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いち

お久しぶりです。よろしくお願いします

「君を愛することはない」


 つい数時間前に夫になった男に言われたセリフに、レシィはテンプレキタぞコレと脳内で叫んでいた。


 もちろん、表情には出ていない。淑女の微笑みってやつは便利に使うべきである。


 レシィは転生者ではないが、父がそれだし先祖にも何人かいる。この世界にも落ち人やら転生者が多いので、あちらの言葉など様々な

 文化が浸透してきているのだ。


「聞いているのか」


 返事がないことに焦れた男が苛立ちも露わに睨みつけてくる。


「聞こえましたわ」


 だから、レシィも返事を返す。


 内心の言葉は「こいつ、バカなの?」である。


 そもそも、なんで初夜の寝室で言うのが流行ってんの? 

 なんで男が上から目線なのが当たり前なの?

 政略結婚なんだから、お前の顔だけで好意持つわけないじゃん。そこそこイケメン風のくせにナルシーなの? 頭沸いてる?

 下克上って言葉知ってる? うん、知らんだろな。


 赤茶のストレートヘアをサラリと後ろに流して、猫のような翠の目を相手に向けたレシィは、遠慮とか気づかいとかをどこかに放り投げた。


「政略結婚でまともに顔を合わせたのが今日初めてのお相手に、一目惚れするほどわたくし面食いではございませんし、もちろん美的感覚は持ち合わせておりますので貴方を愛することもありませんけれど、こうして宣言なさるということは、白い結婚でよろしいのですね?」


 もちろん断わるわきゃねぇよな? との圧は忘れない。


 そらヤル気なら準備中になんか来ないよな? 今まだ化粧直しもしてないんだぞ? ドレスの背中は夫が開くものとして縫い合わせてあるんだぞ。脱ぐなってか? はい喜んで!


「なっ、は!?」


 なんだよ、やるこたヤリたいってか。最低。


 そもそも、この結婚。お相手の侯爵家が散財しすぎて没落待ったなし状態なのを、国王陛下の内緒のお願い♡ とやらで結ばれたガッチガチの政略結婚である。


 レシィのパパは商魂逞しい伯爵さまで、ウッハウハに金儲けしていたのを国王にロックオンされちまったのだ。迂闊。


「と、とにかく! お前はお飾りの妻だ! わかったな!」


 鼻息も荒くドカドカ出て行った後ろ姿に、ポツンとレシィは言葉をかけた。


「わたくしがお飾りなら、そちらもではなくて?」


 お飾りになるほど美しくはないがな。


「お嬢様」

「ええ」


 控えていた侍女に頷くと、レシィは行動を開始した。


「アレが愛人の元に行くのを誰か確認して。それから教会と役所」


 伯爵家から連れて来た侍女が、指示に従って使用人を動かしていく。ひとりがバルコニーから空砲を打ち上げてから部屋を出て行った。


 仕事が早いわぁ、とレシィはやっぱり伯爵家(うち)から皆連れてきて正解ね、と微笑む。


「お嬢様、髪を結い直します」

「ええ、お願い」


 おろした髪を華やかにまとめてもらうと、レシィは階下に降りた。


 広間にはテーブルと椅子とソファー、テーブルには飲み物と軽食が用意済だった。


「流石ね」


 うんうんと頷いたレシィは、家令に呼ばれて玄関に向かった。


 夜はこれからである。



続きは近いうちに必ず。

今年もお世話になりました。皆さまよいお年を!

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