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覇道水泡

ノワールのスキル獲得を見届けたあと、カイたちはしばし達成感に浸っていた。


「いやー、思ったより手強かったな。炎属性でとどめって、なかなか面倒だったぜ」


バロックが肩を回しながら笑う。


「1時間くらい戦っていたよな……。逆に最初にこのスキルを獲得した人は何を考えていたんだ」


『極大衝撃波』を偶然取得したというリクのギルドメンバーを考える。きっと、あのギルドのことだ。

リクにも負けないくらいおかしな奴らなのだろうな、とカイは想像して笑う。


「ところで、『極大衝撃波』ってどんなスキルなんだ? 魔法スキル……だよな。ノワール、ちょっと使ってみてくれないか」

「いいですよ。いったんこのボス専用のフィールドからは抜けましょうか。ここでは他のモンスターもわかないですし」


一旦カイたちは、入ってきた時と同様にほとりのアイコンを触り、一般のフィールドに戻る。

しかし湖の周りでは目立ってしまうとのことで、さらに西のほうへと歩みを進めていった。



「ここらへんでいいんじゃないか?」


カイはほぼマップの端っこまで来た。 フィールドが狭いだけあってすぐにマップの限界までたどり着いたが、流石にモンスターの脇も悪くなっているし他プレイヤーはいない。

ターゲットは適当に沸いていた狼型のモンスターだ。


「では撃ってみますね。『極大衝撃波』!」


ノワールが魔法を放つと、風のようなエフェクトが出たのち、それが狼型のモンスターに当たる。

狼型のモンスターのHPは半分ほど削れ、さらに5メートルほど吹き飛ばされていた。


「なかなかの威力だな。ただ流石にノックバック距離は『魔獣使いの咆哮』とまではいかないか」

「そうですね。ただ、『魔獣使いの咆哮』は明確な対策スキルが登場しましたし、それの代用程度にはなるのかな、って感じですね」

「え。対策スキル出たのか!?」

「あれ、見てないんですか? 私も流れてきただけなのであまり詳細は調べてはないんですけど……」

「これでしょ、そのスキル」


話を聞いていたマリンが横から攻略サイトの画面を見せる。


『不動』

・防御力が100を超えた状態で、ノックバックが発生する攻撃を100回受ける。さらにノックバックによる移動距離が500mを超える。

《わずかに受けるノックバックを減らす。ダメージを受けなかった場合、ノックバックを無効化


『魔獣使いの咆哮』は最大HPの減少効果はあるがダメージはない。そのため、ノックバックは完全に無効化されてしまう。


「まじかー。条件もそこまで厳しくないし上位ギルドは次のイベントまでにそれなりの数をそろえられそうだな」

「ですね……。まあそのスキル、ノックバックもですけどステータス減少効果のほうがえげつないので、おまけ側が弱体化した、程度に考えておけばいいと思いますけど」

「確かにな。前回のイベントでノックバックが目立っていたけど、メインはステータス減少だよな」


カイは納得して頷く。


「では目的のスキルを作りましょうか。カイさん、どうぞ」


そう言ってノワールは獲得した『極大衝撃波』をカイに渡す。


「これで『覇道水泡』がゴミ技だったなんで結果はやめろよな」


バロックが肩をすくめながら言う。

カイは笑いながら魔導書に装備を変えてスキルを発動する。プレイヤーがいない箇所に来たのは都合がいい。このままこの場所でスキルを使う。


「『スキルシンセサイズ』!!」


カイのスキル欄から『極大衝撃波』と『水竜神との契り』が消滅する。

そして新たに『蝦蛄パンチ』が手に入った。


技スキル『蝦蛄パンチ』

・ボスモンスター「暴走するシャコ大王」のレアドロップスキル。

《拳を打ち出して大ダメージ。チャージ5秒。水中にいるとき、チャージ時間10秒。威力200%アップ》


「それは確か中間素材よね。それと前手に入れた『極連水泡』でできるんだっけ?」

「じゃあこのまま作るか。……と一応『蝦蛄パンチ』の使い勝手も確認しておくか」


そういってカイは魔導書を外すと適当なモンスターにめがけて『蝦蛄パンチ』を放つ。

モンスターのHPは2割削れたかどうか程度である。


「溜め時間があるスキルにしては威力は低めかな。水中で使うともっと威力がありそうだけど」

「ちょっと貸してみろ」


バロックが言う。カイは頷いてバロックに『蝦蛄パンチ』を渡す。


「『蝦蛄パンチ』!!」


バロックの一撃は同モンスターのHPを4割ほど削っている。


「ふむ、まあこんなものか。一応俺も素手時の攻撃アップ系のスキルを取っているからもう少し火力が出ると思ったんだが」

「でもこれなら水中ではワンパンできるな。水中戦ではわりかし使えるのかも」

「だな。だが次のイベントはギルド対抗戦。水中戦って発生するのか?」

「確かにそれは……。まあいいやさっさと覇道水泡を作ってしまうか」


カイはそう言ってバロックから『蝦蛄パンチ』を受け取る。

再度魔導書を装備し、『スキルシンセサイズ』を発動する。

MPは枯渇ぎりぎりだったが発動した。前に『極大暗黒弾』を作った際に比べてレベルが上がっているのが大きい。


カイのスキル欄から今度は『蝦蛄パンチ』と『極連水泡』が消滅する。

そしてついにカイのスキル欄に『覇道水泡』が表示される。


技スキル『覇道水泡』

・ボスモンスター「エンペラーフィッシュ」をソロで討伐する。

《巨大な水属性の弾を放つ。極大ダメージ。その後、移動速度30%ダウン。水中だと威力が200%アップ。》


「これが……『覇道水泡』か。効果はかなり強そうだけど……」

「とりあえず試し打ちしてみりゃいいんじゃねえのか」

「それが俺のMPだと撃てないんだよな。バロック、代わりに撃ってくれ」

「あ、ああ。わかった」


バロックはカイから『覇道水泡』を受け取るとモンスターめがけて放つ。

巨大な水泡がバロックの正面に現れる。それが高速で敵めがけて飛んでいったかと思うと、攻撃を受けたモンスターは一瞬にして光となって消えた。それどころか周りにいたほかのモンスターのHPもごっそり削っている。


「これは……凄まじいな。だが連発はできないな。クールタイムが3分ある。それに俺でもMPがほとんどなくなっちまった」


物理の前衛職の中で鍛冶職は鍛冶系のスキルで戦士職や盗賊職と比べてもMPが一番伸びやすい。そのバロックでもMPがぎりぎりということはブランやパルスではMPが足りないだろう。そうなるとこのスキルはバロックが持っていたほうがいい。そう考えたカイはそのままバロックに持ってもらうことを伝える。


「おお、それでいいならありがたくいただくぜ。代わりになんかいい装備作ってやるからな」


こうして無事、『覇道水泡』を手に入れて満足した4人は今日のプレイを終えログアウトした。


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