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セノキョン探偵倶楽部 消えた肖像 E面

瀬能「先生?十朱先生?」

トントン

瀬能「・・・十朱先生?」

カチ ガラガラガラガラガラ

十朱「!」

瀬能「あ、十朱先生、いるじゃないですか?いるならいると」

十朱「な?な、なんで、鍵、え?」

瀬能「おじゃましますよ?・・・いえ、おかまいなく。」

十朱「え?なん、、、、どうやって鍵を開けたんですか?今、声がしたからたぶん瀬能さんじゃないかって思って?」

瀬能「鍵なんて簡単に開けられますよ?鍵なんて楔をひっかけているだけなんですから。」

十朱「・・・瀬能さん、怖いです。言ってくれれば開けますから。」

瀬能「あ、申し訳ありません。もう夜だから、女性の一人暮らしの家で、ベランダで待っていたら怖いかな?と思って。」

十朱「家の中に入っている方が怖いですし、鍵がかかっている窓を開けて入ってくるのも、十分、怖いです。」

瀬能「そうですか?申し訳ない事をしました。」

十朱「・・・鍵、二つにした方が、安全ですか?」

瀬能「うん?ええ、一つより二つ。二つより三つの方が安全ですよね?」

十朱「今度、鍵、増やします・・・。・・・、何か、ご用事でいらしたんでしょう?・・・コーヒーか紅茶、それとも夜はカフェインが入っていないものがよろしいですか?」

瀬能「ああ。そうですねぇ。コーヒー、コーヒーいただきます。」

十朱「・・・。」

瀬能「・・・十朱先生、この前、八代さんの家に行きましたね?・・・部屋で抱擁していたの、見ましたよ。」

十朱「!」

瀬能「あのぉ、いくら、恋人でも、まだ、自宅謹慎期間中ですから、行動は慎んだ方がよ」

十朱「見たんですか!見てたんですか!・・・あああああああ!」

瀬能「あぶない、あぶない、先生ぇ!コーヒー?コーヒー!・・・落ち着いて!」

十朱「私も見られている気がしてたんですよ!まさか!まさか!ああああああああああ!・・・瀬能さん、他の人には見つかっていないですよね?誰にも見つかっていないですよねぇ?」

瀬能「痛い、痛い、痛い。そんなに揺すらないで下さい。たぶん、誰にも見つかっていないと思いますよ?・・・あの日もたまたま、八代さんに用があって、家に行った時、もう帰る所だったんですけど、後から先生がやってきて。止めようかと、思ったんですけど、十朱先生なら、まだ自重する人だと思っていたら、部屋に入ってすぐ抱き合うなんて思わないじゃないですか?親御さんだって、部屋に入ってくるリスクあるんですよ?」

十朱「すみません。すみません。本当にすみません。・・・すみません。すみません。」

瀬能「私に謝っても、私、無関係ですから。・・・まぁ、ただ、事件の事を考えると、まだ、静かにしておいた方が得策だとは思いますよ?・・・客観的に見てですけど。」

十朱「・・・妙に会いたくて。どうにか口実を作って会いに行ったんです。・・・今後の事、本人に聞くとかテキトーな事を言ってあがりこんで、本人を目の前にしたら、止められなくなってしまって。・・・つい。」

瀬能「さかりがついた中学生じゃないんですから。・・・十朱先生、大人でしょう?もう少し分別ある行動を取らないと。・・・コーヒー、こぼれちゃってますよ?」

十朱「ああああああああああああ!」

瀬能「老婆心ながら言いますけど、仮に、やっちゃっても本人同士の問題だから、いいと思いますけど、せめて、カーテンは閉めた方が良いと思いますよ?たまたま見てたのが私だから良かったものの、違う人が見てたら大事ですよ?・・・二階の部屋を覗くのは至難の業だと思いますけど。」

十朱「・・・すみません。気を付けます。」

瀬能「それで、ですね?十朱先生。・・・あれにも話したんですけど、」

十朱「あれ?」

瀬能「ええ。八代さんです。・・・八代さん、家出の件だけじゃなくて、ややこしい問題を学校で抱えていまして。それ、どうするのか?聞きに行ったんですよ。それが、結局、学校の七不思議『消えた肖像』の噂の出所だったんで。」

十朱「学校七不思議の噂と、妙と、どんな関係があるんですか?」

瀬能「・・・平たくいうと、恋愛関係のもつれです。痴情のもつれです。」

十朱「ええええええええええ!」

瀬能「静かに!・・・静かに!・・・・夜ですよ?夜!」

十朱「どういう事ですか?妙に限ってそういう事はないと信じています!妙は、妙はなんて言ったんですか!」

瀬能「先生。先生。少し落ち着いて。本当に十朱先生は八代さんの事になると、とたんにキレるから。」

十朱「すみません。すみません。すみません。・・・妙は?妙は、なんと言っていたんですか?」

瀬能「八代さんは何も言っていません。痴情のもつれに巻き込まれた側の人間ですから。・・・だから、ややこしいのです。本人の介在しない所で、恋愛のもつれに巻き込まれてしまった訳ですから。

それというのも、三崎優さんってご存知ですか?」

十朱「三崎、優さん?・・・当校の二年の?」

瀬能「そうです。」

十朱「その三崎さんが、妙の事をそそのかしたんですか?」

瀬能「違います。」

十朱「ッ 違うんかい!」

瀬能「・・・その三崎優さんが、学校の七不思議に興味があるらしくって、私、相談されていたんです。」

十朱「・・・瀬能さんが?・・・三崎さんに?」

瀬能「ええ。優ちゃんとは古い仲なんで、たまに遊ぶんですよ。・・・カードゲームとかで。」

十朱「カードゲーム?・・・ポーカーとかブラックジャックとか、あのぉ、賭博ですか?違法なやつ?」

瀬能「そういう金品を賭けて行う奴じゃなくて、命を懸けて戦う」

十朱「へ?・・・命ぃ!・・・・・完全に違法じゃないですか!命をかけて行うカードゲームなんかゴッドファーザーでしか見た事ないですよおおおお!」

瀬能「・・・。ああ。・・・説明が悪かったです。遊びなんですけど、花札の現代版みたいなもので、カードを出し合って、勝敗を決めるゲームがあるんですよ。そういうので昔からよく遊んでいたんで。優ちゃんとは。」

十朱「・・・花札。・・・。・・・。三崎さんが危ない遊びをしていなくて、ちょっと安心しました。」

瀬能「その優ちゃんが、学校中の生徒に声をかけてくれて、写真を集めてくれたんです。・・・ああ。ええ。ええっと、その学校の七不思議に関連しそうな写真を。生徒の皆さんも七不思議には興味があるらしくって、何千枚も写真を提供してくれたんですね。」

十朱「何千枚?」

瀬能「驚異的な数字ですよね。学生の力が集まると何でも出来る気がします。

私は、その何千枚の写真を一枚一枚、精査して、面白い写真が写っていないか、探していたんです。まぁ、ろくな写真ばかりで、学校の七不思議に関する写真はありませんでした。

ところがです。

違うものを見つけてしまったのです。」

十朱「違うもの?」

瀬能「意図して写したものではなく、偶然、写り込んでしまったものだと思われます。だから、写した本人は気づいていない。でも、私の様に客観的に見ると、意味が出て来る写真です。

先程、話した通り、八代さんは、恋愛関係のもつれに巻き込まれてしまっています。それは現在も進行形です。

・・・生徒会長の森川さんと八代さんが、抱き合っている姿が、まったく関係ない写真に写り込んでいました。

たぶん、体育祭か何かでしょう。校庭で行うイベントのようです。」

十朱「森川・・・・」

瀬能「優ちゃんが集めてくれた何千枚の写真の中から、八代さんと森川さんが二人で写っているという意味を持たせて、改めて、精査してみた所、何十枚か出てきました。

私の目から見て、好意を寄せているのは、生徒会長の森川さんだと思います。

こういうのは当事者に聞いた方が早いので、八代さんに直接、聞きに行きました。・・・帰り際、十朱先生と八代さんが熱く抱擁する姿を見てしまう事になるのですが。」

十朱「・・・妙は!妙は何て言っているんですか!」

瀬能「八代さんに言わせれば、何もない。何も関係ない。何も思っていないと言っていました。

ただし、です。八代さんも真面目な人間だから、嘘がつけないみたいで、話してくれましたけど、その森川さん。八代さんが入学した時から、随分と可愛がってくれていたみたいで、姉のように慕っていたと言っていました。姉のようにと。あくまで姉であると。恋愛感情は無いと。でも、森川さんは違ったみたいで、八代さんが二年に進級してしばらくたった頃、告白された、と言っていました。」

十朱「告白した!森川さんが?・・・妙にぃ?」

瀬能「そうです。本当に姉の様に慕っていたので正直、驚いたと言っていました。ですが、恋愛感情を持つ事が出来ず、断ったと言っていました。」

十朱「。。。」

瀬能「先生?・・・嬉しそうな顔、しない。そこ。

八代さんは、森川さんに対して、恋愛感情を持つ事は出来ないが、これからも、姉と妹の関係でいようと、伝えたそうです。

森川さんは、正統派美人ですよね。目鼻立ちがはっきりしていて、八代さん以上に物事をハッキリ言うタイプだとか。いくら好きな八代さんに振られたとは言え、学校内では生徒会長と書記。加えて、姉と妹の関係。隙さえあれば、八代さんの事を、甲斐甲斐しく可愛がっていたそうです。」

十朱「・・・言われてみれば、妙にいつも、ちょっかいかけていた気がします。・・・あの、メスブタ」

瀬能「今回の事、家出の事は、死ぬ程、心配したみたいで、時間があれば家に来ているみたいですね?」

十朱「・・・!・・・本当ですか?・・・・私だって、私だって、我慢して、妙に会うのを我慢してるのに!・・・・・」

瀬能「まぁ先生、落ち着いて。聞いて下さい。そりゃあ学校の生徒が、プリントだとかそういうのを持って家に来るのはそんなに不自然な事じゃないでしょう?おまけに、入学当初から可愛がってくれている先輩です。しかも生徒会長。親御さんだって安心ですよ?親以上に親身になって、話を聞こうとする姿勢。親御さんだってほだされるじゃないですか?ねぇ?」

十朱「妙のご両親はあのメスタヌキに騙されているんです!・・・私が妙の所に行っても、なかなか会わせてくれませんでした。」

瀬能「担任の先生でもないのに、家に来たら、誰でも不審がりますよ?

私は、本人に、森川さんの事をどう思っているのか?改めて聞いたんです。答えは同じで、何も思っていない。家に来てくれるのはありがたい。けれど、それ以上の感情はないと言っていました。

直情型の森川さんの性格から見て、八代さんが、恋愛感情が無いと断っても、立場を利用して、ズルズルベタベタするのは必然でしょう。今までもそういう作戦でやってきているみたいですから。彼女は、キッカケさえあれば、何度でも、八代さんを自分の物にする為に、行動を起こすと思います。」

十朱「・・・あのぉ、メスぅゴリラぁ」

瀬能「八代さんに、森川さんがあなたをそういう目で見ていると伝えてみました。あの子も、自分の事になると鈍感なのか分かりませんが、驚いていました。気を付けると言っていました。・・・気を付けようがありませんけどね。相手は、恋愛ゲリラみたいなものですから。油断していると、裸に剥かれてヤられている可能性だってありますからね?」

十朱「私が妙を守ります。」

瀬能「そうした方が良いと思います。でも、本質は森川さんの方ではないんですよ。問題をややこしくしているのがもう一人いるんです。」

十朱「もう一人?」

瀬能「棚橋小夏さんです。」

十朱「・・・棚橋小夏・・・さん?・・・三年生の?」

瀬能「私は三年生かどうかは存じ上げないのですが、同じ、生徒会の役員をしている、棚橋さんです。」

十朱「その、棚橋さんが、妙と、メスゴ・・・」

瀬能「森川さん。」

十朱「森川さんとどういう関係があるんですか?」

瀬能「あのぉ、棚橋さん。率直に言って、森川さんの事が好きなんです。彼女と森川さん。幼馴染で、ずっと学校も一緒だと、聞きました。棚橋さんからしてみれば、本当に小さい頃から一緒に育った仲ですから、友情から、愛情に心境が変化したのかも知れません。それが愛情なのか、もっと家族愛的なものなのかは計りかねますが、友情より強く、愛情とはまた違う感情、棚橋さんからすれば森川さんは、体の一部みたいな存在で、これまでもずっと一緒に育ってきて、これからもずっと同じに行くと思っていたのでしょう。そこに、八代さんが割って入ってきたのです。」

十朱「違いますよね?・・・妙、そんな事、してないですよね?」

瀬能「まあまあ。そうです、八代さんは何もしていません。棚橋さんからしてみれば、八代さんが、森川さんとの仲を割って入ってきた、邪魔者なのです。そりゃぁ排除するように動きますよね?棚橋さんも、あんたが邪魔だ、って言えれば何も問題はなかったのでしょうが、熱を上げているのは明らかに森川さんの方だから、強く言えない。普通に頭の良い子らしいですから、大っぴらに、八代さんを邪険にも出来ない。人の目がありますから。」

十朱「・・・。」

瀬能「棚橋さんは、森川さんと八代さんの仲を離したい。森川さんには強く言えない。八代さんには表立って言えない。毎日、毎日、鬱憤は貯まるばかりで何も解決しない。ところが、八代さんが突然、いなくなったんです。失踪したと、警察から連絡が入りました。棚橋さんは日頃から溜まっている八代さんへの負の感情を爆発させ、とある行動に移します。それが、生徒会室にある、八代さんが写っている写真を消す、という行為でした。棚橋さんからしてみれば、軽い気持ちで、憂さ晴らしをしたのでしょう。気に入らない女の写真を消したのですから。

ところがです。

生徒会室に入って来た生徒が、ある事に気が付きます。

失踪して事件となっている八代さんの写真だけが、生徒会室から消えている。他の役員の写真は残っているのに。

その生徒は、学校の七不思議として伝わる、三十年前に消失した『消えた肖像』の話を思い出したのです。あとは、誰にでも想像がつくでしょう。三十年前に、失踪した女子生徒と、消失した肖像画の七不思議が、現代に、蘇ったのです。美人でスポーツも出来て、友達も多く、失踪する理由がない八代さんと、同じく、生徒会室から八代さんの写真だけが消えた。間違いなく、『消えた肖像』の再来だと。

こうなればもう、止まりません。人の口に戸は建てられませんから。あれよ、あれよ、と噂は広まり、実際に起きている八代さんの家出と、学校の七不思議という噂話が、現実と虚構が混同され、さらに話が膨れ上がっているのが、現状です。」

十朱「あのぉ、妙を、妙の家出を止められなかったのは私の責任です。・・・今更ですが、それは責任を感じています。」

瀬能「十朱先生。それは以前話した通り、過ぎた話ですし、私に何の関係もない話ですから。将来の話は、十朱先生と八代さんが二人で決めるべき話だと思っています。ただ、現状、あのままだったら八代さんは将来を棒に振るのが明らかに見えていたので、戻るなら、早い方が良いと思って、手を貸しただけです。・・・本人にその気もありましたしね。反省もしているみたいだし。

八代さんに至っては、森川さんと棚橋さんという二人に、三角関係を作られてしまった、という事です。本人にも話しましたが、その気がないなら、毅然とした態度を取るべきだと。あなたが一番大事に思っている人を、ちゃんと大事にしなさいと言っておきました。・・・月並みですけど。」

十朱「・・・ありがとう、ございます。瀬能さん。」

瀬能「私は、学校の七不思議『消えた肖像』の真相を探れたので、それで満足です。」

十朱「・・・私は、メスゴリラから妙を守ります。メスゴリラを一歩も妙に近づけさせません!」

瀬能「ううん?・・・そういう話でもないんだけどなぁ。」


※本作品は全編会話劇です。ご了承下さい。

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