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遥かな園へ―

一部書き直しました

【父と母と恋人をバラバラにして殺した。当時22歳の男性に死刑判決が下る】


このニュースがテロップでながれたのが、今から4年前の秋の事だった。

そうして、その8年後の春に彼の死刑が執行された。

だが、彼は死刑執行日までの1週間を特別処置で牢獄の外で暮らすことを許される。

これは、その彼の1週間について綴った物語である。


                              by Natuki Komina




この青空の下、周りの白やらガラスやらのビル達から明らかに異質な存在感を放っている黒い門がある。

その門の前に、2人の男が立っていた。

一人は長身で、スーツをビシッと決めて髪をオールバックにしたいかにも偉そうなおっさんが一人。

もう一人はやつれた体で、髪はボサボサでジャージを着て右手に義手を嵌めていかにも怪しい男だった。


「では、今から1週間。お前に与えられた最後の時間を楽しむがいい」


この男。小熊おぐま 鷹通たかみちは、長年俺の弁護士として頑張ってくれたおっさんだ。


「分かってますよ……そんな事は」


俺は田熊が渡してきたワッペンと紙袋を受け取って、背を向けて歩き出す。

にしてもこの紙袋意外と思いな などと呑気な事を思う。


「おい、基樹。お前の死刑判決を覆せれなかった私に、何か言っておきたいことは無いのか?」


それは、寡黙な田熊が初めて言った無駄口だった。

俺は左手を上げて、振り返らずに言う。


「ありがとう」


俺はそのまま振り返らずに歩いていった。



公園のトイレでまともな服装に着替えると、紙袋の中に入ってたパンで腹ごしらえを済ます。

そして電車を乗り継ぎ、海風の薫る故郷に戻ってきた。


「10年たっても、何も変わってねぇんだなこの村は」


俺はどこか、自分の心が安らいでいくのを感じる。


「さて、まずは宿を探さなきゃいけねぇわけか……」


自分の故郷に自分の家が無いってのは、少しだけ憂鬱な気分になる。

港で漁師のおじさんに宿の場所を聞き、宿につけたのが夜の7時だった。


「どうしてこんな山の中にしか宿が無いんだ? たっくこの村はよ……」


山を登り降りして、ようやくついた宿は2階建ての旅館だった。

引き戸を開けて中に入ると、こじんまりとした旅館の中では、1人の女性と老婆がモップを使って掃除をしているところであった。


「おや、こんな時間にお客さんかい? 狸が化けて出てきたんじゃないかねぇ」

「こら、おばさん。そんな事いっちゃ駄目じゃないですか!」


女性がモップを床に置き、急いでこちらに向かってくる。


「ようこそ、旅館【忍び屋】へ。お部屋にお連れしますので荷物をこちらへ」


そのとき視線が重なり、初めて女性と顔を合わす。

仕事柄なのか髪はショートカットで、ほんの少し長い前髪の奥のパッチリと開かれた目が彼女の若々しさを醸し出している。

久々に見た若い女性に見惚れていたためか、つい長時間見てしまっていた。

すると女性は顔を真っ赤にして、地面に目線を持っていった。

その仕草が俺の中の懐かしい風景と被り、少しこしょばい。

ずっとそうしてる訳にもいかないので俺が女性に荷物を預けると、2階の南側の部屋に案内してくれた。


「食事は朝は8:00夜は19:30からとなっていますので、遅れないようにお願いします」


などなど業務的な言葉を聞き終わったのが、それから1時間後のことであった。

女性の名前は、金岡かねおか 菜月なつきという事が、胸につけられていたネームプレートから分かった。



暇になった俺は紙袋の中を漁り、ワッペンと何枚かの書類に目を通す。

書類にはワッペンの事と死刑の執行時刻などなどが書かれていて、俺はざっと読むとそれを机の上に放り出した。

そして、ワッペンを右肩に縫いとめる作業に移る。

廊下の電気が消え、桜の匂いがよりいっそ強くなってきた頃に、ワッペンを縫いとめる作業が終了した。


疲れがかなり溜まっていたからだろうか、視界がぼんやりと霞みはじめる。

俺は机の上に放り出した書類の事を忘れて、力が抜けたように眠りについた。


「ねぇ、起きてよ基樹」

誰かの声につられて、俺はぼんやりと目を開ける。

「久しぶりだね、基樹。って、私のこと覚えてる?」

徐々に視界のブレがなくなり、その輪郭をはっきりと捉えた。

「そんなわけ、ないだろ」

俺が自分の手で殺してしまった人を、忘れることなんて出来るかよ……。

「そう、よかった。だったら、私はまだ生きてられるね」

それはどういう意味? と聞こうとしたが突如視界が急激にブレ始めて、優奈の姿が捉えられなくなった。


翌朝、俺は女性の声で目を覚ました。

かなり近い位置に、人の顔らしき輪郭が薄っすらと見える。


「早く起きないと、朝ご飯が冷めちゃいますよ」

「…んっ……ゆ…な…!?」


俺の寝ぼけていた頭が一瞬で目覚める。

先までのは、夢だったのかと肩を落とす。

しまった! 机の上の書類を片づけるのを忘れてた――いやいや、それよりも。


「あっ、やっと起きてくれました」


なんだこの、昨晩と今朝での菜月さんの態度の変わり方は?

昨日会ったばかりなのに、馴れ馴れしすぎるというか。


「あの、あなたは菜月さんですよね?」


俺は、恐る恐る聞いてみる。

そこで初めて、菜月さんは自分のしている事に気づいたようだ。

慌てて立ち上がり、冷静さを取り戻そうとしてる。


「朝食の準備が出来ましたので、下におりてきてください」


どうやら菜月さんはさっきの事を忘れたいみたいだ。

なら俺もと表面上は忘れた振りをするが、心臓の鼓動だけは嘘をつけなかった。



そうして――


「化け狸に食わせる飯なんぞないわぁ!」

「うっせぇ! ちゃんと金払ってるんだから食わせろよ!」


箸と箸をぶつけ合い、只一つの衣を纏った豚を狩るための争いが巻き起こっていた。

左手と右手の義手を駆使して果敢に挑んだが、負けてしまった。


「まぁまぁ、落ち着いてください。おばさんも久しぶりの客人だからって、そんなにはしゃがないで下さいよ」

「俺の豚カツ返せよ! 今すぐ返せよ!」

「化け狸がぼぉーと真理を見て、豚カツに手を出さないらいかんのじゃ! それに、ババァの胃液がどろどろにかかった豚カツを化け狸は食えるのかぁ?」

「やめろ、想像しちまったじゃねぇか! それに俺は化け狸じゃねぇ! 俺は――」

「ほぉ? 俺には、何じゃぁ?」

「いや、そうさ、俺は化け狸じゃ!ぽんぽこぽんのぽん!」

「「………」」


一瞬で静けさが戻ってきたが、何か嫌な空気になっていた。

自分の名前を危うく言いかけたのを堪えたまではよかったが、流石に今のは自分でも引く。


「おばさんの豚カツって、本当においしいですね」

「自家製の豚カツソースを使っているからのぉ」


二人は何も無かったかのように、朝食を片付けていく。その音が余計に俺の心を苦しめていく。

その後、菜月さんに作ってもらった豚カツを食べて部屋に戻る。

そのあと財布と携帯を持って外に出たところで、黒い服を着た菜月さんと会った。


「菜月さんも出かけるのか?」

「えぇ、今日は少し用事がありますので」


その表情には少しの翳りと、光があった。


「じゃあ、途中まで一緒にいかないか?」

「そうですね。私も一人よりかは二人のほうが楽しいですし」


俺は道中色々な事を菜月さんから聞いて、10年たってもこの村が何も変わってないことを実感した。



「では、私はこちらなので」

「あぁ、またな」


俺は菜月さんと別れて狭い路地を通り、途中色々な花をとり、長い坂道を上って大きな家の門の前に立つ。

そこは、今から10年前俺が3人……いや、1人の尊い人間を殺してしまった場所だ。

しばらくの間昔を懐かしむように目を閉じ、荒れ果てた庭に今もなお咲き続ける桜が散っていくのを眺めていた。


その後俺は荒れ果てた庭に忍び込み、昔花壇があった場所の草むしりを始める。

道中かき集めた花を、1本1本土を掘りさしていく。

花壇が虹のように美しく映えた場所に、次は落ちた桜を塗していく。

そうして俺が生まれてから見た中で、一番美しい景色を暫らく眺めて、懐から取り出したライターで燃やした。


それは、美しい景色を一瞬で包み込み天へと昇っていく。

数多の色は、紅蓮の炎に包まれていく。


「ハハ、あははははははあははははははははは!!!!!!!!」


俺は笑いが止まらなかった。

ほんの数分前まで、数多の色が散らばっていた花壇は灰色一色で埋まっていた。

それが、俺の人生を表しているようで非常に滑稽だった。

こんなにも、こんなにも意味の無いものだったのかと……。


俺は、そのままどう歩いたかも分からない。

旅館の前で、菜月さんに呼び止められてここが旅館だと気づいた。


「どうしたんですか? そんなにやつれた顔をして」

「いや、大丈夫です。今日は晩御飯いらないんで休ましてください」


俺はそのまま自分の部屋へと戻り、畳の上に寝っころがる。

それから、荷物をまとめてここを出て行く準備を始める。


あれ、書類が濡れている? どうしてだろう……? ま、いっか。


朝までのテンションはどこへやら、俺はすっかり意気消沈して、書類を纏め上げて荷物の中に突っ込む。

そのとき、トントンと音がして「入っていいですか?」と声がして、菜月さんが部屋に入ってきた。


「もう、出て行かれるのですか?」

「ええ、元々この村によったのは、ある目的があったからなんですよ」

「それは……小波こみな 優奈ゆなに関わる事ですか?」

俺は一瞬驚いたが、まぁ当たり前かと思い直した。

「菜月さん、気づいてたんですね。俺のこと……」


俺は少しだけホッとした。それがどうしてかは分からないが……。


「だったら、少しだけ私の相談に乗っていただけないでしょうか?」

「あぁ、俺なんかでよければ」

「私、殺したい人がいるんです。だから、そのことで相談にのって貰えないでしょうか?」


俺が何も言えずに唖然としていると、菜月さんはポツポツと喋りはじめた。


「私には仲のいい姉と、仕事が忙しくて中々帰ってこないけど優しい父と子供が大好きな母がいました。

母はこの村で保育園を開いてたから、知ってるかもしれませんね」


そこで、菜月さんは少し顔を背けてまた喋りだした。


「でもある日、私の姉が殺されました。初め、私達家族は理解が出来ませんでした。だって、姉は大好きな彼氏のとこへ行って殺されたんですよ?

理解が出来ますか? だから、これは夢なんだと思いました。

だったら、もうやめよう……こんな苦しい世界からは、いなくなろうと……それでですね、家族皆で海へドライブに行ったんですよ。

もちろん、父と母が何かをするつもりだということは気づいていました。でも海の中へと沈んだ車から見つかったのは、父と母だけでした」


俺は途中で気づいてしまった。

それが、誰の事を言ってるのか。

金岡さんが誰を憎み、誰を殺したいか。

だから菜月さんが俺の首に伸ばしてきた腕を、振り払う事など出来なかった。


「凄いですよね、私がこのまま締め上げただけで片柴さんは死ぬんですよ。こんなにも簡単なんですよ。人を…殺すぅってのはぁ…うぅ、あぁ、うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


菜月さんは泣きながら俺の首を強めに締め上げて、次の瞬間彼女の口が俺の口を塞いでいた。


「でも、私は、彼を憎めなかったんです! だって、だって、私はお姉ちゃんと同じ人を好きになってしまったんですから! 

皆死んじゃったのに、その人は生きてるんですよ……だったら、その人を想うのは、罪なんですか!? 

私は、私が許せなくて! こんな自分を殺したくて! でも、怖くて出来ないんです。だから、ずっと待ってたんだよぉ、片柴君」


俺はただ黙って、彼女の告白を聞いていた。

そうして、残酷に彼女を突き放す。

彼女と俺とではこれから住む世界が違う、俺はもう帰ってこれないのだ。

だから、彼女をここで突き放す。


「それじゃ、俺はもう行くから……」


俺は罪悪感だけを抱えて、部屋を出て旅館を後にした。

必要じゃなくなった紙袋と携帯だけを置いて……。




私は、どれくらい泣いていただろう……。

さっきまで熱かった唇は乾いていた。

それでも涙が止まらなくて、胸が痛かった。


その日から私は疲れからか熱をだして、しばらく寝込んでいた。

片柴君が残していった携帯には、お姉ちゃんの写真は無かった。

そうして、メールの未送信BOXには私に向けたメッセージが1件だけ入ってて『4日後の夜、海岸にて待ってる』とだけ書いてあった。


そうして、私が寝込んで4日目の朝その電話はかかってきた。


「もしもし、小熊だが、ん……基樹ではないな?」

「あの、この電話は現在片柴君から預かっていて……」


誰か知らないが、私はその男の声に聞き覚えがあった。

それは、とっても昔に聞いた懐かしい声……。


「あなたはもしかして、片柴君のお父さんじゃないですか?」


男はしばらく黙ったままだったが、静かに口を開いた。


「あぁ、そうだ。私は片柴 基樹の元父親の吾郎だ」


男は寂しそうにそう言った。


「どうして、吾郎さんは…その、殺されたんじゃ……」

「違う。あいつが殺したのは、再婚した父のほうだ。ただ、世間では私のほうが殺された事になっているだけだ」

「じゃ、片柴君は当時精神崩壊の可能性は……!」

「あぁ、あった。あいつの右腕が義手なのは、家庭環境に馴染めずに自殺しようとしたときの怪我なんだよ。奴は再婚した父と母から酷い虐待を受けていてね」

「だったら、どうして」

「基樹は、狂いすぎたのだ。あいつは、的確に死体を処理してしまった。そこで、負けたのだ」

「じゃ、やっぱり、死刑判決はもう覆せないのですか?」

「あぁ、そいつは無理だ。だが、望むかたちにはできる」


私は携帯を強く握り締めた。


「どうやって、ですか?」

「死刑囚の責任は全て弁護士に任される。あいつの弁護士は俺だ。つまり、全ては俺の責任になるってわけだ」

「吾郎さんは、どうするつもりですか?」


電話の向こうで、男が微かに笑った気がした。


「私が、基樹を殺す」


私の手から、携帯電話が抜け落ちた。そうして、もう一度握りなおす。


「だが、君にチャンスをやろう。そこに、紙袋はあるか?」

「えぇ、あります」

「それを縦に裂いてみろ、そこに100枚×10万の小切手を入れておいた」


私は言われたとおりに、裂いてみた。すると沢山の小切手が、宙を舞い畳の上に落ちていった。


「その小切手を使って、基樹とともに海外に逃げればいい。すでに、その村の漁港に船を止めてある」

そこで彼は少し間を開けて、静かに言葉に現した。

「今日の21:00までに結論をだすといい」


そう言い残して電話は切れた。

私は急いで小切手をかき集めて、10枚くらいの束にまとめて机の上に置いた。

次に、自分の部屋に行き荷物を纏めて玄関において置く。

そうして、私は片柴君との約束の時間まで悩み続けた。



春といえ、夜の海岸は強い風が吹いていてとても寒かった。


「やっぱり、コートくらい買っておくべきだったか。いや、もう金はないから無理か」


俺は時計を見ながら、菜月を待っていた。

約束の時間から30分ほどたったとき、菜月はやってきた。


「久しぶりだね、片柴君。今まで何をしてたの?」


俺がいなくなった数日に何があったのか、菜月は少しやつれていた。


「ちょっと、探しものをしていた。菜月こそ大丈夫か?」

「うん、大丈夫だよ」


菜月がふらふらと寄ってきて、俺の腰に手をまわして地面に膝をつけて泣き出した。


「私、やっぱり選べない。片柴君と別れるのも。片柴君と海外に行くのも出来ない! でも、片柴君とは別れたくないんだよ!」

「それは、出来ない。俺はちゃんと償わないといけないんだ」

「どうして! 死んでるんだよ! 皆、死んでるのに、どうしてそのために片柴君が死ななくちゃいけないの!」

「俺は、他人の人生を奪ったんだ。だったら、俺の人生も捨てなくちゃならない」

「ずっと、ずっと、好きだったんだよぉ! 私、ずっと、待ってたのに! それなのに――」


俺は菜月の視線に目を合わせる。

そうして、顎を軽く持ち上げ真理の涙で濡れた口元を覆い口付けを交わした。


「さよなら」


俺は、村を去った。



東京についたころには、太陽はちょうど真上に昇っていた。


「さて、じゃ行くか!」


俺は1週間前に去った門の前に立って、左手を太陽にかざして薬指にはめている物をうつす。

銀色に輝くそれを握り、俺は門をくぐり俺は死へと歩みいく。

だが、建物の前にいる男によってその歩みは止められた。

見ると、薄茶色のコートを着た男がそこに立っている。


「意外と似合ってるじゃないか、基樹」


俺は、その男を見て驚いた。


「小熊どうしてここに!」


小熊はこちらに近づいてきて、俺の額に銃口を突きつける。


「私が、お前を殺したかったからだ」

「そうかよ、俺をそこまで憎んでたのか?」

「いや、逆だ。お前を愛していたからだよ」


そこで、小熊はふっと優しそうな笑みを浮かべる。


「私は、お前の父親だからな」

「知ってたよ、それくらい。だから、俺は一週間前『ありがとう』って言ったんだぜ」


小熊……いや、父さんは大きく目を見開いて、大声で笑い出した。そうして、またあの優しい目に戻る。


「お前は、こんな父親を好きでいてくれるか?」

「あぁ、大好きだよ、父さん」


俺の最後は、愛すべき人の手によって飾られた。



片柴君と吾郎さんが死んだというニュースは、新聞の隅っこのほうに乗っていた。

1面を飾っていたのは、拘置所の警備の薄さを責めた記事だけだった。

あれから私は、海岸で泣いてるところを小母さんに見つけられて宿へと帰り、着の身着のまま布団に潜り込んだ。

無力な自分を呪い、もっと頼って貰いたかったと上谷君を責めた。


そうして、しばらく寝込み続けていたある日、私の元に孤児院から一人の赤ちゃんがやってきた。


その子は、やつれていて、髪はボサボサで、どこか上谷君に似ている子だった。

もしかしてと思い孤児院の方に聞いてみると、やっぱり片柴君がある日ふらりと来て頼んだらしい。


「俺にもしもの事があったら、この子と美月をよろしく頼むと」


その子が大事そうに抱えている小さな箱を取って、私は中身を見てみた。


そこには――銀色に輝く指輪と片柴君の署名入りの婚姻届が折りたたまれて入っていた――



さてこれで、わたし小波 菜月の書く物語も終わり。

最後にこれに、今は天国か地獄にいるあの人に見てもらえるよう題名をつけよう。

どちらにいても見てもらうためには……うん、決めた。

私は原稿用紙の上にその題名を綴る。

遥かな園へ――と。

設定破綻など至る所穴だらけですみませんでした。

それでも、楽しんでいけたら幸せです。

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