スキル合成ばれる
「見たことないわねー、それ。固有スキル?」
彼女はカイのあまりにも不可解な行動に疑問を抱き、臨時で組んでいたパーティを抜けこっそり後をつけてみたのである。そして路地裏に消えていく彼をこっそりと眺めていた。
「い、いえ、これは……」
しどろもどろになるカイ。それを見て、彼女はふふふと笑って隣に腰を掛ける。
「私はマリン。もしよければ。ここで作業の様子を見てもいい?」
カイは断れない。『ホーリーレイン』を見せてくれた彼女には恩があるからだ。そして、それはマリンもわかっていた。断れないだろうと。こんな面白そうなスキル見ておくに越したことはない。
「わかりました……」
カイは観念した様子で『スキルシンセサイズ』を使用する。そして、『極大暗黒弾』を合成し始める。
『ホーリーレイン』と『双魔法の知識』、この二つを選択してカイは決定を押す。この二つが失われたという通知が届いたのち、『スキル廃棄物』を獲得した、という絶望の通知が届いた。
「うわあああ……。ダメだったか……」
「これは……失敗したの?」
「はい……。これだと思ったんだけどなあ」
「いったい何を作っているのかしら?」
カイは隠してももう仕方ないだろうと思い、素直に『極大暗黒弾』だと伝える。マリンは驚き、口を手で押さえる。マリンは小さな声で囁くように伝える。
「『極大暗黒弾』といったら、超極力な魔法じゃない。私のギルドでも躍起になって取得しようとしている人がいるわよ」
「はい。知ってます。『極大暗黒弾』と『ホーリーレイン』が似ているので、『ホーリーレイン』が材料だと思ったんですけど」
「あー、そういうことね。だったらもっと近いスキルの存在を知っているわよ」
そういうと、マリンはスキル図鑑を開く。サーチ機能で「アビスレイン」と入力する。すると、一つのスキルが表示される。
「これこれ。以前獲得したのだけど、魔法攻撃力依存だからギルドメンバーに譲っちゃった」
『アビスレイン』はその名の通り、『ホーリーレイン』の闇属性バージョンである。攻略サイトなどではまだ、獲得条件が公開されていないスキルであり、使う人もほとんどいない。
「確かにこれならもしかしたらうまくいくかも」
しかし、『アビスレイン』を獲得するのは絶望的である。使用者もほとんどいなければ、市場にはまだ一度も出回っていない。カイはマリンに獲得条件を聞いたが、到底達成できる内容ではなかった。つまり、合成しなければならない。
「属性変えるだけなんだけどなあ」
とはいえ、今までの傾向から『ダーク』を混ぜるのでは不十分だろう。たぶんそれよりは強い闇属性のスキルが必要だ。
「ええと、『ホーリーレイン』には『癒しの雨』と『ホーリースピア』を合成していたわよね」
「あ、はい。そうですけど」
「ちょっと待っていて」
そういうとマリンはどこかに行ってしまった。カイはこの隙に逃げようかとも思ったが、待っていてといわれていたのにいなくなるのはさすがに心証が悪い。それにあの様子から見るに、良いものを持ってきそうな予感がしたのである。
しばらくすると、マリンが帰ってきた。マリンはスキル屋で『癒しの雨』と『ホーリースピア』、それに様々な闇属性のスキルを購入していた。
「どうぞ、使って」
「え、ありがたいですけど、いいんですか?」
「ええ、『極大暗黒弾』を獲得したらその条件さえ見せてもらえれば」
マリンは確信していた。『極大暗黒弾』の取得ができないのは条件が分からないからだと。そして、その条件さえわかれば、ギルドにいる上位プレイヤーが何とか手に入れてくれるだろうと。
「わ、分かりました」
こうしてカイはトライ&エラーを繰り返すこと数回。
しかし一向にアビスレインは作成できない。
「うーん、まったく作成できる気がしない」
「基本的な闇属性の魔法は大体使ったわよね……。後は『ダークショット』や『ダークスピア』あたりかしら」
「それらはちょっと手に入れるのが面倒くさいからショップにも売ってなかったんですよね?」
「そうね……。でもこうなったら四の五の言ってられないわ。ダークショットを手に入れに行きましょ!」
『ダークショット』はクエストクリアで手に入る魔法スキルである。
『闇の使者』というクエストで、雑魚モンスターと中ボスクラスのモンスターを討伐することによって手に入るのだが、難易度がパーティ前提、更に聖職と前衛職がほぼ必須のためカイはまだとれていなかった。
「どうせ使わないからって私もまだとってなかったのよね。せっかくだから取りに行きましょ」
「ただ、前衛職が確保できますかね……?」
「あ、そう言えばそうね……」
当然ながら同じ目的を持った者同士でパーティを組む。
アイテムの収集は比較的度のプレイヤーも欲しいケースが多く野良パーティでメンバーをそろえるのも簡単だ。
しかし、スキルとなると話は変わってくる。プレイヤーによって欲しいスキルは異なってくるのだ。特に今回の報酬、『ダークショット』は魔法攻撃力依存の魔法攻撃のくせに、攻略に必要な職業は聖職と前衛を張れる職業。どちらも魔法攻撃力依存の魔法など必要としていない。
そのため、どうしても欲しい魔法使い職がフレンドやギルドメンバーと一緒に受ける必要があるというクソクエストである。
「私のギルドメンバーを呼べば一応、受けることはできると思うけど……。魔法職がいないと疑われるわよね。あんまり固有スキルの子とは知られたくないでしょうし」
「そうですね。俺のフレンドがログインしていればいいんですが」
そういってカイはフレンド欄を見る。フレンドはブランとノワール。それにリア友が数人いるばかりだ。丁度夕食時のためか、ほとんどがログインしていない。
「お、リクがいるな。ログイン時間も数分前だし、まだ他のパーティも組んでないだろ」
そう言ってカイはパーティ申請を送ってみる。
30秒もしないうちに、承諾のメッセージとともにワープしてやってくる。
「おっす、久しぶりだな。お前がパーティ申請するなんて」
「ああ、ちょっとな。一緒に受けてほしいクエストがあるんだよ」
呼ばれてきたのはプレイヤーネーム『リク』。カイのリア友であり、ともにこのゲームを始めた友人の一人である。戦士職を選択し、幸運にも早い段階で固有スキルを手に入れることができていた。
そのため、現在は上位プレイヤーが集まるギルド『光の太陽』の一員であり、それこそトッププレイヤーの一人である。
☆☆☆☆☆☆
魔法スキル『アビスレイン』
・ボスモンスター『ワイトキング』を『ホーリーレイン』でとどめを刺す。
《闇属性の中範囲攻撃》
魔法スキル『ダークショット』
・クエスト;闇の使者をクリアする。
《闇属性の弾丸を高速で飛ばす》




