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影の境界線 - 現世常世=異世界 -  作者: 九条飄人
異世界干渉編
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03 -改悪と私

 モナナがまた改悪した!


 モナナは外資系大手通販サイトで私はここに出店をしているけれど、ここの改悪により何度も痛い目を見た。


 今回も……


 利益率が下がった!

 売り上げも下がった!

 勝手に販売停止をさせられる!

 商品が探し難い表示に変わった!

 それなのに販売手数料は上げられた!


 この現実に落ち込む私。

 売り上げがどんどん上がっていたのに改悪後、一気に下がってしまった。


 私はこれまでの人生で、一度も「まともな会社」に雇われたことがない。


 それどころか、ブラック企業を引き当てる才能だけは人一倍優れているようで、タイムカードすら存在しない職場に在籍した経験もある。


 特別な学歴があるわけでもなく、際立った才能や技術を持っているわけでもない私。不景気が続くこの国において、私は必要とされない人間なのだと思う。


 自己肯定力を持ちましょう、なんて何かのセミナーで言ってたけどさ。


 自己肯定力なんかゼロよ、ゼロ。

 どうすりゃそんなもん持てるのか。


 それすら分からない。


 成功体験が大事です、とも言ってたね。

 でも成功体験とやらもアッサリ崩され否定される。


 今回の改悪もそれ。

 成功した!上手く行った!

 しばらくの間そう、ぬか喜びさせておいて後から崩していくのが世の常。


 成功からの安定経験が一切無い。


 多少の紆余曲折は誰にでもあるものだけど——


 しかし、振り返ると私のこれまでの人生——短いとは決して言えない年月の中で、成功よりも失敗や挫折のほうが多い。


 私が未熟なのか、選んだ道が間違っていたからか。理由は幾つも思いつくけれど、結局のところ、「うまくいかなかった」という事実だけがここにある。


 私に野望なんてない。


 過酷な労働時間に見合わない低賃金ではなく、普通の会社に雇われ生きられればそれで良かった。そんな簡単な望みすら叶わないまま、今を迎えている。


 低賃金でサービス残業の毎日。長い拘束時間に意味不明な雑務の押し付け。募集していた仕事内容と全く異なる面倒事もさせられる。給料はずっと据え置きで仕事だけはどんどん増やされた。


 最悪なのは、後から入ってきたヨイショ上手がトントン拍子に給与が上がり、そいつの仕事も私が裏でさせられ、得られた業績はそいつの手柄にさせられる。


 そんな経験ばかりが続いた結果。


 私はどんどん卑屈になる。

 会社に行くのが嫌になった。

 ここで働き続けてたら心身を病む。


 だからブラックな職場を辞め就活をする。

 やっと採用になった所がまた、ブラック会社だと身を持って知る。


 私はどんどん卑屈になる。

 会社に行くのが嫌になった。

 ここで働き続けてたら心身を病む。


 だからブラックな職場を辞め就活をする。

 ホワイト企業に雇われたい、ただそれだけの思いを胸に就活をする。


 しかし私を雇うホワイト企業は無い。

 雇用まで進めるのはブラックばかり。


 ホワイト企業や大手の真っ当な会社に応募しても、面接にたどり着くことすらできない。書類選考の段階で次々と落とされてしまう。


 これまでに受け取った不採用通知、いわゆる「お祈りメール」の数は膨大で、一時期は数えていたが、420通を超えたあたりで数えるのをやめた。


 その後も増え続けているのは自分が1番知っている。具体的な数を知れば知るほど、気分が落ち込むので数えなくなった。


 選んでくれる企業も雇ってくれる会社も、どこにもない。何度も挑戦して、何度も断られた結果、普通の就職は諦めるしかなくなった。


 それで選んだ道が、自営業。


 ネットで色々調べ、たどり着いたのはモナナというECサイト。簡単に出店できる仕組みが売りのプラットフォームだ。


 だけど、いざ始めてみると分かったことがある。


 この会社は、出店者の成功をこれっぽちも考えていない。


 求めているのは、出店者から月額使用料を取ること、そして高額な販売手数料で利益を横取りするかのようなやりかたで金を吸い取ることだけ。


「出店者を儲けさせたい」という考えは微塵も感じられない。どれだけ頑張っても薄利にさせられる。極端な話、絞れるだけ絞り取れればいい、のだろう。


 …極端どころか、それこそがこの企業の本質なのだと今なら断言できる。


 何度も何度も改悪改悪。売り上げが上がった途端、出店利用者が不利になる改悪がやってくる。


 けれど他に良いECサイトが無く、使用を止めるわけにもいかないのが辛いところ。


 最近の私は気持ちが落ち込むばかり。

 販売数や利益額を見る度に胃が痛くなる。

 改悪前の売り上げを思い出しては悲しくなる。


 そんな相次ぐ改悪に、あの手この手で工夫をし何とか売れるようにしてくれているのが新月くん。


 仕入れの目利き、改悪後の作戦。

 商品の見せ方や配送方法の見直し等、全てを任せてしまっている。

 私は商品が売れたら梱包と発送をしているけれど、それ以外の全てを新月くん任せだ。


 その他、私の代わりに老人の送り迎えをするアルバイトまでしてくれている。


 新月君がいなければ今頃、確実に人生が詰むゼロ収入に陥っているだろうね。


 情けない。

 申し訳ない。


 そんな気持ちで心が埋め尽くされていく…


 私は不出来だ。


 もしも人間の出来具合をランクで数値化できるなら、マイナス100くらい……もっと低いかも?


 少し調子が良くなれば何かが起きる。

 順調になれば横槍が入る。


 今までずーっとそうだった。


 自分の努力不足や怠惰以外の外的要因で叩き落される。

 それを何度、繰り返したかな。


 それとも、まだまだまだまだ努力が足らないのだろうか。

 頑張りが足らず、怠惰なのかな。


「努力している頑張っている、と自分で言う人は努力も頑張りも足りていない」

「努力をいくらしても、結果が出ていないのなら何もしていないのと同じ」


 成功していたり素敵な生活をしているキラキラな人がSNSでそう、発信しているのを見たっけ。


 運も実力のうち、なんて言葉があるのだから単に実力が無いから運も無い。

 それだけの事かもしれない。


 その人達から見れば「かもしれない」ではなく実際そうなんだよね……たぶん。


 生きるのが嫌だ……

 何もかもが面倒でこの世界から消えたい……


 ……だめだめだめ。


 そう考えだすと、とことん落ち込んでしまう。

 私のマイナス思考は雪だるま式に膨らんでしまう。

 そうなると私は、ますます皆に迷惑をかけてしまう。


 落ち込めば落ち込んだだけ、体が不調になり寝付けなくなる。

 寝付けなくなれば、それに応じて体調が悪化し新月くんに頼る事すら難しい。


 それは避けなくちゃ。

 身体は資本、とはよく言ったものだね。


 だから私は考えるのを止めスマホのアプリゲームを始めた。

 これが現実逃避でしかないのは私が一番わかってる。


「そんなだからダメなんだ」と成功者が私を見たら言うのだろう。

 ……言う価値すらも無いと判断し、遠くから蔑みの目でチラ見するだけかもしれないけど——


 今の私には現実逃避も生きる上で必要なんだよ。


 私は私の心にそんな説明をし、アプリを起動させた。


 でも、このアプリも課金煽りが酷くてストレスが溜まる。それなのに、出てくるキャラが好きだし、いくつかのSランクキャラを持っているから惰性で続けているんだよね……

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