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「ユリアンナが砕けていると感じる僕の一面。それは僕が警戒心を解いている証でもあるんだ。その上でワイルド……。それは僕の勘違いだね」
そう言ってサラッと髪を揺らす、ドルフ第一王子の微笑の破壊力は、すさまじい! その瞬間久々に推しフィルターが起動してしまった。
「僕の近衛騎士達と、恋愛について話すことがあってね。彼らが言うに、女性は自分のことを守ってくれる、強い男性を好むと。それに少し強引で、俺様なところが好まれる……と聞いてしまい、驚いたよ。でもその場にいた十人の騎士達が同意を示すから、そうなのかと思ってしまった」
……何ですか、そのピュア過ぎる話は! 騎士をしているぐらいのマッチョマンな彼らの価値観を、まるっと信じてしまうなんて。私の推しは、なんて可愛らしいのだろう!
「それに女性は、常に自分が好かれている、求められていると実感できないと、不安になりやすいと聞いたよ。熱烈なアピールは、絶対にした方がいいとアドバイスされて……」
なるほど。近衛騎士達にアドバイスされたワイルドで熱烈なアプローチ。これをここ一年、していたというわけね。なんてアドバイスを、私の推しにしてくれたのよ、近衛騎士め!
思わず離れた場所で、こちらを伺う近衛騎士を睨んでしまう。
「彼らにアドバイスを受けたから……というのも勿論あるだろうね。でも、ずっと……狩猟大会で出会ってから、ユリアンナに心を惹かれていたのは事実。気持ちが昂ると、自然と押し倒したくなる……これは嘘偽りない僕の気持ちだ。でもあまりにもこの気持ちが高まるから、自分が病気なのかと心配していた時。ゼインの気持ちを知ってしまい……」
ここに来てあの親切な第二王子であるゼインの名前が登場し、少し驚くことになる。
同時に。
今さらドキリとすることになった。
だってワイルドで熱烈なアプローチだったから。それはゲームの推しのイメージとかけ離れていた。おかげで「何しているんですかー!」と、ツッコミとノリで拒絶できたが。
もし推しのまま、ゲームモード全開で迫られたら……完落ちするところだった。そうなったら、いろいろと大変なことになったと思う。
近衛騎士達を睨んだことは、間違い。よくぞアドバイスしてくれた!だ。しかし、ゼインの気持ち……? なんのことかしら?
「……聞くと僕が遊学でいない間、王宮に足を運んだ際、よくゼインと会っているとか」
「そうですね。確かに伺う度にお会いすることになっています。ですがゼイン第二王子殿下は、王宮に住まわれていますから」
「それだけが理由だと思うのかな?」
そう言って首を傾げるドルフ第一王子が、なんだか輝いて見える。
一度、裏の顔になってくれないかな。
そうしないと推しフィルターが、推しフィルターが……。
「そ、そうですね。よく王宮の庭園でお会いするので、ゼイン第二王子殿下の通り道かもしれません」
クスッと笑う、推しの笑顔に、全身から力が抜けそうになる。どうしてここにきてゲームモードなの!
「ゼインもユリアンナのことが好きだと言ったら、驚くかな?」
「えっ……え、それは……殿下の婚約者として仲良くくださる、という意味ですよね?」
「僕と同じように、ユリアンナを抱きたいと思っているんだよ、ゼインも」