ブランは強敵と戦う
開始から1時間半ほど経過したころ、カイたちが森で休憩しているとき、バロックやマリンがまだ生存しているとき、ブランは森の中で悩んでいた。
「むむむ……。HPを回復させるか否か……」
ブランの残り体力は2割を切っていた。HPが低ければ低いほど攻撃力が上がる『反攻』と回復すると攻撃上昇効果が切れてしまう『怒り狂う意思』、これらのスキルのことを考えるとHPを回復させない方が効率はいい。とはいえ、このHPでは不意打ちを食らった場合死んでしまうかもしれない。そう考えながらブランはHPポーションを眺める。
「まあ、一応回復させておこうかな。プレイヤーもそこそこ狩って、補正は乗ってるしね」
そう言うとブランはHPポーションを飲み干す。『怒り狂う意思』の攻撃力上昇の効果はなくなってしまったが、すでにプレイヤーを50人以上倒しているブランはとりあえずは大丈夫だろうと無駄にHPを調整することはしない。
ブランは少し休むと、森の中を歩いていく。下手な動き方をするプレイヤーは減っており、ブランも警戒しながら動く。
すると遠くに、一人のプレイヤーが歩いているのが見える。そのプレイヤーは何も警戒することなく歩いていた。
ブランは念のため『見破る』を使う。しかしその周りには誰もいない。
一撃で仕留めようと『一閃』を使用する。その男の後ろに高速で近づいて、一刺し。これで終わるはずだった。男の体力は1、2割削れただけで、致命傷にはならない。
「かかったな!」
男が手をたたくと、男が来ていた鎧が光る。そして、大量の炎属性の弾がブランの体を襲う。ブランは何とか数発躱すが、すべてはよけきれず体力は一気に5割ほど削られてしまった。
ブランの攻撃が入らなかったのは男の体力が高いというのもあったが、そもそも『怒り狂う意思』や『斬斬舞』の効果が発動していないと、ブランの攻撃力はそこそこである。そしてその男は、プレイヤーをそれなりの数倒しており、ステータスに補正がかかっていた。
「ほう、今の攻撃を躱すか……ってお前、ブランかよ!!」
「え、私のことを知ってるんですか!?」
「知ってるというか、今じゃ上位プレイヤーの間だと結構な有名人だぞ」
「え、そうなんですか! 照れますね」
二人は軽く会話をする。とはいえ敵同士、攻撃の間合いは測り続ける。
「俺は野菜マシマシってもんだ。優勝するにはどうやらあんたを倒さないといけないみたいだな」
「えー、私そんなに意識される存在なんですか? でもまあ、負けませんよ」
「『一閃』!」
ブランは高速で間合いを詰める。野菜マシマシもそれくらいの攻撃は見切れると、右手に持った剣でブランを斬りつける。ブランはその攻撃を受けすかさず後ろに下がる。
ブランのHPが3割を切る。『反攻』の効果はHPが低ければそれだけで発動しているが、『怒り狂う意思』は攻撃を受けた回数である。そのため一度にHPを削られてはほとんど意味がない。
ブランは一旦距離をとってHPポーションを飲む。当然その隙に野菜マシマシが攻撃をしてくる。ただし、お互いに攻撃は近接攻撃がメイン。それぞれがそれぞれ回復する隙はある。
ブランはHPが回復したのを確認すると、『斬斬舞』を放つ。野菜マシマシはその攻撃を紙一重でかわす。『斬斬舞』は他の連続攻撃と違って、攻撃が外れるとそこで終わってしまう。しかし、そんなことを知らない野菜マシマシは二発目以降に警戒して、一旦距離をとる。
「それが、ブルスターを削りきったっていう技か……当たらないように気を付けないとな」
「お兄さん、結構回避性能高いですね」
「ふふふ、ありがとうな」
ブランは少し焦る。『斬斬舞』が当たってくれないと攻撃力をあげることができない。相手の攻撃をかすらせてちょっとずつHPを削ってもらうと言うのも一つの手ではあるが、プレイヤー相手にやったことはない。パターン化できるモンスターと違って、考えて攻撃してくるプレイヤー相手にそんなことができるほどブランも上手くない。
「それでもやってみようかな……」
ブランは行動に移る。短剣を構え、野菜マシマシに突っ込む。さらにここで『怒り狂う意思』の弱い点が刺さる。このスキル、攻撃時にダメージを受けなければならない。つまり、相手の攻撃をかすらせるというのが目的でもこちらから攻撃をしていなければならないのである。
「『二連撃』!『剣の舞』!」
ブランは踏み込んで攻撃を繰り出す。野菜マシマシに数発は当たるが、盾で防御されたり、普通にかわされたりする。そして、反撃がブランの体に刺さる。攻撃をうまくかすらせるのは難しく、HPは一気に6割削られる。ブランはたまらず、一気に距離をとる。しかし、今度は野菜マシマシも逃さない。
「『火炎拳』!」
盾を持っている手が発火するとそのまま、炎をまとった盾でブランを殴る。ブランの体が吹き飛ばされて、木にぶつかる。HPは残りわずかである。
ブランは立ち上がると一か八か、『獄炎の一撃』を放つ。その炎の刃は、野菜マシマシの盾にぶち当たる。野菜マシマシの体力は一気に5割削られたが、それだけだった。
「はあ……はあ……盾をしていてもこの威力か。やはり『獄炎の一撃』は強いな」
野菜マシマシは念のためにHPポーションを飲む。その隙にブランも同じようにして回復する。
「これは、うかつに近づけないね……。どうしようかな」
再び二人がにらみ合う。すると、茂みからがさっと二人のプレイヤーが出てきた。
「あれ、野菜さん。戦闘中ですか? それが終わったら鎧見せてくださいよ、また罠仕掛けないといけないんで」
「ばか! 今話しかけたら迷惑でしょ! いったん離れておくわよ!」
これごときで野菜マシマシの集中力が切れたりはしない。しかし、その二人は、どうにかして攻撃力をあげたいプレイヤーの目に留まる。
「『一閃』!」
「おい! 何考えてんだ!」
野菜マシマシが叫ぶが遅い。ブランは一閃でその二人に近づくと、一刺しする。ダメージはあまり多くない。どうやら防御魔法を使っているようだった。これは好都合だと考え、あっけにとられる二人に対して『斬斬舞』を放つ。
二人は『光の太陽』のメンバーである。そのため素の防御力もそこそこ高い。数多くの斬撃が二人を襲う。後衛職ゆえにか防御も反撃もままならない二人をブランは切り刻み、光に変える。
「てめえ! 俺に敵わないからって、腹いせに仲間を殺しったっていうのか!?」
「そうじゃない、そうじゃないですよ。ごめんなさい。でもこれであなたに勝てますから」
そう言うと、ブランは構える。そして再び、『獄炎の一撃』を放つ。
なんだ、結局それか。と野菜マシマシは盾でその攻撃を防御する。しかしその一撃はつい先ほどのとは異なっていた。二人のおかげでほぼ50発マックスまで『斬斬舞』を使えていたブランの攻撃力は桁が違う。その攻撃は野菜マシマシの盾を破壊すると、そのまま本体の体力も一瞬で削りきってしまった。
「ふう……。よし! やったね。強敵を倒した!」
流石に疲れたと、ブランは腰を下ろす。が、ブランの頭めがけて矢が飛んでくる。ブランははっと、盾でその矢をはじくと慌てて立ち上がる。
どうやら、野菜マシマシと戦っている間にプレイヤーが集まってしまっていたようだ。そのプレイヤーたちはそれぞれ数人でチームを組んでいる状態であった。生き残っていれば好成績を収められるこのイベントでは、ブランのような強い相手は逃げるのが最適解であるが、弱っている様子のブランにチャンスだと、それぞれプレイヤーが襲い掛かる。
ブランは全集中力を込めて、その攻撃を躱しながら、攻撃を繰り出す。『獄炎の一撃』を2発放った関係で
MPはもうほとんどない。幸い、このイベントは協力といってもパーティが組めているわけではない。当然仲間の攻撃も当たってしまう。ブランはそれを利用して頭数を減らす。数分間戦い続けると、簡単なスキルを放つくらいのMPはたまる。そうしたら、攻撃を繰り返してプレイヤーをどんどんと狩っていく。囲まれていた状況を完全に打破すると、ブランは急いでその場を離れた。
HPを回復させるとむしろ不利になることが多いと感じたブランは回復しないまま、道中のプレイヤーを狩っていく。途中、何度か集団に囲まれたりしたが、攻撃力が上がっているブランにとって障害でもなんでもなかった。
ブランは、流石に休みたいなと思いながら、マップの中心部へと走っていった。
残り時間は30分を切ろうとしていた。
☆☆☆☆☆☆
技スキル『火炎拳』
・スキルクエストをクリアする
《燃える拳で攻撃》




