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「神殿の誓約の件を話すことで、ユリアンナの信用を得る。同時に、僕を遠ざけることができるとゼインは思った。神出鬼没で僕が現れることは、ゼインも気づいている。そんな状態では、ゼインもユリアンナに手を出しにくい。神殿の誓約があれば、わざわざ遊学先から僕が戻っても、何もできない。そうなれば僕が王都へ頻繁に戻って来ないだろうと、ゼインは考えたと思うよ」
「でもそれで殿下を遠ざけることができても、ゼイン第二王子殿下も、何もできませんよね?」
するとドルフ第一王子は「そうとも限らないよ」とその美しいブロンドを揺らす。
うーん、本当にクオリティが高い!
「神殿の誓約は守られるべきだが、長期に渡る祈りの場合、状況が変わることもある。本人を取り巻く環境が変わったり、病気にかかったり、いろいろとあると思う。そう言った場合に『誓約の解約』もできるようになっているだろう?」
「確かに! ということは私の信頼を得て、ドルフ第一王子を遠ざける。私が『誓約の解約』をするような事態を作り、そこでゼイン第二王子殿下は、私と既成事実を作ろうとした。さらに私が殿下を嫌いになるように、変な贈り物をして、メイドや商人の娘と情事を楽しんでいると、嘘を吹聴したのですね?」
ドルフ第一王子は、そこでこう付け加える。
「贈り物に関しては、ゼインの願望も含まれていたのでは? 何せヌード画を画家に描かせているぐらいだよ。この下着姿で自分の前に現れて欲しいと、思っていたのかもしれないね」
「な、殿下! そんな破廉恥な!」
顔が赤くなる。心臓もドキドキする。
この様子はドルフ第一王子も分かっているはずなのに、私の手をぎゅっと握った。これではまさに火に油を注ぐで、私の顔は炎上し、心臓は大噴火寸前!
「ゼインの策がうまくいなかったのは、僕のおかげだと思わない? ユリアンナが神殿の誓約中であるにも関わらず、しつこく神出鬼没で会いに来ていたから、ゼインは手出しができなかった。僕がそこまでする理由も、分かるよね?」
握っていた手をそのままぐっと引っ張ると、私の上半身はドルフ第一王子の胸の中に、すっぽり収まっていた。
「婚姻前なのにユリアンナを求めたのは、半分は僕の願望。半分はゼインの魔の手に落ちないようにするためだった。王族の婚姻では、婚前交渉は禁じられている。でもゼインの隠し部屋にあるあの姿絵を見せ、本人の言質をとることができれば、僕が暴走としたとは思われない。婚約者を守るための、やむを得ない対応だと分かってもらえるはずだよ」
「え、殿下。でもゼイン第二王子殿下の悪事は、もう分かっているのですよね? 王族の婚姻に関する教訓を悪用し、私のこ」
その先を話せなくなったのは……ドルフ第一王子に、唇を塞がれたせいだった。
























































