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機甲獣アーマードモンスター  作者: 和田慶彦
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デート

 朝起きるとホーリーが居なくなっていた。

 出て行ってしまったのか。

 工場に行き、夜勤の工員の「もうすぐ帰れたのに」という表情を見ないフリをしながら、大焦熱の操縦席を見に行ったが、いない。

 その後は町中を駆け回った。人もまばらな街中、24時間空いているハンターギルド、薄暗い路地裏、どこにもホーリーは居なかった。



「やっぱり無理やり泊まらせたから嫌がっちゃったのかなあ」



 そう呟きながら部屋に戻ると、ホーリーが帰ってきていた。



「おかえりなさい。どこか行ってたんですか?」



 何事もなかったかのようにホーリーが言う。



「それはこっちのセリフだよ!どこ行ってたの!?心配したんだよ!?」



 ステラの剣幕にホーリーは少したじろいで、



「朝の鍛錬に……ご心配をおかけしましたか?」



 と答えた。



「おかけされましたよ!もう、なんで起こして一言言ってきますって行ってくれなかったの?」



「はあ、それは気が付かず。すみませんでした」



「もう!心配掛けた罰として朝食はホーリーが奢って!」



 ステラはそっぽを向いて、プンスカと怒りながらねだる。



「はい。でも、もうすぐお昼ですね」



「じゃあ、2食分食べる。デザートも付けて!!」



「はいはい」



 本当に2人前食った。レストランでデザートのアイスクリームを食べながら、ホーリーはやはりここに栄養が行くのだろうか、とステラの胸をじっと見る。

 その視線はステラからしてみればバレバレで、ふふんどうだ、とばかりに寄せたり揺らしたりしてみる。

 特に反応に変化はない。



「この後なんですけど」



 ホーリーが口を開いた。



「武器防具を買いに行きましょう。ステラさんは最低限の武装をするべきだと思います」



「そうだね」



 ホーリーは防護服に耐弾性のあるコートに何でも切れる刀にプラズマガン。

 ステラは安い薄手の布の服に護身用のレーザーライフル。

 モンスターを狩るとか言ってる場合ではない。



「私を探して街中走り回ったって言ってましたよね。その格好でですか?」



「うん」



 そう言われてみれば、この治安のあまり良くない町でデカい胸をユッサユッサ揺らして走って誰にも襲われていないというのは奇跡である。

 そういうわけで、食事を食べ終わると、ハンター用の装備類を置いてある店に来たのだった。

 店内には様々な重火器があり、ステラが持てるか持てないか、という大きな銃も有った。

 防具や服、下着類まで有る。触ってみると、どれもかなり頑丈で厚手な生地で作られているのがわかる。



「まずは防具から揃えましょう」



「その前に下着を変えたいよ。これ窮屈なんだもん」



 そう言って頑丈さ重視の色気のない下着の中で、マシなデザインのものを見繕う。

 試着室に行き、乳尻を締め付ける下着を着替える。



「ホーリー、ホーリー」



 ホーリーを呼ぶ。



「これどうかな?」



 そう言って試着室のカーテンを開ける。

 しなやかな肢体が露わになる。

 ホーリーは戸惑う様子もなく、上から下まで見回した後、



「いいと思います」



 と言った。

 この「いいと思います」は(どうでも)いいと思います、と言っているのだな、と思った。



「ふーん」



 そう言ってカーテンを閉める。

 面白くなかった。

 ホーリーが赤面して、何見せてるんですか、早く隠してください、とか言って恥ずかしがるのを期待していたのに。そうでなくても、思わず凝視するくらいはすると思ったのに。

 自分にはそんなに女としての魅力がないのか。

 そう思いながら、歳にしては豊かな胸を見下ろす。

 チンコ無いんかあいつ。



 そのすぐ前、カーテン一枚越しの所で、ホーリーは顔を赤くして俯いていた。

 ステラのしなやかな肢体。金糸のような髪。整った顔立ち。

 昨日はあれに抱かれて寝ていたのだ。

 その感触を思い出す。

 あれを見せたということは、ステラは自分の事を悪くは思っていないのだろうか。

 それとも、なんとも思っていないからあんな事ができるのだろうか。

 股間が熱い。

 頭がステラのことでいっぱいになる。

 これは良くない。



「トイレに行ってきます」



 何でもない風にホーリーは言う。だがその息は熱を帯びていた。



「行ってらっしゃい」



 不機嫌そうな声でステラが答える。

 トイレから帰ると、ステラは会計を済ませ、服もハンター用のものに着替えていた。



「おかえり。長かったね」



「そうですか?」



「ウンコだー!!こいつウンコしたんだー!!デートの最中にー!!」



「銃は買いましたか?ちゃんと試射しないとダメですよ?」



 囃し立てるステラに、ホーリーは呆れたように言う。



「まだ。よくわかんないから、君が来るまで待ってた」



 あっけらかんというステラに、呆れと喜びが混じった、仕方ないなあという顔でホーリーが応じる。



「ハンターなのに銃の事がわからないんですか?」



「駆け出しならそんな人珍しくないよ。日銭を稼ぐためにハンターになる人だって多いし。それに私、銃じゃなくて機動兵器に興味があってハンターになったから」



「そうですか。では一通り見てみましょうか」



 ホーリーが銃のコーナーに向かう。



「うん!」



 ステラがそれについていく。



「ところで」



 ホーリーが振り向く。



「これってデートなんですか?」



 デートの最中にー!!というステラの言葉を、ホーリーは聞き逃していなかった。

 ステラはホーリーの顔を見た後、目をそらして、



「さあね」



 と言った。







「こちらです」



 店員に案内してもらって、店の地下の射撃場に行く。

 メインウェポンはレーザーライフルがあるからとホーリーがサブウェポンに高出力のレーザーガンを提案してきた。



「では、レーザーガンを試射してみてください」



 そう言われて、セーフティを外して、レーザーサイトを頼りに照準して、レーザーを撃つ。というか機構的にはレーザーサイトの出力を上げているだけなので、狙い通りに的の真ん中を撃ち抜く。



「レーザーって当てやすいね」



「そうですね。レーザーサイトを見ずに射撃できますか?」



「レーザーサイトを見ずに?」



「アレを確認してから撃つのはちょっと遅くなりますから。敵はもっと早く撃ってくるかもしれませんよ?」



 そう言われて、レーザーサイトを使わずにレーザーを打ち込む。



 的の中心から大きく外れた。



「貸してみてください」



 そう言われてホーリーに銃を渡そうとしたが、



「セーフティ」



 と言われて慌ててセーフティをロックして渡す。

 ホーリーは渡された銃をチュイン、チュイン、チュイン、と連射する。

 全ての弾が的の中心に吸い込まれた。



「すごーい機械みたい……」



 感心するステラ。



「ここまでとは言わずとも、ある程度早打ちは出来るようにしておきたいですね」



 そう言ってカートリッジを抜いて、充電器に押し込むホーリー。



「レーザーライフルもレーザーガンも宇宙統一規格のカートリッジを使っているので、全宇宙のガンショップ、ハンターギルド、工場等でも充電できますよ」



 と、店員が説明する。



「へえ」



「レーザーライフルとレーザーガンは共通のカートリッジで6発撃てますが、レーザーライフルは大型カートリッジにも対応しています。こちらは30発撃てるようになります。両方とも3つまとめ買いで5ボルお得になりますよ」



「じゃあそれで」



 会計を済ませると、手持ちの残金はもう2500ボルになっていた。

「いっぱいお金使っちゃったね」



「初期投資は大事です。ここでケチると命を落とします」



「うん。あ、携帯端末買いに行こっか。君、持ってないって言ってたでしょ」



「はい。身分証明が出来なかったので」



「私の名義で作ろう。私、孤児院で戸籍登録してるし、身分証明だってハンター証で出来るもんね!」



「ありがとうございます」



「じゃあ、行こ」



「はい」







「ありがとうございましたー」



 携帯端末の店の店員が挨拶をする。



「ありがとうございます。でも、2つも買っていいんですか?」



「うん、私もちゃんとしたのが欲しかったし。ハンター証でも代わりは出来るけど、本当に通信くらいしか出来ないからね」



「そうなんですか。そうですよね、通信端末を全員に無料で渡してたら、いくらお金があっても足りませんよね」



「うん。……ホーリー、忘れないでね」



 ステラが目に妖しい光を湛えながら言う。



「その端末、私の名義だから。逃げたりしたらすぐ解約するからね。もう逃げられないゾ♡」



「はあ。別に逃げたりなどしませんが」



 何言ってるんだこいつ、というような目でホーリーがステラを見る。



「そっか。じゃあ、一緒にギルドで仕事探そっか。私、何でもいいからあと一つ仕事を受ければランクアップするんだってさ」



「そうなんですか」



 ハンターギルドに入っていないホーリーにはランク、というものがどういうものかよくわからないが、多分めでたいことなのだろうと思った。



「では、頑張りましょう!」



 ホーリーがぞいの構えで鼓舞する。

 

「うん!」


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