各ギルドにて
町の中心部にそびえたつ巨大な建物。これは『光の太陽』のギルドハウスである。
ギルドメンバーの最大人数である300人を収容しているその屋敷は堂々たる姿をしている。
「いやはや、しかし優勝者が2人しかいないとはな」
ギルドマスターであるベルンは『光の太陽』の幹部、十数人を集めて会議を行っていた。
「本当にすまん! もっと仲間との意思疎通ができれいれば勝てた試合だった」
真っ先に発言したのは野菜マシマシである。野菜マシマシは仲間がブランに吸われてしまったせいで、負けた。サシであれば野菜マシマシが勝っていただろう。
「俺も油断したのが悪かったな。みすみす仲間を殺され、さらには予想外の方法で負けてしまった。『魔獣使いの咆哮』はブルスターが使っていたのだから、プレイヤーが使えることも考慮しておくべきだった」
「それは厳しいだろ。このゲーム、無限にスキルがあるんだからケアのしようがない」
敗因を分析するリクに野菜マシマシが述べる。他の団員の言い分も聞いてベルンは発言する。
「そんなに謝らなくていいぞ。俺たちはまだまだ強くなれる。それこそ次のイベントでは一位をとるためにな」
「そもそも今回のイベントにサブギルドマスターが俺しか参加できなかったのが少し悪かったかもしれませんね。まあ、イベントの告知が遅かったのが原因でしょうけど」
「確かにそれもあるな。次のイベントについては既に日程も公開されているし、ぜひ、ここにいる幹部たちには参加してもらいたい」
ジョゼ森田の発言にベルンが反応し答えた。
それを聞いたベルンは満足そうに発言を続ける。
「まあとにかく、次のイベントに向けてそれぞれの部隊は、各チームが必要と判断したものを最優先で全員に取らせておけ。イベントに参加できないやつには、スキル獲得を手伝ってもらっておけ。特に、スーナ! お前いい加減、『即死耐性』をとっておけよ。最高の盾が即死してるんじゃ話にならんだろ」
「えー、だって急に殺されて、私のために怒るリク様がみたいんですものー」
「いや、この前のイベントスーナが殺されても特にリクが怒ってる様子はなかったぞ」
「えー、本当ですか。リク様、ぜひ次は私のために切れてくださいね」
そう詰め寄られて、リクは顔を赤らめながら善処するよと伝える。スーナはむふっと満足した様子でリクから離れた。
「それじゃあ今日の会議は解散とする。みんな、頑張るぞ!!」
「「おお!!!」」
ベルンはリクとスーナが手をつなぎながらフィールドに行こうとするの、大丈夫なのか? と不安そうな目で眺めていた。そんなことを考えていると、あ、っと『白と黒の道』のことを調べておいてほしいと伝えるのを忘れていたことを後悔した。
時を同じくして、ここは『闇の魔術団』のギルドである。こちらも300人ものメンバーを収容する巨大なギルドであった。その部屋の一室でギルドマスターであるウインと、ソラが会話をしていた。
「……くそ、まさかウチから優勝者が俺だけしかいないとはな」
「まあ、しょうがないですよね。うちのギルド、社会人や既婚者が多くて参加できない人が半数近くいましたし」
二人は紅茶を飲みながら反省会をする。本来は、サブギルドマスターを全員集めておくべきだが、誰もイベントに参加していなかったうえに、平日の夜であるため皆、集めることができなかった。
「あー、何で負けたんだろうなあ」
「そりゃ、魔法使い職を優先して集めてたからじゃないですか? うちのギルド、上級プレイヤーがほぼ魔法使い職って流石にバランス悪すぎでは?」
「いやー、闇の魔術団がみんな魔法使いってかっこいいじゃない? ……それで集めてたんだけどなあ」
そんな効率の悪い集め方をしないで下さいと、ソラは伝えたのち続ける。
「それに、下位のプレイヤー50人くらいほとんどログインしてないみたいですよ。うちも『光の太陽』みたいに部隊ごとに分けたほうが管理しやすいんじゃないですか?」
「……うーん、確かにそうかもしれないけど、それで堅苦しくなってやめちゃったら元も子もないしなあ」
「じゃあ、もっとサブギルドマスターに報告してもらうとかはどうですか? 実際ログインしていない人は切ったほうがいいでしょう」
「確かにそれはそうかもな……。あ、そう言えばうちのサブギルドマスターの『ぱらら』が、うちのギルドやめるって言ってたっけな」
「言ってたっけな、って何ですか。ちゃんと把握しておいてくださいよ。っていうかサブギルドマスターが抜けるんですか!? いったいどうするつもりなんですか」
うーんとしばらくウインは考えたのち、ぽんと手をたたいて。
「じゃあ、ぱららが抜けたらソラがサブギルドマスターやってくれ。君ならまかせられる」
「ええ!? 本当ですか。いやありがたいですけど僕に務められますかね」
ソラは突然の指名に驚く。ソラ自体、成果は他のプレイヤーよりは上げていた。サブギルドマスターに慣れていなかったのはサブギルドマスターが初期メンバーで構成されていたからだった。
「ソラなら大丈夫。次のイベントに向けて、メンバーの整理と強化、よろしく」
「うえええ。僕一人でですか?」
「ほかのサブギルドマスターに協力してもらいなよ。大丈夫君たちならできる!」
「それならウインさんも手伝ってくださいよ」
ソラはほとんどギルドメンバーに指示を出さないウインに言う。
「俺は恥ずかしいからいい。それに団員に嫌われてるみたいだし」
「いや、嫌われてるんじゃなくて怖がられてるんですよ。前、うちのギルドのプレイヤーが、ウインさんのことを無口で何考えてるのかわからなくて怖いって言ってましたよ。僕と話す時みたいにフランクに話せばいいじゃないですか」
「俺には無理だ。恥ずかしすぎる。それに不気味な団長の方が『闇の魔術団』っぽくていいだろ」
「それはそうかもしれませんけど」
「じゃあとりあえず頼んだぞ」
「わかりましたよ。頑張ります」
「あ、あとそれと」
部屋を出ようとしたソラを呼び止める。
「ついででいいから『白と黒の道』について調べておいてくれ。流石に2人も優勝者を出したのなら本物だろ」
こうして、二人の会議、と言うよりかはただの会話は幕を閉じた。
さてこんどは小さなギルド。『光の栄光団』のギルドハウスである。
「くそくそくそ!! まさかマリンに負けるとは……!!! もういいや、絶対次のイベントでは潰す!」
ピカピカ丸は悔しそうに机をたたく。すると後ろからほかのギルドメンバーがやってくる。
「なんだ! 遅かったじゃないか。今日は19時から会議をするって言っただろう! その後は全員でモンスター討伐だ! わかってるのか!?」
「それなんですが、私たちは今日限りでここのギルドをやめさせてもらいます。これ以上ついていけません」
「僕たちも考えていたのですがこれ以上ゲームに縛られたくないんです」
ピカピカ丸は言葉を失う。
「それでは失礼します。そうそう、ここにいないメンバーも全員、抜けるか引退するって言ってましたよ」
すん、とギルドメンバーが姿を消す。ピカピカ丸は慌てて『光の栄光団』のギルドメンバーを見る。そこにはピカピカ丸と、数人の名前しか載っていなかった。さらに言えば、こうしてチェックしている間にもメンバーは減り続け、残っているのはまだログインしていないメンバーだけとなっていた。
「くそがくそがくそが!!!! もう知るか!! 俺一人で強くなってやるからな!!」
ピカピカ丸の絶叫と憤りは夜遅くまで続いていた。
そして、最後にここは『大空転生』である。今回のイベントを通して、『光の太陽』や『闇の魔術団』に匹敵する実力をつけているのではないかと噂されている大型のギルドである。
「やった! やりましたよ! 私が優勝しました!! これも皆様の協力のおかげです! これからもよろしくお願いします!!」
スカイは皆の前で喜びを伝える。皆も嬉しそうにその様子を見て、そして褒めたたえていた。最近、ギルドに参加した魔法使いの子も嬉しくなってみんなと一緒に褒めたたえる。
「ですが、私たちの戦いはまだ始まったばかりです!! 次のイベントに備えて頑張りましょう! そして『光の太陽』や『闇の魔術団』に負けないよう頑張りましょうね」
「「はい!!!」」
皆の返事が部屋の中でこだました。
こうして各ギルドでは、来たるギルド対抗戦に向けて準備を始めた。特に、有名なギルドは『白と黒の道』に注目を始め、それぞれが対策を練り始めた。




