第四十五話 狩り
第四十五話 狩り
「ただいまー」
「おかえりー」
「お疲れ様です」
宿に戻ってきたアリサさんは、眉をへにゃりとさせながら部屋に入るなり盛大なため息をついた。
「聞いてよシュミットくぅん、リリーシャ様ぁ」
「はいはい」
「ニール子爵と話してきたんだけど、実はこの街の守備隊は既に半壊しているんだってぇ」
「滅茶苦茶やばいですね」
開幕ぶっこんできたなこの人。
「王都へ続く道なんて国家クラスで重要な場所だから普段から色んな部隊が巡回しているし、異常があったらこの街から軍が出るんだけどね?最初の村が消えた段階で向かった隊員が誰も帰ってこなかったらしくって、警戒しながら向かった次の部隊も……」
「では、王都側の軍隊は?」
「そっちはよくわからないってさぁ。どうにも指揮系統が混乱しているみたいで、碌に話が通じないとか。ただでさえ距離があってやり取りしづらいのもあるし」
「なるほど……」
彼女の話を聞きながら、少しだけ開けていたカーテンを閉める。最後にそこから見える通りの様子を確認しながら。
「この街の新聞によると謎の怪物出現から今日で八日目だそうですが、怪物の詳細について子爵は?」
「今は王都への直通ルート以外の道の警備で精一杯。今回の問題に関しては王都側の部隊に任せるってさぁ」
「……それは、仕方がありませんね」
「流石に初手で半壊しちゃったって言われたらねぇ」
ここも中々に大きな街だが、動員できる人数には限りがあるだろう。港があり人の出入りが激しい分、その警備にかなりの人手が必要なはずだ。
そこに村を幾つも滅ぼした正体不明の怪物相手に戦闘など、一歩間違えれば都市機能の崩壊さえ見えてくる賭けは管理者としてできまい。
「ですが、貴女が無事に戻ってくる事ができたあたりレイヤル家とは繋がっていない様ですね」
「そうだねってあいぼぉう!?まさか私を囮にしたのかい!?」
「貴女なら数十人に囲まれても自力で突破できると信じていますので」
「いやぁ、照れるなぁ相棒!!」
「アリサちゃんって偶にお馬鹿になるよね」
お馬鹿様はお馬鹿様ですよリリーシャ様。『わかっていて乗ってくれる』所もありますが。
彼女が襲われている様なら、こっちにだって襲撃があったはずだ。本命はリリーシャ様だろうし。
自分達の方に何か来ていたらアリサさんと合流を目指すつもりではあった。たぶん、この人も同じだろう。
ただし、護衛対象の前で全てを語る気はないだけで。
彼女もこれまでの襲撃で精神的にかなり厳しいはず。せっかく裏切り者が判明したのに、ここにきて『誰が敵と繋がっているかわかりません』と疑心暗鬼にはさせたくない。
警戒心は持っていてほしいが、気にし過ぎて精神を病んでもらっても困る。護衛任務と言うのは、思った以上に難しいのだな。
「アリサさん。戻って来て早速悪いのですが……」
「この街を発つ準備だね、シュミット君」
「はい」
「え?え?王都の守備隊が解決するのを待つんじゃないの?」
混乱した様子のリリーシャ様に、アリサさんが小さく首を横に振る。
「そうしたいのは山々だけど、それはレイヤルも想定しているはずだからねー。少なくとも村を一晩で無くせる『殲滅力』を持っている相手に、時間を与えたくないよ。一応、ニール子爵に私からの伝言を王都に届けて頂く様頼んだけど……」
ニール子爵の部隊が使えず、王都の守備隊も混乱しているのなら時間は相手の味方となった。なんせ、件の怪物がレイヤル家の隠し玉だった場合こちらと相手で情報を伝達する速度に差が出過ぎる。
それこそ、レイヤル家の子飼いを街に送り込んでその辺のチンピラに爆弾なり銃なり持たせるだけでも自分達にとっては厳しい。
街中で突然自爆攻撃なんぞされたら、リリーシャ様を守り切れるか怪しいのだ。正直、そういう攻撃がこっちとしては一番困る。
だが、先ほど悩んだ通りこれを口に出していいものか。護衛対象の精神状況ははたして……。
「わかった。アリサちゃんとシュミットが『必要だ』って言うなら、信じるよ」
だが、自分の悩みなど杞憂だとばかりにリリーシャ様は力強く頷いた。
……どうやら僕は、お姫様という存在をまだ甘く見ていたらしい。
その翡翠色の瞳には強い意思を感じる。精神に限界がきた者の……開拓村の住民の目とは違っていた。
「ありがとうございます、リリーシャ様。で、どうするよシュミット君。とりあえず私は馬を用意すべきかな?」
「はい。あとリリーシャ様の護衛も暫くお願いします。僕は少々買い物に行きますので」
「OK。必要かわからないけど、これ。この街の冒険者ギルドへの地図」
「ありがとうございます」
時間の余裕はない。だが、やれる事はある。
懐中時計を取り出し、時間を確認した。
「では、二時間後にこの街の西門で」
「うん。楽しくなってきたなぁ、相棒!」
「不謹慎ですのでやめてください、お馬鹿様」
「はいはーい」
ウインクしてくるアリサさんに軽く肩をすくめ、時計をしまう。
「ふ、二人とも!よろしくね!」
両手を握ってそう言うリリーシャ様に軽く一礼をして、自分は部屋を出た。
とりあえず……。
アリサさんから受け取った地図を見て、ギルドへの道のりを脳内に浮かべる。
新聞を読み込んで得られた情報。そこからたてた予測。どちらも心もとない物だが、それでどこまで通用するか。残念ながらギルドに行っても有益な情報を得られるとは思えない。
否。通用させるのだ。
今の自分は獣ではなく人である。であれば……狩人に狩られるわけにはいかない。
逆に、村々を滅ぼした『獣』を仕留めてみせる。その意気で挑まねば飲まれるだろう。
地図を懐にしまいながら、剣の鞘を軽く撫でた。
* * *
街を出て、自分達はあえて街道を進んだ。
アリサさんが購入した立派な幌のついた二頭立ての馬車を駆けさせていく。正直値段を聞きたくない。駆け込みでこんな物を買ってきた辺り、相場以上を払っている。御実家の威光やニール子爵の協力もあるかもしれんが。
何ともまあ、相変わらず羽振りのいい。こちらとしては頼もしいが。
御者台で手綱を軽く操りながら、周囲を見回す。
街道の周囲には遮蔽物がほとんどない。道から離れた位置に雑木林らしきものがチラホラと見えるぐらいだ。
動物の生活感も薄い。本当に『人間の為の道』である。
休憩時は雑木林の方に行くつもりだが、それ以外では街道を進む予定だ。こっちの方が馬が走りやすい。
新聞とニール子爵からの情報で、『謎の怪物は夜に出てくる』と聞いている。できるだけ距離と時間的余裕を稼いでおきたい。
「……ふむぅ。なるほどねぇ」
アリサさんとリリーシャ様が、出発時に自分が渡したメモ帳を眺めながら小さく頷く。
宿で新聞の情報を整理している時に書きなぐった物なので読みづらいだろうが、情報共有のため目を通してもらっていた。
「君の予想、たぶん合っているよ。私がニール子爵から聞いた話と矛盾がないし」
「そう言って頂けると心が少し軽くなりますね。結構、大きな買い物をしてしまったので」
無論領収書は貰ってきたが。
ギルドに紹介してもらった店で購入した物をチラリと見る。馬車の後部に載せている幾つもの木箱は、我ながらよくこれだけ買い込んだなと思うほど大きい。
物理的にもそうだが、値段的にも……。自費でやろうとは思わん。
というか、本当に経費で落ちるか不安になってきた。アリサさんの羽振りの良さとこの仕事の重要度的にケチをつけられるとは思わないが、万一渋られたらとても困る。
嫌な汗が背中に流れてきた。
「ほえー……シュミットの前世?とかいう場所ではこういう事件がよくあったの?短い時間で凄く考えているみたいだけど」
「いえ、それほど大した予想でもありません。子爵も確証がないからアリサさんには言わなかっただけでしょう。それと、僕の前世には魔物と呼べるものなど存在しませんでしたよ。人間と、魔力のない普通の動植物しかいない世界でした」
リリーシャ様の質問に答えながら、少しだけ前世の事を思い出す。
一応自称魔法使いとか自称霊能力者はいたけども。それが真実の可能性よりは偽物の可能性の方が高いだろう。
「え。じゃあすっごく平和?」
「いや、こっちの世界でも人間同士で戦争とかしているし」
「はい。アリサさんの言う通り、魔物がいなくても争いはありましたよ。僕のいた国は比較的平和でしたが」
「そ、そうなんだ……ごめんね、森にいるとそういうのに疎くって」
「いえいえ。ただ色々な創作物で魔物の存在は聞いていましたし、そこに今生での経験から色々と付け足した結果がそのメモです」
……前世か。
開拓村にいた頃、何度も前の世界について考えたものである。
別に金持ちというわけではなかったが、清潔な環境に食う物に困らぬ生活。辛い事はもちろんあったけど、大きな怪我をした事はない。何より、両親には愛してもらっていた。
今生の、名前を呼んでくれた回数より殴ってきた回数の方が何倍も多い開拓村の両親とは、違う。
「……話を戻そうか。シュミット君、もう少し作戦について詳細を決めてもいいかな?」
「ええ。即興で考えたものですので、どんどん修正してください。僕も無い知恵を絞りますよ」
「よ、よーし!私も頑張るね!」
何かを察した様に話題を戻すアリサさんに、やたら元気な声のリリーシャ様。
いけない。気を遣わせてしまった様だ。
前世に未練はあるが、今更泣き言をうだうだ言うつもりはない。強いて言うなら、日本にいた頃とまでは行かずともそれを目指すぐらいの心持ちで豊かな暮らしを手に入れたいと思っているだけだ。
何より、今生も悪くないと思える様になった。それだけで自分の様な男には十分な成果と言えるかもしれない。
「アリサさん」
「ん?なんだい相棒。私の考えた作戦名、『スーパーアルティメットギガンティックアタック』に不満が?」
「不満しかありません」
「なら私は『ぱっくん作戦』をおすよ!」
「気が抜けるのでやめてください」
「わかった!じゃあ『ネオゴールデンハイパー』」
「却下」
「早いよ!?まだ最後まで」
「却下」
「あいぼぉう!?」
お馬鹿様とお馬鹿様二号に答えながら、緩く手綱を動かす。
ヒヒンと小さく鳴いた馬に笑いながら、馬車を進ませた。
* * *
その夜、街から結構な距離を進んだ先で休む事に。
雑木林の近くに馬車を止め、木の根元に掘った穴で燃える焚火を眺めながら番をする。木と木の間は数メートルずつ空いているので、剣を普通に振るう分には大した問題はない。
さてはて。『敵』はいつ頃来る───。
ゆっくりと立ち上がり、鞘に左手を添える。馬車の近くにいる馬達も警戒する様な鳴き声をあげた。
「こんばんは。思ったより早かったですね」
「……ふむ。随分と勘のいい」
約十メートル先に立っている人影に語り掛ければ、黒いローブ姿の男はフードをとって顔を見せてきた。
木々の隙間から覗く月明り。それによって眼鏡をかけた細面の小柄な中年男性の顔が視認できる。
アリサさんから聞いていたレイヤル家の現当主。『キース・フォン・レイヤル』の人相と一致していた。
「獣らしい、と言うべきかな?少しは楽しませてくれる獲物の様だ」
「こんな夜更けになんの用でしょうか。ただ話をしに来た、というわけでもないのでしょう?」
喋りながら周囲の気配を探る。少なくとも、この場に立っているのは目の前の男だけだ。
「面白い冗談だ。私が貴様の様な野良犬とお喋りに興じるとでも?」
蛇の様に嗤うレイヤル。彼はこちらを値踏みする様に眺め、小さく鼻を鳴らす。
「だが……なるほど、見てくれは良い。私のペットになると言うのなら生かしておいてやるが?」
「随分と余裕ですね。たった一人で『敵』の前にいるのに」
そう言いながら、左手を動かす。
抜き打ちで放ったピック。それは真っすぐと飛んでいき、狙い違わずレイヤルの左目を貫き深々と突き刺さった。
人間であれば間違いなく致命傷。彼は衝撃で頭を仰け反らせるも、上体を動かす事すらしなかった。
「敵ぃ?つまらない不意打ちに加えてその認識……駄犬と呼んだ方がいいかもしれないな」
ゆっくりと顔の位置を戻したレイヤル。その顔にニヤニヤとした笑みを浮かべたまま、血の一滴も流していない。
まあ、そんな気はしていた。流石に何の保険もなく身を晒した間抜けではないらしい。
「だがいいぞ。愚かな犬ほど調教のしがいがある。そうだ、まずこれを聞かなくてはな。お前は雄か?それとも雌か?」
「本当に要件はそれだけなんですか?そんな内容だと言うのなら、王都についてからゆっくりお話ししません?」
「くはっ。粋がるなよ。本当は不思議で仕方のないのだろう?この私が何故平然としているのか」
彼はピックの刺さった己の左目を親指で示し、残った右目を馬車の方に向ける。
「お前の新しい飼い主の名を教えてやろう。私はキース・フォン・レイヤル。帝国で伯爵の位を受ける男だ」
「それがリリーシャ様を殺す報酬ですか?裏切り者」
「……なんだ、私の事は既に知っているらしい。さてはあの男だな?王都の商家とは言え、所詮は平民か」
すみません、あのビップの事を言うのはやめてください。泣きますよ。僕が。
「ならば無駄話はここまでだ。貴様は『生きていたのなら』飼ってやるが、リリーシャとついでにもう一人の娘は殺す」
一瞬忌々しそうに顔を歪めるも、レイヤルはすぐにまた嗤いだした。
「キヒ、キヒヒ……おい駄犬。お前の様な獣にはわかりやすい『上下関係』というものを見せてやろう」
「ほう、それはどんな?」
剣をゆっくりと抜きながら、問う。
そうすれば彼は更に笑みを深めた。
「獣らしい武器だな……『ソードマン・キラー』だったか?あんな使えない男を殺した事で、どうやら随分と自信をつけたらしい」
ぞわりと、足元で何かが動く気配を感じた。
「獣の世界は弱肉強食。そして」
轟音が夜の林に響き渡る。
土が舞い上がり、すぐさまその場を飛び退いた。降ってきた小石や土から目を守りながら見上げれば、巨大な何かがそこにいる。
茶色い体毛に覆われた蛭のような何か。それは丸太の様に太い腕を生やし、地面を掴んで口の中の馬車を噛み砕いている。
その大きさは地面から出ているだけでも五メートル以上。目も鼻も見当たらない巨大な口だけがある顔で、白い牙を月光で照らしていた。
「けひゃひゃひゃひゃ!どうだ、この強大さは!体の大きいものが強い!それが生物というものだ!」
狂った様な笑い声をあげ、レイヤルが両手を広げる。
……何とも小物じみた言動だ。こんなのが外交官という事に王国の人手不足を心配するべきか、あるいは突然力を得て頭のネジが外れてしまっているのか。後者だと思いたい。
「どうだ駄犬!!これに貴様が勝てると思うか?早速護衛対象を死なせた、お前がぁ!」
「馬は……無事ですね」
あらかじめ馬車から放していたおかげで二頭とも木々の陰に逃げている。それでも視認できる距離に留まったあたり、本当に賢い子達だ。
「……おい。あまりの恐怖に気でも触れたか?それとも目の前の存在は夢幻とでも思っているのか?」
「いいえ、別に。ただあの馬車は高かったのになと残念に思っていますよ」
巨大な怪物との間に木を一本挟む位置に移動しながら、レイヤルに返す。
「それはそうと、美味しいと思います?」
「なに?」
「火薬って」
「は?」
噛み砕かれた馬車の荷台。そして怪物の近くに伸びる一本の糸。
その端には地面に刺し込まれた杭と、マッチ箱を開いて糊で固めた筒状の物がついている。
以前とった罠関係の技能が役立つ日が来ようとは。『狩り』にそういうのを使わない身としては思いもよらなかった。
こちらの言葉の意味を理解したのか、レイヤルが何かを叫ぼうとする。だが、遅い。
瞬間、爆音が雑木林に響き渡る。
糸を勢いよく抜けば摩擦で導火線に火がつく様になっており、『無人の』荷台に仕込んだ火薬が炸裂。敷き詰めた鉛玉を飛び散らせた。
簡単な仕組みの爆弾ではあるが、その威力やいかに。
爆風と飛散した鉛玉を木で防ぎながら、黒煙を口から立ち上らせる怪物を陰から覗く。
「あ、あああああああ!!?」
レイヤルが怪物を見上げて絶叫をあげている。そんな彼の周りに、いくつもの肉片が飛び散った。
『■■■■■■■───ッ!!??』
見上げる程の怪物が牙も頬肉も失い、血を滝の様に流しながら声にならない悲鳴をあげる。
重傷ではあるが致命傷には見えない。これで死なないあたり、とんでもない頑丈さだ。
「きさ、貴様ぁ!!矮小な平民の分際で!貴種でもない身で、こんな、こんなぁ!!」
「変わった自己紹介ですね。法衣貴族の……一代限りの仮貴族様」
「っ………!!」
ガリガリと両手で顎から首にかけてを引っかきながら吠えるレイヤルにそう言ってやれば、その右目を血走らせて睨みつけてきた。
先ほどまでの余裕などない。今にも目玉飛び出しそうな……いいや。
実際、右の眼玉が転がり落ちた。
「殺す……コロス……!!」
その爪は皮膚どころか肉を削ぎ落すが、血は流れない。白い骨がむき出しになり、そこから崩れる様に顔と手の肉も皮も地面に剥がれ落ちた。
眼に刺さっていたピックも転がり、骸骨姿のレイヤルは顎を動かした。
……流石にこれは予想外である。
「絶対に、絶対に許さんぞこの野良犬がぁ!!」
翻った黒いローブ。上半身は顔同様骨だけがあり、しかし腰から下は一本の触手だった。
それが地面を引き裂いて露わになっていき、触手の先端は怪物の頭頂部に繋がっている。
彼……いいや奴が怪物の頭頂部で骨の体をゆらゆらと揺らし、月光を背に何もない眼窩でこちらを見下ろしてきた。
「この私の慈悲の手を振り払った事、後悔しながら死んでいけぇ!」
地面から全身を表す怪物。でっぷりと膨れた腹を大地にのせ、その巨体で木々をなぎ倒しながら四肢で踏ん張る。
『■■■■■■■■■■■■───ッ!!』
すると、茶色の体毛の隙間からいくつもの鋼が突き出した。
それら一つ一つが銃と大砲、ガトリングガン。異形の姿を晒して、頭上のレイヤルが両手を広げた。
「私が、私こそが!第二の『セルエルセス』だ!!」
木の陰から出ながら、剣を構える。
色々と予想外の部分があるが、しかし想定外は想定内。ここで仕留めるという目標に変更はない。
これから逃げると言うのは、流石に厳しいだろう。
「『狩り』を始めましょうか、アリサさん」
身を潜めている彼女に声が届いているかはわからないが、そう告げる。これは『覚悟』の問題だ。
深呼吸を一回。
いい加減、この護衛依頼を終わらせるとしよう。
読んで頂きありがとうございます。
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申し訳ございませんが、明日はリアルの都合で投降を休ませていただきます。