セノキョン探偵倶楽部 消えた肖像 D面
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■ 捜査を再開します ■
■ →YES ■
■ NO ■
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優「杏子ちゃんの言う通り、八代さん、見つかったよ!」
瀬能「・・・ああ、見つかったんですか?」
優「杏子ちゃん、凄いね!本当に、三日で出て来たよ!」
瀬能「やはり家出だったんですか?」
優「・・・なんか詳しくは教えてくれないんだけど、なんかそうみたい。ほら、学校中の騒ぎになっちゃったから、自宅謹慎させられてるみたい。」
瀬能「怪我とかはなかったんですか?」
優「う、うん。そういう話は聞かないから大丈夫なんじゃない?」
瀬能「それじゃぁ一件落着ですね?」
優「それはそうなんだけど、瀬能探偵?やっぱり、今回の八代さんの家出は、学校の七不思議『消えた肖像』と関係していると思われますか?」
瀬能「・・・優ちゃん。その八代さんでしたっけ?家出だったんでしょう?だったら、学校の七不思議と関係ないじゃないですか?」
優「これは噂なんだけどね?八代さん、駅の近くの漫画喫茶から発見されたんですって?」
瀬能「はぁ。」
優「それも偶然だったらしいのよ?・・・たまたまその漫画喫茶でチンピラが喧嘩しだして、それを止めに入った警察が、そこにいた、八代さんを発見して保護したらしいのよぉ?・・・監禁されてたんじゃないかって?噂。」
瀬能「優ちゃん、その話、どこまでが本当でとこからが噂なんですか?根も葉もない話を聞かされても、私も困ります。」
優「だからね、『消えた肖像』の秘密を知ってしまったから監禁されたんじゃないか?って、皆、噂してる。たまたま運が良かったから警察に保護されただけで、もしかしたら、このまま三十年前の失踪事件みたいに、八代さんも消えてしまったんじゃないか、って話。」
瀬能「・・・なんかもう、優ちゃん。・・・あのぉ、以前も話ましたが、皆っていう皆って誰なんですか?中学生の女子児童は、噂話をさも見たように吹聴するから。・・・優ちゃん、来年、受験でしょう?そんなんで大丈夫ですか?心配になっちゃいますよ?」
優「それはそれ、これはこれでしょう?」
瀬能「・・・優ちゃん、彼氏とセックスする時、出す瞬間に、抜けば大丈夫だから生でやらせて?とか、言われていませんか?・・・その程度の噂と同じですよ?その『消えた肖像』の話は?」
優「・・・うん?」
瀬能「あ、やってるな?これ、やってるな?・・・優ちゃん、ちゃんと避妊しないと後で大変な目に遭いますよ?」
優「ちょちょ、ちょ、え?・・・杏子ちゃん、その話、え?・・・本当?・・・え?」
瀬能「優ちゃん。ちゃんと保健体育の授業、出てますか?基本中の基本ですよ?・・・そもそも、優ちゃんの彼氏、優ちゃんとだけセックスしているって確証もないんでしょう?・・・場合によったら性病、うつされますよ?」
優「ええええ!・・・私の彼氏に限って、浮気しているとか、あり得ないし。うん、あり得ない。」
瀬能「・・・優ちゃんが、浮気側の可能性はないんですか?二番目の女?三番目の女って可能性は?」
優「そ、そ、そ、そんな、そんな事ナイヨ?」
瀬能「別に、体だけの友達の方が割り切った関係で楽って考えもありますから、私は否定しませんけど。ただ、お互いに誠意をもって、交際しないと。この場合の交際は、セックスフレンドの事を言いますが、お互いを尊重し合わないと、体を壊す事になりますから。特に、女性は男性よりリスクが高いので、出来うる避妊はした方が、長くよりよい関係を保てると思いますよ?」
優「いやいやいやいやいやいや。杏子ちゃん?良い事を言っている風に言っているけど、私、セフレじゃないから!セフレじゃないから!」
瀬能「・・・これ。どうぞ。」
優「箱?なに?・・・ゴム?」
瀬能「ラブホテルに置いてある業務用のコンドーム、三百個です。・・・安いから買いました。もう腰がたたない位、愛し合えると思っていました。ですが、ここに三百個あるという事は、一つも使わずに済んでしまいました。」
優「・・・え?」
瀬能「・・・あの時の浮かれていた自分を殴ってやりたいです。三百個あります。臭いです。ゴム臭がとても臭いです。今の優ちゃんに必要な物だと思うので差し上げます。ご両親には見つからない様に保管して下さい。・・・自分の娘がとんだアバズレだと誤解されてしまうでしょうから。」
優「・・・。」
瀬能「・・・どうぞ。」
優「・・・臭い?」
瀬能「・・・臭いです。」
優「・・・。」
瀬能「優ちゃんがセックスフレンドだったという話は横に置いておいて」
優「セフレちゃうわ!」
瀬能「学校の七不思議『消えた肖像』と、八代さん家出事件について、その真相を私なりに推理してみたので、お話しましょう。」
優「杏子ちゃん、やっぱり何か、分かったのね!」
瀬能「ええ。優ちゃんが協力してくれたおかげで、真実が浮かび上がってきたと思います。・・・あくまで私なりの見解ですが。」
優「聞かせて!聞かせて!」
瀬能「何日か前、この話を優ちゃんに聞かされた時、」
優「・・・言い方。聞かされた、じゃなくて、相談したんでしょ?」
瀬能「ああ。そうですね。優ちゃんから相談を受けた時、八代さんの写真を、集めてもらいました。それが解決への鍵となりました。あの量の写真データを集めるのは大変苦労されたと思います。」
優「もう学校中の友達に声をかけたから。友達の友達?先輩から後輩まで、くまなく声をかけられたみたい。友達の力って凄いよね?」
瀬能「八代さんが行方不明になっていましたから、余計に、皆、協力してくれたんだと思います。ある意味、噂の正の部分が効力を発揮したと言っていいと思います。私、凄く、気になっていた部分があるんです。」
優「気になっていた?」
瀬能「優ちゃんが言っていましたね。生徒会室にある八代さんの写真だけが消えていた。」
優「そうそう。それが怖いのよ。謎なのよ。どうして、生徒会室にある八代さんの写真だけが消えていたのか!」
瀬能「私は消えていたのではないと思います。・・・消されていたのだと思います。」
優「え?・・・え?」
瀬能「生徒会室にあった、生徒会活動をしていた学生の写真、しかも、八代さんの写真だけが消えていたのだとすれば、意図的に、誰かが八代さんの写真を消した、と考える方が合理的だと思います。それに、都合よく、八代さんがどこかに消えてしまった訳ですから。・・・火に油を注ぐ、という表現が適切かどうかは分かりませんが、生徒会室にあった八代さんの写真が消えた為、三十年来の学校の七不思議、『消えた肖像』が意図せず、復活したのだと思います。」
優「誰が、そんな、・・・八代さんの写真を消すとか、考えるの?」
瀬能「優ちゃん、とても、簡単な話ですよ。・・・八代さんの事を邪魔だと思う人間に決まっているじゃないですか?とても自然な考えでしょう?」
優「・・・確かに。・・・でも、八代さんの写真を消して、何の得があるの?それに、学校の七不思議がなんで広まってしまったの?」
瀬能「誰に得があるか、は、私には判断できませんが、学校の七不思議が広まったのは、単純な話です。生徒会室にあった写真のうち、失踪騒ぎでもちきりの生徒である、八代さんの写真だけが消えているのです。これは事実ですから、誰でも、連想しますよね?三十年前に起きたとされる、女子生徒と肖像画の消失事件。八代さん本人が消え、写真も消えた。ああ、これは、三十年前の事件の再来だと。あれよ、あれよと、噂が噂を呼び、あっと言う間に出来上がったのが、現在の『消えた肖像』事件です。写真を消した本人は、決して意図せずやった事だと思います。たぶん、八代さんが失踪する前から、八代さんの事が気に入らなかったのでしょう。失踪し、これ幸いと、憂さ晴らしに、生徒会室にある八代さんの写真を消したんです。消された写真を違う誰かが見て、騒ぎを起こし、学校中の怪談話として、優ちゃんの耳にまで届いた、という事でしょう。・・・単純な話です。」
優「そ、そんな単純な話なの?」
瀬能「人の噂話なんてそんなものですよ?・・・壁に染みが三点あるだけで人間は、人の顔を想起します。同様に、学校の七不思議として有名な話が、現実となれば、噂が噂を呼び、誰も止められなくなり、一人歩きするのは必然です。人間の心理なんて、とても危ういものなんですよ。」
優「ねぇ?杏子ちゃん。・・・じゃあ、誰が、そんな事をしたの?・・・その人が、八代さんの写真を消さない限り、学校中の騒ぎにはならなかったんじゃないの?」
瀬能「・・・そうですねぇ。答えは、優ちゃんが集めてくれた、何百枚の写真データの中にありました。」
優「え?あ?え?」
瀬能「当初、私は、その八代さんという人の顔を知りませんでした。当然です、有名人でもない限り、知っている方がおかしいからです。それで、優ちゃんに八代さんの写真を見せてもらえるようにお願いしました。でも、優ちゃんは八代さんとそれほど仲が良いという訳ではないという話だったので、同級生を頼り、八代さんんが映っている写真を集めてもらいました。これが功を奏しました。
まず、生徒会室にある八代さんの写真が消えた件から考えてみましょう。これも、極めて単純な話です。
優ちゃん、生徒会室って誰でも入れる場所なんですか?」
優「いや、違うと思うけど。だって生徒会室でしょ?生徒会役員しか、入れないで」
瀬能「気が付きましたか?優ちゃん。」
優「そっか。生徒会活動を行っている生徒しか、その部屋には入れないんだ。・・・すると、犯人は、生徒会役員?」
瀬能「犯人という言い方が適切かどうかは置いておいて、八代さんの写真を消した人物は、間違いなく、生徒会の役員であると言えます。私は、優ちゃんの学校の事を知りませんので、推測で言いますが、生徒会室という位ですから、普段は生徒会活動を行っている生徒しか入室できないように、施錠してあると思います。ですので、生徒会室に入室できるのは、鍵を持っている、もしくは、持っていた生徒会役員。それから、鍵を管理している先生になると思います。
この時、先生が八代さんの写真を消した、というのであれば、どういった意図で消したのでしょうか。しかも八代さんのだけです。本来、先生というのは権力を有する側の人間です。権力を有する先生が、一般生徒の写真を意図して消すという行為、それはもう、犯罪以外なにものでもないと思います。いくら気にくわない生徒だったとして、そんな陰湿な行動を取るものでしょうか。」
優「取る、人もいるでしょうねぇ?」
瀬能「ま、あ、あのぉ。確かに、否定はできない行為だとは思います。私は先生だったら、もっと直接、言うと思います。だって、権力を持っている訳ですから。権力を行使して、言う事を聞かせた方が早いし、楽だと思います。・・・あくまで、一般論ですが。
ですので、この場合、先生は除外して良いと思います。」
優「本当に除外していいの?・・・先生が犯人かも知れないじゃない?」
瀬能「さっきも言いましたけど、優ちゃんが集めてくれた写真の中に、答えがありましたよ。もう、何百、何千枚の写真を精査するのに大変、苦労しました。」
優「犯人が分かったのね?」
瀬能「いくら、生徒会室にある写真を消しても、同じ時間、同じ場所で、たまたまその人達が映り込んでしまったら、そこからおおよそ、何が起きてていたか推測は可能です。
・・・八代さんは、本人はその気も無いのに、一方的な恋愛感情のもつれ。一方的な三角関係に巻き込まれてしまったようです。」
優「え!・・・それは、どういう?・・・・え?」
瀬能「本人は何とも思っていないのに、三角関係に巻き込まれ、八代さんは一方的に好意を寄せられ、また、好意を寄せられている八代さんの事が気に入らない生徒によって、写真を消されてしまったのです。平たく言えば、嫌がらせで写真を消されたのです。・・・八代さんも大変、気の毒だと思いますよ?」
優「えー!・・・ど、ど、ど、どうして、どうして、そんな事がわかるの?杏子ちゃん!」
瀬能「いやぁ、だから、地道に写真を見ていたら、そういう写真が幾枚かあったので、多角形な痴情のもつれだな、と思っただけです。これだけは言えますが、八代さんの家出と、八代さんを含む多角形の痴情のもつれは別問題です。たまたま同時期に起きただけで。」
優「・・・八代さん。モテモテだねぇ。」
瀬能「いくら他人からモテても、一方的に好意を持たれたり、一方的に恨まれたり。・・・自分の知らない所でそんな事が起きてたら、私だったらウンザリしますよ。」
優「確かに。」
瀬能「どうして八代さんが家出をしたのかまでは私は分かりません。本人ではないと、その理由は分かりません。ただし、家出というものは、案外、大変なもので、しかも、未成年なら家出を遂行するのは至難の業であると言えます。まず第一に、隠れる場所です。今回は、漫画喫茶に隠れていたようですが、人が生活をする上で大事なものは、衣食住と言われています。どれが欠けても生活が成り立ちません。住む所です。雨風をしのげて、寒くもなく熱くもなく、衛生的であり、体が休める場所でなければなりません。・・・それって家でしょ?と思うかも知れませんが、その家を確保するのがどれだけ大変な事か想像がつくでしょうか?人間は、拠点となる住処が安全でなければ、何も出来ないのです。
食べるもの、着るものも、同様です。
食べるものが無ければ飢えて死にます。ずっと同じ物を着ていれば不衛生であり、病気の原因になります。それぞれ全てを解決してくれるものがありますが、何だと思いますか?優ちゃん。」
優「え?・・・クイズ?」
瀬能「答えはお金です。経済力です。経済力があれば家出というか、どこに行ってもすぐ生活する事は可能です。それを未成年の女子中学生が遂行できるとは到底思えません。中学生ですから、ホテルなり何なりに泊まると思ったので、せいぜい一週間分のお金くらいしか持っていないと踏んでいました。だから、その近辺で出てくると思ったのです。まさか、公園で野宿するなんて事も無いでしょうし。出て来る方法は違いましたが。まさか、チンピラの喧嘩に巻き込まれて補導されるとは。
八代さんという人は、学校でもトラブルに巻き込まれるし、外でも、トラブルに巻き込まれて、ある意味、運が無い人なのですね?」
優「う、、、うん、そういう言い方もあるかも。ね?」
瀬能「そういう事で、学校の七不思議。『消えた肖像』のタネ明かしは以上です。女子生徒の家出と、他の生徒の嫌がらせによる写真の消失。これが一緒に起きたので、やれ、七不思議だ、やれ、怪談話だ、って生徒達が勝手に盛り上がっただけだったのです。・・・優ちゃんも、面白かったでしょう?この学校の七不思議の話をしている時は?」
優「不謹慎だけど、ワクワクしたのは確か。」
瀬能「みんな同じだと思いますよ?・・・当事者じゃないから。・・・私はどう言ったらいいか分かりませんが、八代さん。家出するくらい、何かを悩んでいたのでしょう?家出をする前に、誰かに相談できたり、頼ったりして、大事にならなければ良かったのにと思います。中学生でしょう?これから高校進学です。警察沙汰の騒ぎを起こせば、内申点に響くのは当然の事と思います。生徒会の書記をやっている位ですから、頭は決して悪くないのでしょうから、知ってて、家出をしたと思います。相当の覚悟だと思いますよ?今後の将来、すべて棒に振るようなものですから。その覚悟だけは、評価に値すると思います。・・・優ちゃん、できないでしょう?」
優「家出したい、とも思わないし、そういう考えになった事もないから、分からない。・・・思い詰めちゃったんだろうねぇ。八代さんも友達に相談できていたら、未来は違っていたのかも知れないね。
私は良かったよ。杏子ちゃんみたいな友達がいて。・・・何でも相談できるし。」
瀬能「何でも相談されても困りますけどね。」
優「『消えた肖像』って言うけどさ。八代さんの場合、本当だったら、将来、有望だった訳じゃない?頭もいいし、スタイルもいいし、運動もできるし、欲しい物は何でも手に入れられる事が出来た未来があったはずなのよ。優秀な女の子としての肖像。それが家出で無くなっちゃった。消えたのは、八代さんの将来の姿だったのかも知れないね。」
瀬能「・・・優ちゃん。確かに、八代さんは家出なんかしなければ期待された未来を手に入れていたかも知れません。ですが、それも一つの可能性にしか過ぎません。選ばなかった、もう一つの未来。家出した今の未来の方が、もしかしたら、より素晴らしい未来を手に入れている可能性だってあるんですよ?それは誰にも分かりません。いつか時間と、八代さん本人が証明してくれる事なのです。『消えた肖像』、消えたのは将来の姿ではありません。私達が持っている八代さんの固執したイメージだったのではないでしょうか?皆がうらやむ優秀な姿こそ、本人が消したい、姿だったのだと思います。もっと自由でありたいと思う、純粋な気持ちが、事件を起こしたのだと、私は思います。」
優「・・・まとめたな?」
瀬能「・・・まとめました。」
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セノキョン 探偵倶楽部
『消えた肖像』
THE END
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※本作品は全編会話劇です。ご了承下さい。