Ep.2
ご訪問ありがとうございます
※プロットを共有し、誤字脱字の確認や執筆の補助、構成の相談でGemini(AI)と協力しています
吾輩は猫である。
コードネームはラビット。
見慣れぬ異世界で、妙にゆるい人間──超越者とやらに勇者に任命され、その地上に降り立った。
飛び跳ねるように、草むらを駆け抜け、木々の間を素早く移動する。
まるで羽が生えたような感覚は、何度跳ねても、走り回っても、尽きることがなかった。
まるで、風のように自由そのものだった。
癒えた右前足に喜び、駆け回っていた吾輩だが、そろそろ本来の使命とやらを果たす時が来たらしい。
超越者の話では、この世界は白雷鳴鼠なるネズミに似た生き物で溢れかえっているという。
そしてあろうことか、吾輩がその天敵として送り込まれた、と。
「にゃーん」
吾輩は一声鳴いて、目の前の草原を見据えた。
どこからともなく聞こえる、チュー!チュー!と耳障りな鳴き声。
それは、少しだけ恐怖心を駆り立てる。
しかし、今の吾輩には恐怖など無用だ。
足元から湧き上がる力強さ。
右前足の自由さ。
それだけで全てが変わったような気がする。
その声は次第に増え、やがて地平線が白く染まり始めた。
まさか、あれが全部か…?
吾輩の知るネズミに似てはいるが、その姿は異様だ。
体格も、雰囲気も、まるで違う。
遠目に見ても、異様に二山に尖った耳が確認出来る。
そして何より、その夥しい数。
一匹や二匹ならまだしも、あれではまるで白い絨毯ではないか。
まさか、吾輩が、あんな大群を相手にする羽目になるとは…。
内心で舌打ちしたい気分だったが、吾輩は猫である。
舌打ちなど出来はしない。
今までの吾輩なら、まず間違いなく逃げ出しているだろう。
しかし、今は恐れがない。
先頭の一匹が、吾輩めがけて突進してきた。
体格は吾輩とほぼ同じか、わずかに大きいか。
その口からは、鋭い前歯が覗いている。
冷静に、その動きを観察。
すると、白雷鳴鼠の頭の先から尻尾の先までパチパチと青白い火花が散り、そのまま吾輩に飛びかかってきた。
危ない!
とっさに右前足で地面を強く蹴った。
ブォン!と、乾いた風を切るような音が響き、蹴り上げた砂利と突風が白雷鳴鼠に直撃する。
バランスを崩したネズミは、ゴロゴロと転がっていった。
なるほど、これが衝撃波とやらか、と納得する。
超越者の言っていた『地面を強く蹴ると発生する衝撃波』の効果は、なかなか悪くない。
しかし、相手は一匹ではない。
一匹が転がったかと思えば、別の三匹が左右と正面から同時に襲いかかってきた。
ふん!と吾輩は大きく跳んだ。
ぴょーん!と宙を舞う吾輩の姿に、白雷鳴鼠達は虚を突かれたように動きを止める。
そのまま吾輩は奴らの頭上を軽々と飛び越え、その背後に着地した。
にゃっはっは!吾輩を捕まえようなど、百年早い!
しかし、吾輩が調子に乗ったのも束の間だった。
着地した途端、背後から無数の電撃が放たれた。
バチバチッ!と空気を焦がす音がし、吾輩の毛先が少し焦げた。
はあ!?と驚愕した吾輩は悪くない。
超越者が付与してくれた『アースレベルの電気耐性』のおかげで痺れることはないが、当たれば熱い。
その電撃は、どうやら白雷鳴鼠の身体から直接放っているらしい。
帯電による中近距離タイプかと思いきや、長距離攻撃も可能とは、厄介な。
吾輩は改めて奴らを見た。
凶悪そうな顔付きではないが、今やその赤い目にはぎらついた捕食者の光が宿り。
その白い体毛はどこか不気味な青白い光を放っている。
パチパチと電気が周囲を走る。
吾輩のヒゲがピリピリと痺れ、毛が逆立つ。
なるほど、これがこの世界の『進化』とやらか…。
吾輩は素早く身を翻し、茂みの中へ駆け込んだ。
隠密行動は猫の得意技である。ふふん。
茂みの中で身を潜め、白雷鳴鼠の動きを観察する。
奴らは吾輩を見失い、辺りをキョロキョロと見回している。
その動きはどこかコミカルで、警戒心はさほど高くないのかもしれない。
あの長い耳は、伊達か。
更に深く茂みに潜り込み、獲物を狙う時のように静かに、確実にターゲットを定める。
一番手前の、一際大きく見える白雷鳴鼠だ。
息をひそめ、跳躍のタイミングを計った。
吾輩の方から視線を外した瞬間、今だ!と茂みから飛び出し、一気に加速した。
狙いを定めた白雷鳴鼠目掛けて、足に全神経を集中させる。
地面を強く蹴り、跳躍力を最大限に生かす。
ビュン!
吾輩はまるでオレンジの雷光の如く駆け。
白雷鳴鼠がこちらに気付き、電撃を放とうと臨戦態勢に入るが。
吾輩の速度は奴らの予想を遥かに上回っていた。
ドォン!
吾輩は白雷鳴鼠の頭部に、治ったばかりの右前足で渾身の猫パンチを叩き込んだ。
衝撃波が発動し、白雷鳴鼠は悲鳴を上げる間もなく、地面に叩きつけられた。
その衝撃で、周囲の白雷鳴鼠も何匹か吹き飛ばされていく。
これが勇者の力だ!と胸を張るが。
他の白雷鳴鼠達が一斉に吾輩に襲いかかってきた。
その数はざっと数えても、十数匹はいるだろう。
吾輩は再び跳び、蹴り、踏みつけ。
その身体能力をフル活用して白雷鳴鼠達を翻弄した。
しかし、吾輩の体力は無限ではない。
相手は数で押し潰そうとしてくる。
吾輩が着地した瞬間を狙って、何匹もの白雷鳴鼠が電撃を放ってきた。
パチパチパチ!
ぐぬぬ…しぶとい!
電気耐性があるとはいえ、連続で受けると流石に疲弊する。
あと熱い!
吾輩は一旦距離を取り、呼吸を整えた。
まるで雷のような勢いで、電撃を放つそのネズミは厄介だ。
一対一なら負ける気はしないが、いかんせん数が多すぎだ。
目を見開き、全身の力を込めて跳ねる。
強く蹴った地面が振動し、衝撃波が放たれた。
白雷鳴鼠の動きが止まる。
その隙に吾輩は一気に間合いを詰め、前足を前に突き出し、素早く足元をすり抜けるように跳びながら攻撃を仕掛ける。
足を速く使って、できるだけ近づき、力を込めて一気に。
「にゃあああ!」
全身の力を込めて跳躍した。
大地を蹴ったとき、地面が震えるほどの衝撃波が周囲に広がる。
その波に加わるように、吾輩は雷のような速さで進み、白雷鳴鼠に迫った。
ネズミはその尖った耳をピクッと動かし、吾輩が迫ってくるのに気づく。
だが、すでに遅かった。
吾輩はそのまま、接触する直前で一気に足を伸ばし、跳ねるようにその身体を打った。
ドンッ!
その瞬間、まるで雷のような衝撃が全身を走った。
しかし、吾輩には何の影響もない。
電気の力が、まるで意味をなさないからだ。
しかしネズミは、その衝撃でバランスを崩し、足元がふらついた。
その瞬間、吾輩はさらに跳ね上がり、その背後から飛び乗った。
両前足でしっかりとその身体を捉え、全力で力を込める。
「にゃあああ!」
力を込めて、その背中に爪を突き立て。
その巨体を、しっかりと地面に押さえ込んだ。
その瞬間、ネズミが最後の力を振り絞って放った雷の一撃が、吾輩の体を貫こうとしたが、もう遅い。
ヂュッ!
白雷鳴鼠は、絶叫とともにその力を失い、地面に倒れ込むと。
そのまま動かなくなった。
吾輩は息を整えながら、倒れたネズミを見下ろす。
足の力強さと跳躍力を駆使し、無事に倒すことができた。
これが、勇者としての第一歩だ。
振り向いて、残りのネズミを見やる。
まだまだ練習相手はたくさんいる。
吾輩は、すばやく行動に移した。
地面を蹴り、衝撃波を使い。
無我夢中で暴れまわった。
数十分後、最初に吾輩を囲んでいた白雷鳴鼠の大群は、半数近くが目を回して倒れ伏していた。
残った奴らも、仲間が次々と倒れるのを見て、恐怖を感じ始めたのか、尻尾を巻いて逃げ出して行った。
ふん、所詮はネズミよ。
吾輩は、胸を張って言った。
体は少し疲れたが、気分は悪くない。
勇者としての初陣、大勝利だ。
吾輩は、コードネーム・ラビット。
白雷鳴鼠を相手に、跳ね回り、戦い方を覚えた勇者である。
きっとこの活躍を見て、あのゆるい超越者も、吾輩の価値を認め、次の手を打ってくれるに違いない。
とりあえず、今回の褒美には番を求めよう。
ご一読いただき、感謝いたします
引き続きお楽しみいただけましたら幸いです




