マップの中心へ
「俺が強いって言っても、そこそこだぞ。上位プレイヤーと比べたらあまりに弱すぎる」
「別にいいんだよー。それに、僕としては死ぬよりはましだしねー」
カイとミナミは森をかけながら、会話をする。
カイとミナミがいたのはマップの端の方であった。一時間経過すると、マップが縮み始める。取り残されたら、死。そのため二人は中心に向かって走っていた。
途中何人かと出くわしたが、何とか撃破していた。
「なんか人多くないか? こんなもんなのかな」
「そうだねー。もしかしたら要所要所で人が多くスポーンした場所があるのかもねー」
やがて、森を抜けると、草原にでた。遠く南には大きな山がそびえたっており、あそこを超えることは厳しそうであった。
「どうする? このまま中心めがけて東に走り続けてもいいけど、人多そうだよな」
「うーん、じゃあこれかな。ほい、透明化のポーションだよ。走ると音とかでばれやすくなるけど歩いているとまず見つからないかなー。普通なら」
「透明化のポーション!? 聞いたことなかったな。レアドロップか?」
「んにゃ、僕が作った。ちなみにその腕輪もだよ」
カイは驚きながらそれを受け取り飲み干すと、カイの姿が見えなくなる。
「ミナミは飲まなくていいのか?」
「僕はもう透明になってるからー」
「あ、そういえばそうか」
カイはミナミに『見破る』を使用しているため姿が確認できている。
「あれ、でもそうなったらこんどはお前が俺をみえてないんじゃないのか?」
「ふふふ、大丈夫だよー。僕はいくらでも見えるようにできるから」
そう言うと、バッグから別のポーションを取り出す。ミナミが取り出したのは『視認のポーション』。消えている人を確認できるようになるポーションである。
「さて、じゃあ後はゆっくりと中心に向かおうー」
「おう!」
二人は、遠くで戦っている人たちを横目に、中心部へと向かって歩いていった。
やがて、草原が終わると荒野となった。岩がごつごつして死角になるところはいくらかあるが、より見通しは良くなっていた。
「この場所じゃああまり透明化の意味はないな」
カイは後ろを振り返る。そこには二人分の足跡がくっきりとついていた。
「みたいだねー。ここなら見通しがいいし、一旦休むのもありだよ」
二人は岩の影に隠れるように腰を掛ける。
イベントが始まって一時間が経過していた。フィールドはじわじわと小さくなっている。どうやらプレイヤー数も減ってきているようだった。
「ちなみにカイはどれくらいを目指すつもりー? やっぱりやるからには1位?」
「いや、俺としては賞品がでる100位以内に入れたらいいかなって思ってる」
「ふーん。それでもやる気あるねー。僕はもういいかなって思ってるけど」
「いや頑張ってくれよ。お前が死んだら俺も死んじゃうだろうが」
「ふふふ、冗談冗談。まあ、頑張ろうねー」
10分くらい二人は休みながら雑談をしていた。そして、出発しようと立ち上がったとき、矢がミナミを貫く。カイたちのHPは半分を切っていた。
「ちぃ! 仕留めたと思ってたんだがな! HP高いな。 こんなところでデートですかい? おい!」
少し離れた岩の上に、一人の男が立っていた。そして気づくと、周りには10人ほどのプレイヤーがカイたちを囲んでいた。
「放て!」
男の指示で周りを囲んでいたプレイヤーが魔法をそれぞれ放ってくる。カイは『マジックバリア』を正面に貼る。しかし他の方向の防御はできない。
「よっと。マジックボール」
ミナミはポケットに入っていたボールを取り出すと、光の球体が二人を包む。放たれた魔法はそれに吸収されて消えていった。
「な、なんだそれ」
「んー。これはマジックボール。低威力の魔法なら全部吸収しちゃう優れものだよ。一度に一つしか持てないけど。あっ、崩れちゃった」
ミナミが説明している間にそのボールは黒ずんだと思ったらさらさらと消えていった。
魔法を放った人たちは戸惑う。しかし、すぐに再び魔法を唱えようと構える。
「あー、仕方ない。ミナミ、俺にしっかりつかまっておけ!」
「うーん、あ、はい。わかったよ」
そう言うと、ミナミは金色に光る鎖を取り出すと、俺の腕につけた。
「『魔獣使いの咆哮』!」
それを放った瞬間、周りを取り囲んでいたプレイヤーは彼方へ飛ばされる。極大ノックバックは伊達ではない。遠くに豆粒のように見えるだけである。
そして、その攻撃は当然ミナミにもあたる。カイは自身のHPが1割ほど減っていることを確認する。ダメージは入っていないが、最大HPが減少しているのだ。
「おー。すごいねそのスキル」
「とりあえず、逃げるぞ。敵はバラバラにした。1対1なら何とかなるはずだ」
そう言うと、カイは魔法使いに指示をしていた男のもとへと走る。攻撃手段は弓のようだが、この『魔獣使いの咆哮』によって、装備品を落としていた。
「な、くそお!」
男は必死で抵抗するが、カイの攻撃が入るのが早い。『剣の舞』によってHPを0にする。すると、その仲間であろう魔法使いが2人来たが、まとめて『フレイムブレス』で一掃した。
「ふう、もうしばらく東へ進むと、再び森に入る。あそこで透明化のポーションを飲んで休憩しよう」
「そうだねー」
二人は森に向かって走る。倒した男の仲間も追いかけているようだったが、森の中に入ってしまえばもう見つけることができない。二人はほっとして透明化のポーションを飲むと、カイたちを探すプレイヤーをこっそりと狩り続けた。
「結構みんな『見破る』を持ってないもんだな」
「まあ、レアモンスターの討伐だからねー。本当に上位陣しか持ってないんじゃないのー?」
透明になるモンスターはあまりいない。そのためやはり『見破る』の優先度は低い。それこそ最高位レイドモンスターに挑戦したプレイヤーくらいだろう。
「もうすぐ半分を切るねー。プレイヤーはあとどれくらいいるんだろうねー」
「そうだな、プレイヤーも半分くらいじゃないか? フィールドも縮まってきてるし。俺たちは何とか中心の方に来ることができたが」
「しかし、お前のおかげで、こうやって楽に休めるんだから助かるよ」
「ふふふ、崇め奉れー。なんてね」
カイは笑いながら自身のステータス画面を見る。そこには+24%と書かれていた。
「もう24人も討伐したのか。さっきの奴らを狩れたのは大きかったかな」
「どうする? このまま狩り続けるー?」
「いや、もういいだろ。このまま隠れていても100位以内は入れそうだし、あとはじっとしておくよ」
「確かにそれがいいかもねー」
話に夢中な二人のもとにゆっくりと『見破る』を覚えたプレイヤーが近づいていることに直前まで気づくことはなかった。




