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セノキョン探偵倶楽部 消えた肖像 C面

瀬能「十朱先生、こんばんは。・・・おはようございます?」

十朱「あ、おはようございます。」

瀬能「いやぁ、今日はだいぶ収穫がありましたよ。今日?・・・昨日?」

十朱「あのぉ、ドロボーじゃないんだから、玄関から入ってきていただいて、けっこうですよ?」

瀬能「ああ。そうですね。次回からそうします。それから、これ、鍵。ありがとうございました。」

十朱「ええ。」

瀬能「まさか警備会社も、音楽用の資材搬入口から侵入するものとは思いませんものねぇ?おかげで堂々と正面から侵入できましたよ。先生のおかげです。」

十朱「・・・瀬能さん。もう少し、小さい声で。小さい声でお願いします。」

瀬能「あ、申し訳ないです。学校側も不用心ですよね。特殊なドアにセキュリティつけないなんて。甘甘の甘ですよ。アハハハハハハハハハ。・・・あ、先生、もうご出勤の時間ですか?」

十朱「ええ。そうです。もう少ししたら、出かけようと。・・・何か、お飲みになります?」

瀬能「じゃあ、遠慮なく。」

十朱「・・・気持ちが落ち着く、ハーブティーなどありますけど?」

瀬能「ああ、いただきます。相変わらず、女子力が高いですね。見たまんま、見たまんまの感じです。」

十朱「あ、ありがとうございます。今、淹れますね。」

瀬能「こちらに、八代さんも居たんですか?」

十朱「ええ。そうです。・・・妙はずっと小さく丸くなっていましたけど。」

瀬能「へぇ。案外、気が小さい所があるんですね。もっと神経が図太いと思っていました。」

十朱「はい、どうぞ。・・・あの子は、見た目の派手さと違って、繊細なんですよ。」

瀬能「ふぅん。そうなんですか。」

十朱「今日も、自宅謹慎じゃないかな。一応、保護観察がついていますので。しばらくしたら、学校に来れるとは思うのですが。」

瀬能「まあ、一週間も家出して、警察沙汰になった訳ですから、しばらくはそうでしょうね。あ、おいしい。これ。」

十朱「・・・ありがとうございます。」

瀬能「あ、そうそう。学校の七不思議『消えた肖像』の謎が解けましたよ。」

十朱「え?」

瀬能「案外、怪談話、噂話っていうのは、蓋を開けてみればつまらない話でしたよ。」

十朱「あ、そうなんですか。」

瀬能「ま、先生は、事件っていうか、問題が起きて、すぐ転校されてしまったようですから、その噂話自体、聞いた事がないと思いますけど。」

十朱「ええ。そうです。」

瀬能「まさか、赴任してきた学校で、学校の七不思議として、消えた女子生徒、消えた肖像画、なんて言われているなんて思わないでしょうから。」

十朱「はい。・・・正直、聞いた時は驚きました。」

瀬能「先生の事も、少し、調べさせていただきました。・・・まあ調べると言っても、過去の事件記事を読み漁っただけですけど。私、死ぬ程、時間が自由になるので、そういう事、案外、楽にできるんですよ?十年くらい前の、面白くもない事件が記事に残っていました。

いつの時代も好き勝手やっている先生はいるものですね、当時も、何人も女子生徒に手を出した男性教諭がいたようです。女子中学生とセックスする自体、私は気持ち悪いと思いますが、いわゆる泣き寝入りする女子生徒も多かったみたいですね。中には妊娠が発覚して、何故か、女子生徒の方が停学だったり休学だったり処分を受ける。学校側がその先生の不祥事をもみ消していた、という事みたいですが。

よせばいいのに、正義感が強い、生徒会長がいたみたいで、その先生に詰め寄ります。まあ、私よりかは劣るようですが、美人で、頭もよく、何より、正義感が強い。その女の子、先生と学校側と、揉めて揉めて、ついに教育委員会にバレて、学校と先生は処分される事になりますが、その生徒会長も、処分されて転校させられるハメになります。ようは政治の圧力ですよ。いつの時代か知りませんが、喧嘩両成敗なんて記事になっていました。どう考えても、男性教諭と学校側が悪いと、私は思います。

その、生徒会長。十朱先生ですよね?」

十朱「・・・。」

瀬能「普通の女の子に圧力をかける時点で、教育側の陰湿さを感じますが、処分を受けたその先生によって、その後もある事ない事、いろいろ吹かれて、大変だったみたいですね。だから今は、そっと静かに暮らしている。名前まで変えて。」

十朱「・・・よく、調べられましたね。」

瀬能「ええ。そういう事を調べられる法律に強い知り合いがいるもので。素性を調べさせてもらいました。・・・十朱先生の事を、どうこうしようとは思っていませんから安心して下さい。それに、あなたにちょっかいを出すと、後先考えないバカな子が黙っていないと思いますから。」

十朱「・・・ははははははは。そうですね。」

瀬能「わかってしまえば、面白くもない話ですよ。女子生徒は失踪なんかしていない。学校側から存在を消されただけ、の話でした。」

十朱「・・・私もあの時、もう少し、社会とか法律とか、子供が太刀打ちできない、政治的にも経済的にも力を持っている人達と、戦う術を知っていたら、今と違っていたなと思います。でも、あの時は、許せなかったんです。・・・友達を傷つけるだけ傷つける、あのクズ野郎どもが。未来を、将来を失った子たちをいっぱい見て来たから、私は、許せなかったんです。」

瀬能「あーはいはい。そういう過去語りはいいですから。過ぎた話をしても仕方がありませんよ。過去は変わりませんから。十朱先生、あなたはあの時、良くやったって言われたいのですか?あの時の十朱先生がいたから救われた、って言われたいのですか?・・・ちがうでしょ?だったら、過ぎた話より、目の前にいる、猪突猛進なバカな子を面倒みてやる方が大切だと思いますよ?あの子、バカですから。」

十朱「・・・はぁ。・・・そうですね。」

瀬能「あと、消えた肖像画の方も、謎が解けました。あっちは、本当にどこから出て来たか謎な噂話でしたね。・・・校長室に答えがありましたよ?」

十朱「瀬能さん、校長室に入ったんですか?・・・鍵は?」

瀬能「ん?・・・開いてましたよ?施錠されていませんでした。おたくの校長、不用心にも程がありますね?」

十朱「はぁ。まあ、開いていればいいんですけど。無理に開けて鍵が壊れたりしたら、そっちの方が大変だと思いまして。」

瀬能「ピッキングとかそういう話ですか?」

十朱「えぇ?・・・もう、それはそれで犯罪なんじゃ?」

瀬能「・・・。怪盗?」

十朱「怪盗?」

瀬能「怪盗です。私、怪盗。盗むのが目的じゃないんで。怪盗です。ルパン、キッド的な?」

十朱「・・・そう?なんですか?」

瀬能「おたくの学校、そんな事、しなくても、教員室にキーボックスがあって、マスターキーがそこに入っているから、ピッキングなんかしなくても、学校中、入りたい放題ですよ?ガバガバです。ガバガバ。」

十朱「ちょっと、なんか、反対に、学校が心配になってきました。大丈夫なんでしょうか?」

瀬能「貴重品は家に持って帰った方がよいと思いますね?セキュリティ、ガバガバですから。」

十朱「はぁ。これからは、そうします。」

瀬能「学校の七不思議で、女子生徒と肖像画が一緒に消えてしまいます。では、その消えた肖像画っていうのは、何なのだろうと考えていました。女子生徒が消えたのだから、きっと肖像画も何らかの理由で、消えたと考えるのが普通です。三十年前とか言っておきながら、噂の出所は、十年前でした。なら、肖像画の方も、噂の出所はガバガバではないかと、考えたました。本当に、人間と同じサイズの絵だったのか、少女の絵だったのか、学校の玄関に飾られていたのか、検証が必要だと思いました。」

十朱「はぁ。」

瀬能「・・・十朱先生は、この話、興味が無い?興味がないなら、いいんですけど。」

十朱「・・・う、うう。うん。そういう、怪談話や都市伝説にそれほど関心がないから。・・・すみません。」

瀬能「年頃の女の子は、こういう話、大好きなのに。・・・十朱先生は変わってますね?」

十朱「そ、そうですか?・・・ハーブティー、おかわりなさいます?レモンティーもありますけど?」

瀬能「あまり飲み過ぎると、眠れなくなってしまうので。私、これから就寝タイムなものですから。」

十朱「そうですよね?ははははは。」

瀬能「先生は興味がないと思いますけど、答えだけ、教えておきますね。校長先生の写真でした。じゃあ、私、これで。」

十朱「ちょちょちょちょ!・・・待って下さい、待って。校長先生?校長先生の写真って、どういう?」

瀬能「・・・?、なんですか?私、帰って、モーニングショー見ながら寝るんですけど?」

十朱「待って。待って下さい。あの、肖像画?・・・消えた訳じゃないんですか?消えていなかったんですか?」

瀬能「・・・もともと肖像画なんてなかったんですよ。生徒の勘違いというか、ありもしない噂話が発端だったと思います。学校の玄関ホールは肖像画がかけられる程のスペースはありません。これは誰が見ても明らかです。そのぉ、私、キーボックスから鍵を拝借する為に、教員室におじゃましました。そこに、焼けた跡が壁の天井付近に見えました。普段、教員室を利用している人は当たり前過ぎて気が付かないと思います。

あ、焼けていると言っても、日焼けですよ。日焼け跡。

なんだろうと思って、校長室に入ったら、歴代校長先生の写真が飾られていました。教員室の日焼け跡とだいたい同じ大きさだから、以前は、歴代校長の写真が、教員室に飾られていたのだと思います。それだけの話なんですけど、校長室の大きな本棚。その本棚の隅っこの方に、一枚、写真が残っていました。たぶん、これも校長先生の写真ではないかと思います。教員室から校長室に移動させる時に、飾り忘れたのだと思います。

女性の校長先生でした。

用務員の人だか、他の教職員の人だか知りませんが、教員室から歴代、校長先生の写真を移す時、オバサンの写真があった訳です。先入観で、校長先生は男性だと思い込んでいる節がありますから、まさか女性の校長先生、オバサンですよ?オバサンの写真が紛れ込んでいれば、校長先生の写真だと思わず、飾らなかった。そして、本棚の隅っこに追いやられ、忘れられてしまった。

でも、古くからのPTA、学校関係者、OBOG、掃除に入る生徒もそうです。歴代校長の写真の数と、実際の歴代校長の人数が合致しないんです。一人、いないんですよ?

消えてしまったんです。一人の校長先生が。

そうなれば、学校の怪談話として、どんどんどんどん拡散され、終いには、消えた女子生徒、消えた肖像画、となったのではないでしょうか。

もしかしたら、もっと単純で、教員室から校長先生の写真が、一気に無くなってしまった、それ自体が、発端かも知れません。

校長先生の写真が消えた、ってね。

・・・どれもこれも私の推測です。噂話なんて、本当の出所なんてわかりませんし。調べようもありませんし。」

十朱「・・・はあ。感心しました。・・・凄いですね、瀬能さんは。」

瀬能「過去の七不思議の方は、それほど問題ではないんですけど、現代の方は、少し、厄介かも知れません。」

十朱「・・・妙の方。」

瀬能「先生の前だから隠さずに言いますけど、八代さん、先生の他に、付き合っている女性、いますか?」

十朱「え?・・・え!ど、ど、ど、どういう事ですか?」

瀬能「まあ、本命は先生なんでしょうけど。う~ん。付き合っていなくても、好意を寄せられているとか?八代さん、交友関係が派手じゃないですか?一方的に好意を寄せられている可能性もあると思うんですよね?」

十朱「いや、分かりません。妙に限って。・・・そんな事はないと思うんですけど。」

瀬能「まあまあまあまあ。本命は十朱先生ですから、そこはドシンと構えてもらって良いと思うんですけど。中学生同士の交友関係、恋愛関係って閉鎖的で、自己偏愛が強いじゃないですか?もしかしたら、八代さんはそういうのに巻き込まれている可能性も、否定できないかなぁって思いまして。」

十朱「瀬能さんは、何か、妙が危ない、何か、トラブルに巻き込まれていると、考えているんですか?」

瀬能「先生、落ち着いて。落ち着いて。警察沙汰になった以上の、トラブルはないですから。ねぇ?」

十朱「妙は、妙は本当に大丈夫なんでしょうか!妙にもしもの事があったら、」

瀬能「・・・本当に十朱先生は、八代さんの事になると、周りが見えなくなりますね。今のところは大丈夫ですよ?」

十朱「今のところ?・・・今後、今後?今後、おかしな事になるんですか?」

瀬能「いや、は、あ、今後も問題ないと思います。・・・二人の愛で乗り切って下さい。ね?」

十朱「困ります!困ります。困ります、なんとかして下さい!何とかして下さい、お願いします。お願いします。お願いします。」

瀬能「わ、わ、わかり、わか、わかりました!わかりましたって。・・・先生、離して、離して、離して!・・・こんな綺麗な女の人に、心配されるなんて、よっぽど前世で悪い事したんでしょうねぇ、八代さんは。」

十朱「・・・私、本当に、妙を見ていられないんです。あの子は、危なっかしぃから、誰かが見守っていてやらないと。本当にダメな子なんです。」

瀬能「分かりました。学校の七不思議、消えた女子生徒と肖像画。この件が、進展したら報告します。それに、また、学校内に潜入しないといけないかも知れませんし。その時は、また、十朱先生、よろしくお願いします。」

十朱「妙の為なら、協力は惜しみません。」


※本作は全編会話劇です。ご了承下さい。

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