『みじかい小説』061 / ヲタクなふたり ~1000文字にも満たないみじかいみじかい物語~
「あーあ。残念!」
そうつぶやいて、私は画面を閉じた。
「ん?どした?」
リビングで何やら作業をしていた夫が声をかけてくる。
「今度始まったアニメなんだけど、シーズン0だけ見たらSFで超楽しそうだったの。久々にキタコレ!って思ったの。でも始まったのを3話まで見たら、恋愛ばっかしてんの。これって別にSF要素いらないじゃん!ワクワクを返せよ!ってなって今なの」
「なるほどなぁ。由香里は恋愛メインのアニメよりSFメインのアニメが見たかったんだ」
「そうなの。がっかりだわ」
私はほっぺをぷぅと膨らませて見せた。
「ところで、誠は今何やってんの?」
体を夫の方へと向けて尋ねる。
「会社のプレゼンの準備」
「かーっ!休みの日にまで仕事しなくていいのに!」
「すいませんね、休みの日にまで仕事を持ち帰って」
「いや、そういう意味じゃないけど」
私はそう言いながら、パソコンに向かう夫の顔をまじまじと見つめる。
「何?」
夫が私に気づいて、モニタから一瞬視線を外しぽつりと言う。
そのしぐさがとても私に刺さったので、「べつに~」と言いながら、私はひとり、伸びをする。
「次の日曜、一緒に映画見ようか。どんなアニメがいい?」
「うーん、そうだねぇ」
アニメオタクの夫と私が結婚したのは今から五年前。
コミケに出展していた私に、夫が客として声をかけたのが始まりだった。
自然とつきあいは深まり、結婚し、今に至る。
初めから同好の士であったこともあり、何よりお互いの穏やかな性格ゆえに、自然と喧嘩知らずの五年間となっている。
二人で話し合った結果、子供は作らないと決め、今は二人だけの生活を健やかに営んでいる。
「じゃあ、久々に『攻殻機動隊』見ちゃう?SF要素、足りてないんでしょ?」
「いいねえ。あーあ、もうあんな骨太の作品は出てこないのかしら」
「最近は何かといっちゃあ転生したり令嬢だったりするものね」
「そうなのよねぇ、みんな同じに見えちゃって」
「あ、でも『とんでもスキルで異世界放浪メシ』ってのは面白かったぞ。恋愛要素0」
「誠が面白いんなら絶対じゃん。見てみる。ありがと」
今日は寒くなると言っていた。
「夕飯、お鍋にしよか」
「いいね。待ってね、もうすぐ終わる」
「うん、待ってるー」
私の幸せの形って、これなのかもしれないな、なんて思いつつ、私は今日見たSFもどきのアニメの感想をweb公開するためにモニタに向き直るのだった。




