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 備前屋は、ひいきにしていた身寄りのない職人・弥助の葬儀を盛大に執り行い、立派な墓まで建ててやった。

 息子に主人の座を譲って隠居した大旦那は、庭に咲く桜の花を仰ぎ見て、ひとりぼそりと呟く。

「……いい職人だった。惜しい男を亡くした」


 そのとき、番頭の荘吉が控えめに入ってきた。

「大旦那さま。こちらを……」と木箱を差し出す。

「……? 何だこれは」

「小僧の与太が今朝、預かったそうで」


 蓋を開けると、そこには龍の浮彫が施された見事な銀煙管が収められていた。龍の口から煙が立ちのぼるように彫られ、その精緻な出来は、まさに弥助が得意とした仕事そのものだった。

「これは……」思わず声を失う。

 注文どおり、いや、それ以上の出来栄えである。


「今朝、届いたというのか」

「はい。与太はそう申しております。ただ……」

 荘吉は言いにくそうに口ごもった。

「何だ」

「弥助さんが、届けにきた、と……」


 備前屋はしばし黙し、それから低く頷いた。

「……そうか。与太は使いで弥助に会ったことがあったな」

「はあ……」

 納得したように見える主人の顔に、番頭はなお首を傾げた。だが、それ以上は何も言わなかった。



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