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機甲獣アーマードモンスター  作者: 和田慶彦
13/16

アルクの新機体

 最近忙しい。

 モンスター討伐の依頼が多い。

 噂では、盗賊団達も強力なモンスターにやられているらしい。


「モンスターのボスが代替わりして、生態系が乱れているらしいんです」


「ボスって言うと、この地域一帯のボスですか?」


「そんな規模じゃありません。この星全体のモンスターのボスです」


「それって強いんですか?」


「強いなんてものじゃないですね。最悪の場合、この街を放棄する事があるかも…」


「君、ちょっといいかね」


 ギルドの施設長が、受付嬢を呼びつける。

 代わりに別の職員が受け付ける。


「はい、仕事の斡旋ですね」


「斡旋って言うか、そちらからの依頼なんですけど」


「はい、大型モンスターの討伐ですね。このモンスターには賞金も付いていますし、修理費・弾薬日も出ますよ」


 職員は張り付いたような笑顔でそう言った。


「君、新人のハンターに命を大事にするよう言っているようだね。あれ、やめなさい」


 呼び出された受付嬢に待っていたのはそのような言葉だった。


「どういうことですか?」


「ハンターは元々命がけの仕事で、命に代えても仕事に当たってもらわねば困るのだよ。兵士だって同じだ。皆が皆、この仕事は失敗するかもしれないからやめますとか、敵が強かったので撤退しましたと言い出したらどうする?誰も危ない仕事などやらなくなる。だから、実戦に出る物にはお前は無敵のヒーローだと言い聞かせて仕事をさせるんだ」


「では、彼らの、ハンターたちの命は誰が保証するんですか?」


「まるで君のやり方なら保証できるとでも言いたげなセリフだな」


 その言葉に、受付嬢は言葉に詰まった。今でもハンターは死んでいる。


「ハンターは元から命がけの仕事だ、保証など無い。君ならそれをわかっているだろう?」


 受付嬢も、この施設長も、ハンターランクAのエリートである。仲間が死ぬのを何度も見てきた。

 それを受け入れられなかったのが受付嬢で、受け入れているのが施設長と言うだけの話だ。


「彼らは誰かのために命をかける時、ならず者から初めて英雄になる。死者を間抜けと笑う者が居たらそいつはぶっ飛ばしてもいいが、勇敢な戦士を臆病者にするのは看過できん。それでもハンターたちを守りたいなら、適切な仕事と手厚い支援を回すしかない。だが、それが出来るなら今の人類はモンスター達に手こずってなどいないだろう?」


 圧倒的な質と量の不足。前線で戦う戦士たちを守るには、人類側の質も量もあまりにも足りていない。


「シミュレーターの設定も甘くしなさい。アレはそこそこの操作を覚えて、ついでに自信をつけさせればそれでいい」


「…わかりました」


「では、退出したまえ」


 そう言われて退出する。

 ハンターの命など、軽い。

 だからこそそこから這い上がってきたものは、「英雄」と呼ばれるのにふさわしいのかもしれない。




「ステラ!ステラじゃないか!」


「うわ出た!」


 ミーティングに出てきたアルクに、ステラはギョッとした。

 ここ1か月会ってなかったのに。


「なんだよ、知り合いに会えてホッとしてたところだったのに」


「知り合いならここにもう沢山居るだろ」


 と、ジェシカ。


「ジェシカも来てたの?」


「ああ、ジェシカもチームに入ってくれたんだ!」


「そうなの?」


「ああ、危なっかしくてほっとけなくてな。こいつ、いい女ばかり誘うんだぜ。アタシもお眼鏡にかかったって事だ」


「ふうん」


「ステラも入らないか?」


「アタシにはこの子が居るから」


 と、ホーリーを前に出す。


「そうだ、聞いてくれよ、俺、あれから新しい機体をもらったんだ!」


「新しい機体?」


「ああ、詳しい所は見てのお楽しみって事で!」


「今回のターゲットは?」


「ああ、スターダストワイバーン、600000ボルの大物だ」


「ワイバーンなのにナロードラゴンよりも賞金が高いの?」


「ああ、ナロードラゴンはドラゴンって言っても体も小さいし頭も悪いからな。コイツは違う。デカいし、強いし、何より飛ぶ。ナロードラゴンは逃げる敵を追いかける時くらいにしか飛ばないが、こいつは積極的に飛行能力を使ってくる。危なくなったら逃げるし空中からブレスで攻撃してくる。本来なら戦闘機が相手するんだが、今戦闘機乗りが出払っててな」


「ブレスって、あの装甲を燃やしてくるブレス?」


「いや、こいつは魔法攻撃はしてこない。その代わり生体プラズマを吐いてくる。あとワイバーン種は魔法を使ってこない分ドラゴン種よりもタフで力も強い。アタシたちにとっては厄介な相手だな」


「どうするの?砲撃?」


「そうだな。機体によっては飛べるかもしれないが、ワイバーンの速度に付いていける奴がどれだけ居るかって話だからな。まずは餌でおびきよせて、翼を集中攻撃。飛べなくなったところを袋叩き……なんだが、コイツ、翼が無くなっても一応飛ぶんだよなあ」


「翼が無くても飛べるなら、なんで翼が生えてるの?」


「流石に飛行能力は落ちる。私達のホバリングで十分追いつける様になるはずだ。あと、ヨルンが魔法を覚えてる」


 ヨルンがちょっとドヤ顔をした気がした。


「攻撃魔法は銃で撃った方が早いくらいだけど、拘束魔法が使える。流石に大型モンスターには力不足だから、気休めの足止めくらいに思って欲しい」

「わかった」


それぞれミーティングが終わった。


そして当日。

アルクの機体は確かに高級そうな物に変わっていた。

全身が純白の鎧の様である。

羽の様な高機動スラスターが背中に付いている。

メカニカルな長剣を背負っている。

白い猛禽を思わせる機体だ。


「カッコイイ……」


ステラは開口一番、そう言った。


「俺の機体 『アルベルジュ』だ。でもコイツ、意外とポンコツなんだぜ」


「そうなの?」


「コイツ、バランサーと格闘制御に要領全部使って、射撃管制能力が無いんだよ」


「え、それって大丈夫なの?」


「その代わり基本性能は折り紙付きだ。俺は砲撃とか牽制とかしないから、これでいいだろって言われた」


「ふうん……ん?あれ、ヨルンちゃんの機体?」


「うん。魔法の発動体を追加した」


 ヨルンのザジムは宝珠の付いた杖を装備していた。

 それとは別に、腰に今までのレールガンもマウントしている。


「魔法は補助に使うの?それともこれから上げていく?」


「魔法コースに行こうかとも思ったけど、そうすると私たちのチームに斥候がいなくなるからどうしようか迷ってる」


「ふうん」


 斥候も、魔法使いもクールなヨルンには似合っている、とステラは思った。


「それに、火力だけならファミィも居るから」


「うーん、私も、アルクが近接戦闘に特化するなら魔法を伸ばそうかなって思ってる。そうでなくても広範囲攻撃が欲しい」


 と、ファミィ。


「よし、そろそろ準備するぞ」


 というジェシカの声に、3人は会話を打ち切った。


『うげえ……これを触るの?』


 ステラ達の前にあるのは、モンスターの死骸だ。

 討伐された物で、傷だらけで、内臓が出ている。


『触るのはお前自身じゃないんだからいいだろ』


『それはそうだけど……』


 不満を漏らすステラをジェシカが窘める。


『ホーリーの機体はデカいんだからもっと持てるだろ!』


『アルク。ホーリーに当たらないで』


『す、すまない』


『そもそも餌を置く前に罠を仕掛けなきゃな』


 そう言って、スタン地雷のキットを用意するジェシカ。

 その時だった。


『大型の反応あり!速い……多分目標がこっちを見つけてる』


 ヨルンの声に、全員が臨戦態勢を取った。

 プラズマ火球が降ってくる。スターダストワイバーンの吐いた物だろう。

 皆が逃げ惑うが、ホーリーの大焦熱は餌の前でバリアを張って目標を睨んでいる。

 皆が散って、好機と見たスターダストワイバーンは餌を強靭な両足で掴もうと迫ってくる。

 そこに、ホーリーがプーストを吹かして、そのままの勢いでタックルした。

 何倍もの体躯を持つスターダストワイバーンに大焦熱は力負けしない。お互いが吹き飛ぶが、先に体勢を立て直したのは大焦熱だった。

 またブーストを吹かし、今度は刀で思い切り切りつけた。


「滅尽砲!!」


「グオオオオオ!」


 ワイバーンは翼を大きく切り裂かれ、悲鳴をあげた。

 飛んで逃げようとするが、片方の翼を斬られて上手く飛べない。


『今だ!』


 ジェシカの合図とともに、標的に集中砲火を浴びせる。

 ジェシカとアルクは翼に向かって斬りつける。 

 だが、それでもワイバーンは飛び立った。


 『逃がすか!』


 アルクがそれを追いかける。


『待て、深追いするな!』


『バインド!』


 ヨルンが魔法でワイバーンを拘束する。

 アルクが動きの鈍ったワイバーンを追いかける。


『うおおおおおお!!』


 スターダストワイバーンは宇宙でも活動できる速さを誇る。

 動きが鈍っているとはいえ、それに追随できるアルベルジュの機動力はすさまじい。

 そこに、大焦熱のフェイズ砲が援護する。ファミィは誤射を恐れて撃てない。


『これで終わりだ!』


 アルクの掛け声と共にアルベルジュが剣を一閃する。

 その一閃はスターダストワイバーンの命脈を断った。


『アルク、すごい!』


 ファミィが感嘆の声を漏らした。


『よくやった!』


 ジェシカも褒める。


『……私のバインド』


 ヨルンが主張する。


『ホーリーもすごかったね!』


 ステラがホーリーの活躍を褒める。


『これが大焦熱のパワーなんです!機体が万全ならこんなものじゃないです!』


 ホーリーは珍しく誇らしげだ。


『じゃあ、皆ギルドの職員が確認しに来るまで待機だ』


『りょうかーい』


 待機の間にアルクに話しかけられた。


「ステラ、見ただろ?機体が良ければ俺だってあのくらいできるんだ」


「調子に乗らないの。あれは皆で戦った結果でしょ?」


「なあ、いつになったら俺を認めてくれるんだ?」


「認めるって何?私、あなたの事ならすでに認めてるけど」


「じゃあ、俺達のチームに入ってくれよ」


「え、何それ。いつの間にそんな話になってるの?」


 じりじりと寄ってくるアルクからステラは一歩下がった。


「ジェシカだって入ってくれたんだ。ステラだって、あのガキ…ホーリーとにいつまでもやっていくつもりはないだろ?」


「やっていくよ。この一か月一緒にやってきたんだから」


「俺の活躍を見ただろ?俺は今までの俺じゃない。強くなったんだ」


「ちょ、ちょっと待ってよ。あなたが活躍する事と、私があなたのチームに入る事が結びつかないよ」


「俺ならあいつよりも君にいい分け前を与えられるって事だよ。600000ボルだぜ。6人で山分けしても10万ボルだ。あいつがいなけりゃもっと増えた」


「あいつってホーリーの事?ホーリーがいなかったらまず最初の足止めが出来なかったんだけど?」


「それだって俺達で何とかできたはずだ。なあ、俺達のチームに入ってくれよ、な?」


 ステラを壁際に追いやり、腕で逃げ道を塞ぎながらアルクは爽やかな笑みを浮かべていた。

 本当に善意から言っている。

 それが余計に不気味だった。


「いい加減にして。なんでそんなに私をチームに入れたがるの?なんでホーリーと引き流したがるの?怖いよ、気持ち悪いよ、離れて」


「お困りごとですか?」


 その時、ホーリーがやってきた。


「お前には関係ない話だ」


「あるよ。ホーリー、助けて。アルクが言い寄ってくるの」


「それは感心しませんね」


「黙れよ、ガキが」


「…私に喧嘩を売るんなら買いますが?」


「なんだなんだ、どうした?」


 ただならぬ気配を察して、ジェシカもやってきた。


「アルクが私の事勧誘してくるんです」


「入ればいいじゃないか。いいチームだぞ、ここ」


「嫌です。怖いです。ホーリーと引き離そうとするのが気持ち悪いです」


「じゃあ、決闘で決めたらどうだ?アルクが負けたら引き下がる、ステラが負けたらチームに入る。それでいいだろ。ハンター同士のもめ事は決闘で決めるもんだ」


「では、私も参加します。アルクさんも相棒を決めてください」


「それはダメだ。決闘は一対一でやると決まってるからな」


「明らかにステラさんが不利です。これがハンターのやり方ですか?」


「装備や場数を踏むのもハンターの甲斐性って奴だ。何、負けても命を取ろうってわけじゃないんだから、いいじゃないか」


「ジェシカってそんなだった?前はもっと公平じゃなかった?その変わり様も怖いよ」


「だから、怖いなら決闘すればいいじゃないかって話だよ。ギルドに帰ったら話付けてやるよ」


 こうして半ば無理矢理、ステラは決闘の約束を取り付けられた。

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