第六十二話 朝
第六十二話 朝
瞼に感じる強い光で、目を覚ます。
「っ……」
ぼやける視界で目を凝らせば、青くなり始めた空が見えてきた。視界の端には眩しいばかりに輝く太陽も。
体を起こそうとするも、全身が鉛の様に重くて気力がわかない。この感覚は……魔力切れか。
「シュミット君!?」
自分の名を呼んだ人物へと顔を向ければ、慌てて駆け寄ってくる金髪碧眼の美少女がいた。
「……天使?」
「え、それほどでもあるけど?」
「なんだ、お馬鹿様か……」
「おうどういう意味だ相棒」
何やら腰と頭の後ろに手を当ててポーズをとった人物がいたので、そっと目を逸らす。が、こっちを見ろとばかりに頭を掴まれた。
勘弁してほしい。馬鹿丸出しのポージングだが、美人は何をやっても美人なのだ。スタイルもいいから正直不覚にもドキリとした自分がいる。
相棒をそういう目で見るのは避けたい。
「……生きているよね」
「当たり前です」
「良かったぁぁ……」
無駄に整った顔をへにゃりとさせて、アリサさんがその場にへたり込む。その肩を支えようとするも、体はやはり動かない。
「どういう状況……ああ、そうだった」
ぼんやりとしていた頭がようやく動き出し、ついで周囲の状況も把握でき始めた。
ここは焼野原になった吸血鬼の村で、自分はダミアンを討った直後に気絶。アリサさんにウォルター神父共々回収してもらった……はず。
そして自分は地面に敷かれた布に寝かされ、丸めた毛布を枕にしている状態か。
「ダミアンは死にましたか?」
「さっき先生……第一エクソシストのジョナサン神父が確認してきたよ。間違いないってさ」
「なら、良かった……」
ほっと胸を撫で下ろす。
吸血鬼と戦うなんて昨夜が初めてだったので、きちんと殺し切れたか少し不安だったのだ。なんせ不死身と呼ばれる様な存在だし。
「エリザベートとか言う女ヴァンパイアも第一エクソシストの人達が討ち取って、村にいた下級ヴァンパイアも殲滅完了。こっちの完全勝利だってさぁ」
「捕らわれていた人達は?」
「君とイオ神父が助け出した女の人達は全員無事。言ったでしょ、完全勝利だって」
彼女の白い手がポンポンと頭を撫でてくる。
それが妙にむず痒くって、しかし心地いい。だが言葉にすれば確実に調子にのるお馬鹿様なので、目を逸らす。
「なら……」
「おおっ、目が覚めたのですか!」
こちらの声を遮り野太い声が聞こえてきた。
誰だろうと思っていると、アリサさんが背中を支えて上体を起こしてくれる。それに小さく礼を言い、歩いてくる人影に視線をやった。
「貴方は……?」
「私はジョナサン。第一エクソシストに所属しています」
神父服を着た、これまた聖職者らしからぬ外見の人物が立っていた。
二メートル前後の長身に筋骨隆々とした体つき。顔には縦横に走る十字傷をつけ、瞳も鷹の様に鋭い。
だが、表情は非常に柔らかい人だった。見に纏う雰囲気も穏やかで、そこだけは神父さんらしくもある。
そんな彼の隣にはそれぞれイオ神父とウォルター神父が立っていた。身長差のせいか、イオ神父だけやたら小さく見える。彼も平均からやや低い程度のはずなのだが……。
「シュミットさん。貴方には感謝してもしきれない恩が出来てしまいました。私程度の言葉では足りませんが、それでもどうかお礼を言わせてください」
片膝をついて視線を合わせてきた彼に、そっと首を横に振る。
「いえ、僕達は依頼を受けてそれを実行しただけです。予定通りの報酬が貰えるのならそれで構いません」
本音としては『想定外の敵と戦ってへとへとだから何かよこせ』と言いたいが、彼らとて昨夜命懸けで戦った戦士達だ。
ついでに女神様に転生させられた身としては、聖職者にふっかけるのは気が引けた。
「なんと……!とても無欲な方なのですね。貴方の優しさに心からの感謝と、今後の道行きに幸福がある事を祈らせて頂きます」
感極まった様に顔を歪ませた後、真剣に祈り始めたジョナサン神父。ウォルター神父と言い、教会戦士はこういう人ばかりなのだろうか。
……ばかりなんだろうなぁ。
「それと……貴方にはもう一つ感謝の言葉を送らなければならない事があります」
「はい?」
陽光を背負った十字を手に、彼が顔を上げる。
「……イオ神父、ウォルター神父。席を外して頂きたい」
その言葉に、何故かウォルター神父が目を見開いた。
「なんと!いくらジョナサン神父の好みにシュミットさんが一致するとは言え、動けない相手になど道徳に反しますぞ!」
「え゛」
「ちがぁう!そういう話ではありません!」
力強く否定するジョナサン神父の首に、細い腕が絡みつく。
イオ神父だ。女性物の衣服から神父服に着替えた彼が、所謂『あすなろ抱き』をしていた。
「ジョナサン神父……」
「い、イオ……」
「信じていますからね……?」
「はぃっ……!」
妖艶な笑みを浮かべてそっと耳元で囁いてから離れたイオ神父と、頬を真っ赤にして恥じらう乙女の様に顔を俯かせるジョナサン神父。
「相棒、僕は何を見せられているのでしょうか」
「相棒、教会戦士とはこういうものだよ」
「そうですか……」
「そうなんだよ……」
一部の貴腐人……失礼。貴婦人たちには垂涎の光景なのかもしれないが、あいにくと僕もアリサさんもそう言った趣味はない。
というかイオ神父は着替えているのに自分だけまだ女装したままなのだが。落ち着かないので誰か着替えさせて……ダメだ。任せられる人がいない。
その視線をどう受け取ったのか、イオ神父が軽く会釈してウォルター神父と去って行った。
「おほん。安心して下さい。我らが女神に誓って動けない貴方にいかがわしい事をしないと誓いましょう」
「え、ええ」
「ああ、無論。シュミットさんに魅力がないわけではありません。大変お美しいと思っておりますよ」
「どうも……」
何だろう。まだ少ししか喋っていないがジョナサン神父が紳士なのはわかる。
わかるが、それとは別に若干熱を帯びた目がとても恐い。
「安心して相棒。この人は私に戦い方を教えてくれた先生でね、人格と腕前は信用できるよ」
「ありがとうございます、アリサ様。しかし、人格と腕以外で信用できない部分とは?」
「……黒魔法とアンデッドが絡んだ時の忍耐?」
「失礼な。私はいかなる拷問や艱難辛苦を受けようとも世界の敵に屈する事はありませんよ?」
違う、そうじゃない。
怒るより悲しそうにする神父さんに、恐らく二人同時に同じ事を思った。だが、その欠点は今の所遭遇した教会戦士全員に当てはまる事なので……いや、イオ神父は比較的冷静だったか。
「シュミットさんもまだお疲れの様ですので、本題に移らせて頂きます」
ジョナサン神父が気を取り直し、こちらをジッと見てくる。
「先に私の昔の名前……教会に入る前の名前を名乗らせて頂きます」
「ああ、そう言えば私も知らないっけ」
「ええ。基本的に、教会戦士となった者は世俗から離れる事になっていますので」
まあ、確かに教会戦士が実家と仲が良かったらまずいだろうな。主に人質的な意味で。
教会戦士の人達は屈強だが、慈悲深い。信仰の為に何を犠牲にする事も厭わないだろうが、人間の心には必ず限界がある。
肉体が頑健なら精神を攻める。昔からの常套手段だ。
「私のフルネームはジョナサン・フォン・『イエーガー』。兄の名はジョセフ・フォン・イエーガーです」
「その名前は……!?」
ソードマン……ジョセフ。
イエーガー家の三男坊だった彼に、弟がいたのか。それも、教会戦士になっていたとは。
「彼の蛮行には、理由があった。しかしそれで犯してきた罪が許されるわけではありません。今この一瞬だけ、教会に属する者ではなく親族としてお礼を言わせて頂きたい。兄を止めてくださり、ありがとうございました」
鷹の様に鋭い目を伏せ、頭を下げるジョナサン神父。
言われてみれば、彼の顔立ちや瞳はソードマンによく似ていた。
「……恨まないのですか?」
「いいえ。兄は、ずっと苦しんでいました。詳しく語るのは……よしておきましょう」
困った様に笑う彼に、心の中で感謝する。
殺した相手の事を、詳しく知ろうとは思えない。今はかの剣士との戦いを『記録』としてしまっているが、それでも忘れたわけではないのだ。
「ただこれだけ。罪人用の墓地に埋葬する際に兄の顔を見ましたが……とても、安らかな顔をしていました」
「……その事なら、アリサさんにお願いします」
そう言って彼女に視線を向ける。
「彼は銃に何か思い入れがある様でした。その心の棘を抜いたのは、彼女の銃弾です」
「ええ。貴女にも感謝を、アリサ様」
「いえいえ。偶然ですし……あの時は先生のお兄さんだなんて知りませんでしたから」
「それでも、です」
深く、その大きな体を折り曲げジョナサン神父……いや、『ジョナサンさん』が頭を下げた。
「本当に、ありがとうございました」
「……どう、いたしまして」
「い、いやぁ、照れますなぁ」
なんだかむず痒くなって視線を逸らせば、アリサさんも同じ様子で頬を掻いていた。
そんな自分達に、顔を上げた彼は苦笑を浮かべる。
「困らせてしまった様ですね。失礼しました。……では、次の話に」
そして、彼の表情が教会戦士のソレへと戻る。
柔らかい口調はそのままながら、視線はこちらを射貫く様に鋭い。
「せ、先生?」
「アリサ様。確かに私は貴女に白魔法を教えましたが、しかし『秘術』と呼ばれるものまでは教えていない……いいえ、そもそも教える事ができなかった。なにせ、『聖女』様の技を再現できた者などこの三百年おりませんでしたから」
あー……。
たらりと、自分の頬に汗が流れる。
「そもそも、あのお方の記録は黒魔法使いやアンデッドとの戦いで酷く曖昧な物しか残っておりません。教会に所属する人間でさえ、その名を知らぬ事もあります。私とて断片的にしか聞いた事のない程です」
鷹の様に鋭い目が、じろりとこちらを向いた。
「アリサ様がシュミットさんに教えたとも思えない。ウォルター神父より報告のあった剣技。いったいどういう事でしょうか?」
嘘は許さないという瞳。それに見つめられ、どうしたものかと考える。
できれば転生者である事を広めたくはない。ただでさえアリサさんやリリーシャ様、アーサーさんと秘密を知っている人が増えてきているのだ。これ以上は勘弁願いたい。
だが、この眼は生半可な嘘や誤魔化しなど通じないだろう。であれば……。
「こう」
「こう?」
「人知の及ばぬ女神様の力が、よくわからないけどこの身に、ぐわっっと!」
嘘は言っていない、嘘は。
何ならこの力がどういう原理なのかも自分にはわからんのだ。むしろ誰か説明してほしい。
この苦し紛れの言葉にジョナサン神父は、
「なるほど……!」
なんか納得していた。
「え、それでいいの先生」
蒸し返さないでくださいアリサさん。
「ええ。聖女様も時折、『こう、神様のお力がぐわっ!っとオイん中に!』と仰っていたそうなので。そういう事もあるのでしょう」
待って。それ本当に聖女様?
自分の中で聖女という単語が意味不明の存在になってしまったのだが。
「きっと世界の仇敵であるヴァンパイアを討てと、女神様がお力を貸して下さったのです……なんたる奇跡!」
「……そうですね!」
よくわからんがもうそれでいいや。
嘘ではないし。実際女神様から貰った力なのだから。疲れているので難しく考えたくない。
「では、私どもはそろそろ出発します」
「……どちらへ?」
「アリサ様が撃墜したというヴァンパイアの使い魔。死に際に放ったという事はそう遠くに飛ばす事はできないはず。何らかのメッセージを受け取る者がいたかもしれません」
胸に提げた陽光十字を手に、ジョナサン神父が立ち上がる。
「負傷者の治療や弾薬の再分配等で遅れてしまい、もうその地にはいないでしょう。しかし痕跡を探り、必ずやアンデッドと繋がっている存在を浄化しなければなりません。ダミアンが何故城を爆破させたのかも気になりますが、それは後続の部隊に任せましょう」
「……ちなみにですが、それが人間だった場合は?」
ただの興味本位での問いかけに、彼はニッコリと邪気のない笑みを浮かべた。
「無論、浄化します。黒魔法に飲まれ、世界の敵へと堕ちてしまった者に安らかな眠りを届けるのも我ら教会戦士の役目ですから」
……殺気もないのに、誰かを殺すと宣言する人を初めて見た。
そこらのチンピラが脅しで『殺す』と言うのとはわけが違う。息をする様に、当たり前の事として黒魔法に関わる人間も始末すると言っているのだ。
黒魔法、アンロックはされているが絶対に習得はしないでおこう……。
「では、これにて」
「あ、すみません。最後にご質問が」
「何でしょうか?」
不思議そうに振り返った彼に、一度息を吸い込んでから口を動かす。
「教会は、龍を……ドラゴンをどう思っていますか?」
「……相棒?」
その問いかけに対し先に反応したのはアリサさんだった。しかし、あえて彼女の方に視線を向ける事はしない。
ただ、ジョナサン神父の答えを待つ。
「……宿敵です」
彼は、静かな声でそう言った。
「ドラゴンの通った箇所、そして現在地と思しき場所の近くでは明らかにアンデッドの自然発生が増え、黒魔法を扱う者までもが増えている。教会はドラゴンが黒魔法に無関係な存在ではないと判断し、いずれ確実に浄化すると決めております」
「その話、街の教会では聞いた事がありませんが」
「黒魔法に関する話は信用できる者にしか伝えられません。ドラゴンの力を欲して黒魔法に手を出す存在がいてはなりませんから」
道理だな。
ドラゴンとは、この世界で恐らく最強の生物だろう。それに近づかんと手を伸ばす者だっているはずだ。
実際、それで子孫にまで呪いを残した阿呆がいる。
「そうですか……信用して頂き、ありがとうございます」
「いいえ。ヴァンパイアを討ち取った貴方を信じずして、誰を信じるというのか。後日、教会から正式な感謝の印が届くかと。私と数名の教会戦士は例の受け取り主を探しに行きますが、捕らわれていた方々を送る者達もいます。どうかその者達とお帰り下さい」
「わかりました、ジョナサン神父。ご武運を」
「あ、先生。お気をつけて」
自分の言葉に続き、アリサさんが少し慌てた様にそう言う。
こちらにもう一度深く一礼をし、彼は小走りで仲間の元へと向かっていった。それを見送り、小さくため息を吐く。
ドラゴンと黒魔法の関係、か……結果的にだが、やはり白魔法を習得したのは間違っていなかったかもしれない。
それに教会から感謝の印がくる。なら、そこから人脈も広げられるか?いや、たぶんアーサーさんが既にかなり食い込んでいるはず。自分がやるべきはそちらではない。
「ねえ、シュミット君」
「なんですか、アリサさん」
「どうして、あんな事を聞いたの……?」
そう問いかけてきた彼女に、小さく鼻を鳴らす。
「ただの興味本位です。深い理由はありません」
「……そっか」
「それより」
じろりと、アリサさんを見上げる。
「どれぐらい減ったんですか」
「な、何の事かにゃぁ?」
「寿命です。真面目に答えないのならこの場でゼロにしますよ」
「物騒すぎるよ相棒!?」
これでももう一発殴らないだけ温厚な方だと思って頂きたい。
青筋を浮かべながら睨みつければ、彼女は観念した様子で口を開いた。
「その、たぶん、残り二年ぐらい」
「一年も減ったわけですか……」
「えっと、その。シュミット君が気にする事じゃないよ!」
「はい」
「そこはもうちょっと気にしてよぅ!?」
ショックを受けた様な彼女に、ため息を吐く。
「僕は貴女を守ろうなどと思った事はありません。命を大事にさせたいのなら、足を切り落として冒険者なんぞやめさせます」
「本当に物騒だよ相棒……」
ドンびくな。流石に例えなのだから。
「貴女を頼りにしているから、勝手に突っ走ってほしくないんですよ。相棒」
「ぁ……」
「死ぬのなら死ぬべき時にしてください。無駄死にしようと言うのなら、先に僕が殺します」
思い出しただけでも腹がたってきた。
何が『下がって』だ。ふざけているのか。あの場でアリサさんが限界を迎えたとして、ダミアンが素直に自害を許すとでも?
間違いなく利用する。あの老人はそういう奴だ。一度打ち合っただけでわかる。
そうなれば逃げるどころではなく全滅は間違いない。あのタイミングだと多分エリザベートも死んでいなかったから、自分と教会戦士達は二体の純粋種と亜竜とやらに囲まれるのだ。
黒魔法とドラゴンが無関係でないのなら尚の事。あの時アリサさんがとった行動は紛れもないミスである。
「背中、任せているんですから。こちらにも任せてください」
「……うん。そうだね、相棒」
何やらまたこちらの頭を撫でてきたアリサさん。
よもやこうすれば自分が大人しくなると思っていないだろうな。いや、否定はできないけども。
「……良し!じゃあお詫びも兼ねてちょっとだけサービスしてあげよう!」
「は?」
「えい!」
背中を支えてくれていた彼女の手が離れたと思ったら、肩を掴まれて誘導される様に倒された。
何事かと思えば、後頭部に柔らかい感触が伝わってくる。
「な、なぁ……!?」
「膝枕。まだ動けないんでしょう?だらしない相棒に、この天下一の美少女が膝を貸してあげようじゃないか!」
彼女の顔が見れない。物理的にも精神的にも。
かなりの大きさを誇る胸で視界が遮られているし、自分でもわかる程に耳が熱い。たぶん、首から上は真っ赤だ。
それに枕になっている彼女の太もも。スカートのすべすべした感触越しにどこまでも沈んでいく様な柔らかさと、それでいてしっかりと反発する感覚が伝わってきていた。
思考が停止する。何も考えられない。
「いやぁ、こんな事めったにしないんだからね!光栄に思いたまえよシュミット君!」
「はい……」
「はい!?そこは『余計なお世話ですお馬鹿様』とか言う所じゃないの!?」
「はい……」
「本当に大丈夫なの相棒!?」
「問題ないので放っておいてください……土にかえりたい……」
「それ大丈夫じゃないやつ!?待って相棒、ちゃんと体の傷は治したはずだよね。どこか痛んだりしていない?内臓とか、変じゃない?」
「血管が破裂しそうです……」
「死んじゃう!?」
いっそ殺せ。
未だ身動きの取れない自分を膝にのせたまま、ワタワタと慌てた様子で手を動かす彼女。そのせいで眼の前……いや眼の上でたゆんたゆんと揺れる胸。あと少し彼女が体を前に傾けたら、乳と太ももにサンドされる。その瞬間自分が社会的に死ぬのだけはわかった。
その前に物理的に殺してくれ。とりあえず、この状況でさえ己の下半身が反応しない事を祈るばかりである。
……そう思って視線を自分の腰に向ければ、相変わらずスカートを履いたままの姿があった。
そう言えば自分、ダミアン相手に啖呵を切ったり先ほどの真面目な話の最中も女装したままだったな。
何なら今まさに女装をしたまま膝枕をされている。
「死にたい……」
「生きるのを諦めないであいぼぉう!?」
とりあえず生理現象が起きてしまうのだけは回避した。ギリギリだったけど。
読んで頂きありがとうございます。
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