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みじかい小説

『みじかい小説』061 / ヲタクなふたり ~1000文字にも満たないみじかいみじかい物語~

掲載日:2026/01/08


「あーあ。残念!」

そうつぶやいて、私は画面を閉じた。

「ん?どした?」

リビングで何やら作業をしていた夫が声をかけてくる。


「今度始まったアニメなんだけど、シーズン0だけ見たらSFで超楽しそうだったの。久々にキタコレ!って思ったの。でも始まったのを3話まで見たら、恋愛ばっかしてんの。これって別にSF要素いらないじゃん!ワクワクを返せよ!ってなって今なの」

「なるほどなぁ。由香里は恋愛メインのアニメよりSFメインのアニメが見たかったんだ」

「そうなの。がっかりだわ」

私はほっぺをぷぅと膨らませて見せた。


「ところで、誠は今何やってんの?」

体を夫の方へと向けて尋ねる。

「会社のプレゼンの準備」

「かーっ!休みの日にまで仕事しなくていいのに!」

「すいませんね、休みの日にまで仕事を持ち帰って」

「いや、そういう意味じゃないけど」

私はそう言いながら、パソコンに向かう夫の顔をまじまじと見つめる。


「何?」

夫が私に気づいて、モニタから一瞬視線を外しぽつりと言う。

そのしぐさがとても私に刺さったので、「べつに~」と言いながら、私はひとり、伸びをする。

「次の日曜、一緒に映画見ようか。どんなアニメがいい?」

「うーん、そうだねぇ」


アニメオタクの夫と私が結婚したのは今から五年前。

コミケに出展していた私に、夫が客として声をかけたのが始まりだった。

自然とつきあいは深まり、結婚し、今に至る。

初めから同好の士であったこともあり、何よりお互いの穏やかな性格ゆえに、自然と喧嘩知らずの五年間となっている。

二人で話し合った結果、子供は作らないと決め、今は二人だけの生活を健やかに営んでいる。

「じゃあ、久々に『攻殻機動隊』見ちゃう?SF要素、足りてないんでしょ?」

「いいねえ。あーあ、もうあんな骨太の作品は出てこないのかしら」

「最近は何かといっちゃあ転生したり令嬢だったりするものね」

「そうなのよねぇ、みんな同じに見えちゃって」

「あ、でも『とんでもスキルで異世界放浪メシ』ってのは面白かったぞ。恋愛要素0」

「誠が面白いんなら絶対じゃん。見てみる。ありがと」


今日は寒くなると言っていた。

「夕飯、お鍋にしよか」

「いいね。待ってね、もうすぐ終わる」

「うん、待ってるー」

私の幸せの形って、これなのかもしれないな、なんて思いつつ、私は今日見たSFもどきのアニメの感想をweb公開するためにモニタに向き直るのだった。


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