第二回イベント開始
日曜日、予告されていた通りバトルロワイアルが開かれる。
イベント開始とともに、プレイヤーは専用のフィールドに飛ばされる。周りは木に囲まれていて見通しは悪い。
「誰か、ギルドメンバーは同じグループに入ってないかな……お、ノワールがいるな」
カイは参加者を見ると、ギルドメンバーがいることに安心する。なるべく同じギルドメンバーは同じグループにならないように設定されているようだが、カイは運がよかった。
実際、カイとノワールがBグループ、ブランはC、バロックがD、マリンがFに飛ばされていた。
このルールで共闘は禁止されていない、というか規制するすべがない。一応、フレンドや同ギルドメンバーはなるべく遠くにスポーンするようになっているが。
また、グループはさらにレベルごとに分かれていた。15レベル未満、15~35レベル、それ以上である。『光と闇の道』のメンバーは全員30レベルを超えているため、最も上のグループである。
15レベル未満は8グループ、15~30レベルは13グループ、33以上は6グループに分かれていた。
カウントダウンが始まる。カイは気を引き締める。フィールドには1000人近いプレイヤーがいる。気を抜いたらいつやられるかわからない。このイベント中、簡単に死なないように全プレイヤーの防御力と魔法防御力に1.5倍の補正がかかっているが、高火力相手にはあまり意味をなさない。カイは呼吸を整える。
そして今、イベント開始のアラームが鳴った。
カイはまず、『探知』を使って近くのプレイヤーを把握する。数人のプレイヤーがマップにプレイヤーが一瞬表示される。当然、向こう側も『探知』を使っているだろう。カイとしては逃げる予定だったが、一人のプレイヤーに捉えられてしまう。
「ちっ! 仕方ないな」
カイは武器を構える。カイの速さでは追い付かれるのが分かりきっているからだ。
茂みからがさっと音がすると、軽い服装をした男が現れた。
「はあ、はあ……よろしく頼む!」
その男は礼儀正しく挨拶をすると、短剣を構えてカイを襲う。カイはその攻撃を間一髪でかわすと、バインドを入れる。その一撃で男は動けなくなってしまった。
「な、なんだ。束縛耐性を入れてないのか?」
そこからカイは男をめった刺しにする。防御力もあまり高くなく、男は光となって消えていった。
「バインドが入るのは運がよかったな……」
拘束耐性は耐性の部類の中でも優先度が低い。というのもバインド攻撃を仕掛けてくる敵がほかの状態異常に比べて少ないのだ。対人戦がほとんどなかったこのゲームでの優先度は低くなっている。
と、安心してその場に立ち止まっているととうぜんほかのプレイヤーに嗅ぎつけられる。気づくと3人ほどのプレイヤーが現れていた。
4人はそれぞれにらみあう。全員敵同士のようだ。隙を見せてプレイヤーに攻撃してしまうと別のプレイヤーに殺されてしまう。そう考えるとうかつに動けない。
最初に動いたのはカイだった。構えると、『フレイムブレス』を放つ。他の強力な魔法スキルと比べると、打つまでのための時間がほとんどない。カイとしてはあまり早々に使いたくなかったが、さっさとけりをつけてもう一発撃てるようになった方が良いと判断した。
『フレイムブレス』は3人の虚を突いたようで、誰も回避できない。
「な、これは飛翔するドラゴンの……ぐああ」
「えっ、きゃああああ」
「『炎耐性Ⅲ』をもってすれば……うおおお……! く、くそおおお」
誰も耐えることができず、光となって消えていく。カイのステータス画面には+4%と書いてあった。
ふう、と息をつくと背後からすっと少しだけ足音が聞こえた。カイは慌てて振り返るが誰もいない。
逃げたのかと思ったが念のため、『見破る』を使う。すると、一人の少女が禍々しいオーラを放つ短剣を構えてゆっくりと近づいていた。
「うおおおお!? 『バインド』!」
カイは慌ててバインドを打つ。少女はえっ!と驚いた様子で捕まった。
「あれー? 何で見えてるのー、まあいいや、そいっと」
彼女の拘束はすぐに解けた。どうやら『拘束耐性』を所持しているようだ。
カイはその様子をみてすぐに武器を構える。しょっぱなから攻撃しておくべきだったと後悔しながら彼女を睨む。
「まあまあ、待ってよ。君結構強いみたいだし、どう? せっかくなら協力しない?」
「協力? 共闘するってことか。……いや、流石に無理だ。信用できない」
「ふふふ、じゃあこれでどう?」
そう言うと、少女はカイに向けて何かを投げてきた、構えていたとはいえとっさのことでカイは躱すことができない。カションと音がしたかと思うとカイの腕には見たことのない腕輪がついていた。
「どう? HPを見てごらん」
カイは彼女に警戒しながらも言われた通り、HPを見る。するとそのHPは倍以上に増加していた。
「ほら、強化してあげたよ。これで信用してくれる?」
「いやいや、そんなに簡単に信用できるか。このアイテムだって何のデメリットもなくHPがこんなに増えるとは思わない」
「もー。しょうがないな」
そう言うと、彼女はポケットから小さな爆弾を取り出す。カイは結局戦うのかと彼女と距離をとる。腕輪を投げていた様子を見ても投擲能力が高い。距離を稼がないと、躱すことができないと考えた。
彼女はふふふ、と不気味に笑うとボンっと爆弾をその場で爆発させてしまった。
「えええええええ!!!??」
カイは驚いて、彼女に駆け寄る。うかつではあったが、それよりも驚きが隠せずついこういった行動に出てしまった。
彼女はすっと立ち上がると、カイに向かって言う。
「大丈夫だよ、そんなに威力の高い爆弾じゃないしー。それよりもほら、もう一回HPを見てごらん?」
カイは言われた通りHPを見る。するとその体力はダメージを受けたように減っていた。
「ほらこれで協力できるねー。君がつけた腕輪は僕にもつけてあって、二人の体力を共有するんだよ。つまり、僕が死んだら君も死ぬし、君が死んだら僕も死ぬ。よろしくね」
「えっ、ちょっと、マジかよ」
ミナミと名乗る彼女はにやにやわらいながらカイを眺めていた。




