、ステラには索敵の仕方などわからない。自転車の練習じゃあるまいし、いきなり実地でやれと言われても、やり方がわからない事にはどうしようもない。

 そう思っていると、その思考を読み取ったAIが勝手に索敵モードに入った。

 立体映像で球体状の3次元索敵情報が載せられ、ヘッドセットを通じて脳内にも直接情報が流れ込んでくる。



『うわっ何これ』



『なんだ、フルダイブゲームとかやった事無いのか?』



『そんなお金無かった』



『まずはそこからか……機動兵器は操縦者の思考を読み取って動く。もちろんその逆に機体からの情報が操縦者の脳内に直接流れ込むこともある。この感覚に慣れろ』



『思考を読み取って動くならこの操縦桿は何なんですか?』



『お前がふと妙な事を考えた時に勝手に銃をぶっ放さないように最終的なトリガーはそれで引くんだよ。それで、索敵は出来たか?』



『大型なし、中型が3、小型が14体居ます』



『よし、よく出来た。……戻る前に、お前に言っておきたいことがある』



『なんですか?愛の告白ならあらかじめごめんなさいって言っときますけど』



『馬鹿野郎。ホーリーの事だ』



『ホーリーの?』



『ああ。昨日、あの後ダイショウネツって機体について調べたんだが、アレは相当なレアだ。ハンター向けの物はほとんど流通していない』



『それって……』



『ナロードラゴンが跡形もなく吹き飛ぶってのはフカシじゃない。本当にそのくらいの機体だ。あんな子供が持ってるようなもんじゃない』



『……』



『お前、とんでもない拾いもんをしちまったのかもしれないな』



『そうですか』



 それを聞いてどうしろというのか。ホーリーから離れろとでもいいたいのか、それとも、もっとご機嫌を取れとでも言いたいのか。



『あいつはただもんじゃねえ』



 そんな事は知っている。



『せいぜい仲良くやれよ』



『言われなくてもそのつもりだよ』



 なんだ、そんな事が言いたかったのか。

 下らない。神妙に聞いて損した。



『この話は、ここだけの話だ。ホーリーにあたしが余計なことを吹き込んだ、なんて思われたくないからな。さあ、あいつらの所に帰るか』



『はーい』



 それから4人の所に戻り、フォーメーションを組んだ。

先頭にジェシカのブロウラーが出て強行偵察、その後ろにステラのアレックスとアルクが付いてきて、小型を掃討。ファミィは足が遅いので、ヨルンとホーリーの大焦熱で護衛。これで目的の地区まで移動する。



『進路上の敵だけだ。余計なやつには手を出すなよ。俺達の仕事はあくまでD5地区の殲滅なんだからな』



『はい』



 ジェシカの指示に返事をする。



『そろそろだな』



 D5地区とやらが見えてくる。

 索敵してみると、なるほど、多くのモンスターが巣食っているようだ。



『射程内です。撃ちますか?』



『ん?そうか。じゃあ一発頼む』



『一発ですね』



 そう言うとホーリーは大焦熱を飛び立たせて、上空から腰のフェイズ砲を一発撃った。

 砲口からモンスター達までの空間が鏡の様に割れ、そこから膨大なエネルギーが噴出する。

 空間が爆発し、後に残ったのはクレーターだけである。



『おいおいお前だけでなんとかなるんじゃねーのか、コレ』



『消費エネルギーが尋常じゃないし、そもそも連射できませんから』



『そうか、じゃあもう一つの方で一発ぶちかましてくれ。後はファミィに合わせて突入だ』



『はい、全速前進!!……すみません、遅くて』



 申し訳無さそうにファミィが言う。



『気にすんなよ!戦場に着いてもロクに活躍できない俺よりマシさ』



 哀愁を漂わせて、アルク。



『私達3人共どっこいどっこいだから気にしないで』



 と、ヨルン。



『私なんて、自分の機体の事もよくわかってないよ』



 と、ステラ。



『お前らはまだまだこれからだろ?もうすぐBランクなのにステラと同クラスの機体なあたしの気持ちも考えてくれ』



 と、ジェシカ。



『アレックスもブロウラーも悪い機体じゃないと思いますが……』



 と、ホーリー。

 D5地区が全員の射程内に入る。

 ファミィの主砲である21センチレールガンが、ブロウラーとアルクの小型レーザー砲が、ヨルンの整地ミサイルを装填したミサイルランチャーが、アレックスのレーザーライフルが火を吹く。

 それに少し遅れて、大焦熱のフェイズ砲がその弾幕の穴を埋めるように飛んでゆく。

 大型火器は中型モンスターを優先して狙い、小型モンスターには副砲をぶちまけた。

 一同が血に酔ってきたその時、ブワッ、と羽虫のようなモンスターが飛び立ち、群がってきた。



『何だコイツら!?』



『数……134匹!?まだ増える!!』



 索敵したステラがその数に驚く。



『グランゴだな。小型の飛行型モンスターだ。こいつが大量に出てきたって事は……』

 ジェシカがグランゴの出てきた岩山をブロウラーのバトルアックスで砕く。

 岩山に擬態していた大型モンスターが出てくる。

 ステラはその巨体を見た時、ナロードラゴンが「一番弱い賞金首」と言われていた理由がわかった。

 ナロードラゴンなんて目じゃない。

 機甲獣が見上げるほどの巨体だ。

 ブドウに虫の頭と手足を付けたらこんな風になるだろうか。体に付いた穴の空いた房の様なものからグランゴが出て来ている。



『……パンデモス!!こいつは放っておくと食った物から無限に小型モンスターを生成する!!撤退してギルドに報告だ!!』



 とジェシカが言うが、



『待ってくれ!!』

 とアルクが止める。



『ここは人里が近い!!こんな奴を放っておいたら、あの羽虫みたいな奴に襲われるかもしれない!!』



 そう言ってアルクは突っ込む。



『お、おい!?わかった、皆、まずこのブドウみたいな房を吹っ飛ばしてくれ』



 房に斬りつけながら、ジェシカは言う。



『了解!』



 ホーリーがアルクに続く。

 それをヨルンが援護する。

 ステラとファミィはパンデモスの房を狙撃する。



「ピギイイイイイイイ!!」



 パンデモスが気持ち悪い悲鳴をあげ、暴れまわる。

 巨大な足を振り回し、頭部から光線を撒き散らす。それに加えて前衛たちに周囲のグランゴが集ってくる。



『キャアアアアアアア!!』



 機体の足の遅いファミィと操縦に慣れていないステラが光線を受ける。



『ステラさん!!』



『うわっ!!』



 アルクは振り回される巨大な足に翻弄されている。



『ふん!!』



 大焦熱がその足を掴んで動きを止める。



(すげえパワー……)



 ジェシカが驚嘆する。

 ホーリーは大焦熱を跳躍させ、頭部に迫った。



『滅尽砲!!』



 ホーリーはナロードラゴンに向かって放った技を、今度は大焦熱のパワーでもって放った。

 圧倒的なパワーとスピードで振り下ろされた斬撃はパンデモスの頭部を斬り飛ばした。



『なんだそりゃ!?』



『それ機甲獣でも使えるの!?』



 ジェシカとステラが驚愕する。

 アルク達は刀にエネルギーフィールドでも付与されているのだろうと思っていた。



『操縦に慣れると、こういう事もできる様になります』



 頭を吹き飛ばされたパンデモスはなおも動いている。グランゴを呼び戻している。



『グランゴを消化して回復するつもりだ!!一気に叩け!!』



 前衛組は暴れまわる足を切り砕き、後衛組は房を砲撃する。

 やがてパンデモスは沈黙した。



『あー、やっぱりさっさと撤退命令を出しておけばよかったな』



 すべてが終わった後、ジェシカがこぼす。



『いいじゃないか勝ったんだから』



 と、アルク。



『バカ野郎、誰のせいだと思ってんだ』



『俺は間違ったことをやったつもりはない!!』



『喧嘩はやめましょう、ね?』



 ファミィが止める。



『皆さん疲れているんですか?』



 ホーリーが言う。



『当たり前だろ!!』



 アルクが答える。



『ホーリー、すごい動きしてたね。疲れないの?』



 ホーリーの戦い振りを見ていたステラが尋ねる。



『こういう時に対処するために、日頃の鍛錬が必要なんです』



『そうだぞ』



 ジェシカが乗っかる。



『皆さん疲れているようでしたら、私が先行します』



『じゃあ、あたしとホーリーが先行する。何しろ付き添いだからな』



 こうして皆で帰った。

 機体を思うように動かせなかった。

 自分がもう少しうまく機体を扱えるようになれば、もう少し状況は変わったのだろうか。

 例えばホーリーのように。

 大焦熱の背中を見ながらステラは思案した。


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